初任の先生からの質問「子どもの謎かけ言葉を理解しよう!」(No.3)
新学期が始まって時間が経ち、新しいクラス、新しい担任、新しい友達、そして新しい教室など、新しいものづくしの生活にも慣れてくるころだと思います。これまでは、子どもたちも周囲の様子を見て振る舞っていたかもしれませんが、慣れるに従って自分らしい言動も増えてきます。わがままに取られるような言葉を発する様子も見られるでしょう。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
一方で、疲れを見せ始める時期でもあります。緊張感がほぐれていくのはいいのですが、疲れをそのままにすると登校しぶりにつながりかねません。ゴールデンウィークでゆっくり休み、5月から学校生活を円滑に再スタートできるように、子どもたちの様子をよく観察していきましょう。
今回は、子どもたちが話す言葉の中には、謎かけのような表現があることを理解し、どのように対応すべきかについて考えてみたいと思います。
Q 授業中に「保健室に行きたい」と何度も言われるので困っています。
A 子どもたちの表現を言葉通りに受け取らないこと!
まず、「保健室に行きたい」というのが、本当に体調が悪くて言っているのか、それとも勉強が苦手で逃げ出したいと思っているのか、あるいは友達関係に悩んでいるのかなどを、しっかりと見極める必要があります。私が「謎かけ言葉」と表現したのは、子どもが本心から謎をかけているというのではなく、無意識のうちにそのような表現を使っていることもあることを知ってほしいと思ったからです。
体調不良なのか、心理的に不安定になっているのが原因で「保健室に行きたい」という言い方をしているのかを判断するために、教室の中でできることを試してみることから始めましょう。教室にある体温計で体温を計ってみる、暑かったり寒かったりしないのか様子を聞いてみる、水を飲むことで落ち着くのかどうか様子をみる、トイレに行きたいのかどうか聞いてみるなどです。体調面に心配があるとわかれば、養護教諭にみてもらう手順を踏んでいきます。
しかし、心の中に引っかかりがあるようであれば、他の対応を考えなければなりません。休み時間や放課後などを使って、話を聞いてみるのも方法です。ただ、そのような場合には、教室のドアは開けておく、必要に応じて学年の先生にも同席してもらうなどの対応が必要です。密室で、子どもとふたりきりというシチュエーションをつくるべきではありません。自分で話を聞くのは難しいと思ったときには、スクールカウンセラーに依頼するのもいいと思います。
子どもたちの中には、新しい環境に慣れるのに、長い時間を必要とする子どもがいます。担任と信頼関係を作ったり、友達関係を安定させたりすることがとても大切なのです。
私がお勧めする最も効果的な方法は、授業の中に遊びを取り入れることです。遊びなんて授業中にやるべきではないというのは、狭い考え方です。まるで遊んでいるかのような活動を通して、学びを保障することは可能だからです。
先日も、ある子どもが学習を渋っていると聞いたので、算数の授業でじゃんけんゲームをしました。勝ち負けを点数化して競う活動です。活動をしながらかけ算やたし算をするので、休み時間の遊びとは異なります。その子どもは翌日も、「先生、じゃんけんゲームをしよう」と言ってきて、保健室に行くことを忘れていました。
手前味噌ですが、私が考えたアクティビティも参考になさってください。(『あそびを通して身につく!小学校 ソーシャルスキルミニアクティビティ』明治図書出版)
学校生活や授業が楽しいと思えるような活動を取り入れることによって、子どもたちもリラックスできると思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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