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Dear Pyongyang―ディア・ピョンヤン監督ヤン・ヨンヒインタビュー 思想への反発と家族・教育の在り方

Dear Pyongyang―ディア・ピョンヤン監督ヤン・ヨンヒインタビュー 思想への反発と家族・教育の在り方
『ディア・ピョンヤン』監督ヤン・ヨンヒインタビュー:思想への反発と家族・教育の在り方
『ディア・ピョンヤン』監督ヤン・ヨンヒインタビュー
ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』で朝鮮総聯の活動に人生を捧げた両親と、北朝鮮に"帰国"した3人の兄達ら自らの家族を、10年にわたり追い続けた映像作家・ヤン・ヨンヒ氏。思想への反発心を持ちながら育った彼女自身の在り方や家庭教育の在り方、そして自身にとっての学校教育の存在、さらには北朝鮮の教育事情や人権教育の必要性などを率直に、且つ熱く語っていただいた。

学びの場.com(以下学びの場) 現在は主にドキュメンタリー映像作家としてご活躍のヤンさんですが、東京の朝鮮大学校を卒業後、教師をおやりになっていたのですね?

ヤン・ヨンヒ(以下ヤン) はい、約3年間、大阪朝鮮高校で国語の教員として朝鮮文学を教え、担任もしていました。生徒達は皆日本生まれの在日コリアン3世ですから、日本人高校生とタイプはほとんど変わりません。ちょっと教科書の内容が違いますけどね。

教員時代の3年間は私にとって非常に大きな経験でした。

 この3年間は私にとって非常に大きな経験でした。実は、ドキュメンタリーを撮るという今の仕事へのきっかけにもなっているんです。人にインタビューして一番興味深いのは、答えの一つ一つにその人の歴史があり、育った環境が関わっているのが見えること。それは教員時代の家庭訪問などで感じていました。しょっちゅう問題を起こす生徒の親に会うと「このお母さんなら、この子がこうなってもしょうがないか」ってよく思いましたもの。

 それと、教員の仕事の中で最も大事なのはやはり授業だと思うんです。自分に与えられた1時間をいかに工夫し、生徒達の興味を持続させるか。これはまるで役者が一人芝居をやるようなものです。教壇に立つことは一つの舞台に立つのと同じ。私が後に劇団女優をやるようになってからつくづく思いました。そして「ああ、教育は大変だなあ」とね。

学びの場 映画『ディア・ピョンヤン』の中でも描かれていますが、ヤンさん自身の小・中・高時代、どのような家庭環境だったのでしょうか?

ヤン 私の父は済州島出身の在日コリアン1世で、熱烈なキム・イルソン主義者。在日コリアン2世の母も総聯(在日本朝鮮人総聯合会)の幹部だった父と結婚後、在日朝鮮人の社会的地位の向上や祖国統一のための活動に没頭していきます。両親は私が6歳の時、当時14歳、16歳、18歳だった兄達を一度も見たことがない北朝鮮に"帰国"させます。いわゆる1959〜70年代に盛んだった「帰国運動」です。私は"帰国"の意味もわからないまま兄達を見送り、学校では「ご両親のような祖国に忠誠を尽くす人間になりなさい」と言われました。

私たち家族にとってピョンヤンとは?その答を求めカメラを持ったのです。

 しかし、兄達が帰国後数年で運動は終焉を迎えます。「5〜10年も待てば祖国は統一するだろう。就職その他で何かと差別される日本や、政情不安・経済悪化の韓国よりも"祖国"で努力するほうが将来は明るいに違いない」という夢を託した"帰国"でしたが、あの国は決して楽園ではないという現実を、皆が知ることになるからです。

学びの場 そのようなご両親の考えに、ヤンさんは反発しなかったのですか?

ヤン もちろんしました。「なぜ北なのよ?」とか、「お父ちゃん、バカじゃないの!」とか思っていましたし。まあ、これは思春期特有の反抗期ともいえますけどね。20代の頃は、父は自分の思想に対し娘が反感を持っていることを知っていたので、お互い触れないようにしていました。食事も一緒に食べなかったほどです。我が家は、2階が両親の部屋で将軍様の写真やら著書やらがたくさん飾ってあり、3階が私の部屋なんです。すると、置いてある本も写真もまったく違うので、友人は2階と3階とをつなぐ階段を「ベルリンの壁」と呼び、「おまえの家には西と東がある」と言っていました(笑)。

 でも……、一人の父親としては最高の存在だといえます。物心がついてからずっと、父の政治的イデオロギーには反感を持っていましたが、私は父にいつもハグしてもらったりキスしてもらった、とても大事に育ててもらったなあ〜という記憶のほうが勝るんです。それが私たち親子のベースになっているのだと思います。
 それに、両親が大変仲良かったことも大きいですね。コーヒーを入れてもらったり、おかずが出されたりする度に「ありがとう」とお礼を言い合い、「おかあさんの料理が一番おいしい!」「大好きだ!」などと感謝の気持ちを臆面もなく言い合う夫婦だったんです。

 つくづく私は家庭環境に恵まれていましたね。両親が仲良く同じ活動に没頭しているのを見ていると、イデオロギー的には肯定できませんが、あそこまで一生懸命になれるような仕事を私もしたいと思いましたから。

映画『ディア・ピョンヤン』より
映画『ディア・ピョンヤン』より
©2005 Yonghi Yang / Cheon.Inc
学びの場 それほど家族を大切にしているご両親が、なぜ息子達を帰国させ、祖国に自分達のすべてを捧げ続けるのか、彼らにとってピョンヤンとは何か? が、映画『ディア・ピョンヤン』を観るとわかりますね。

ヤン 「私のことをちっとも理解してくれない!」と親に不満ばかり持っていた頃は、なぜ父と母はこういう生き方を選んだのかという理由を考えようともしませんでした。今回その理由を知りたくなったのは、私をずっと愛してくれた親への感謝の思いからです。「そうだ、一番インタビューしなければならない人がこんなに近くにいる」と気づき、家族にカメラを向けることにしたのです。

 

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