2024.03.27
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

初任の先生からの質問「心の準備」(NO.1)

私には、娘のように可愛がっている後輩がいます。彼女の名前を仮に桜さんとしておきましょう。桜さんとは、彼女が学生ボランティアとして私の仕事を助けてくれたことが、最初の縁でした。
その後、彼女が時間講師に就いたときにも同じ学校で働くことになった偶然から仲良くなり、様々なことを教えてきました。そしてこの4月から、小学校のクラス担任として教壇に立つことになったので、先日、今後も質問や悩みごとの相談に乗ってほしいと頼まれました。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

私はこれまでも、この教育つれづれ日誌のコーナーで、若い先生たちのために伝えたいことを書き綴ってきましたが、実際に若手から質問してもらった方が生の悩みをキャッチできると考えました。そこで、桜さんからの質問に答える形で、連載していこうと思っています。

私の教師としての経験が、若い先生たちの助けとなればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

Q 4月までに、どんな準備をしておけばいいのか・・・

A  食事と睡眠、リラックスすることを忘れずに!

桜さんは、4月までの数日間に、時間割のカードや当番活動の表などを作ってはどうかと話していました。確かに、クラス経営をするために、掲示物を作っておくのはいいことです。ただ、年度初めの仕事は多岐にわたり、しかも膨大な量になるため、あらかじめ準備していたとしても予定通りに仕事を終わらせていくことは難しいかもしれません。
それは初任だからではなく、その学校で引き続き担任をするベテラン教師であっても、異動してきた先生たちであっても同じことです。ですから、「こんなに準備していたのに間に合わない。自分には無理だ」などと思わないようにしましょう。だれもが、苦労しながら多くの準備をしているのだということを、忘れずにいてください。

ですから、事務的な準備よりもむしろ、早起きをして遠くまで通勤すること、一日中緊張して働くことなどを想定し、体力や気力を充実させていくことの方を優先した方がいいかもしれません。

初めのうちは、同僚とはいえ年上の先生に愚痴をこぼすこともままならず、教室では子どもたちや保護者に気を遣わねばなりません。リラックスするために、放課後にはコーヒーを飲もうとか、家に帰ったらお風呂に浸かってのんびりしようとか、お気に入りの動画を見ようとか、自分の逃げ道を考えておくのもいいと思います。
実際に働き始めると疲れ切ってしまって、そんな想定は意味がなかったとなるかもしれませんが、食事をきちんと摂る、お風呂に入ってリラックスする、しっかり寝るといった基本的なことは手を抜かないようにしていってください。健康で、エネルギーに余裕をもって生活することが、何よりも大切なのです。

Q 先輩の先生たちの仕事ぶりを見ていると、自分ができるかどうか不安で・・・

A まずは先輩のやり方を徹底的に真似させてもらうこと!

教育実習で授業をやったことがある、学生ボランティアで授業を見てきた、時間講師をやったことがあるという桜さんであっても、実際にクラスを任され、1年間責任をもって子どもたちと関わっていくことは、とても骨の折れることです。山あり谷ありの苦しい日々となるでしょう。毎日、5〜6時間の授業内容を考えなければなりませんし、それ以外にも宿題のこと、保護者とのこと、図工や音楽などの先生たちとの関係のことなど、考えたり準備したりすることは山のようにあります。

ですから、自分にはこういった理想があると思っていたとしても、慣れるまでは学年の先生のやり方を真似させてもらい、エネルギーを最小限にしていくことが大切です。まずは子どもたちが滞りなく学校生活を送っていけるようにすることが最優先だからです。自分が学んできたことを実践できるチャンスはいずれ訪れるのですから、あせらずにやっていってほしいと思います。

Q そもそも同僚の先生たちとの距離感が分かりません・・・

A 相手を敬い、プライバシーに関する質問はしないこと!

先輩の先生たちも完璧ではないので、自分ならこうするのにと思うこともあるでしょう。しかし、そうであっても、先輩を敬い学ばせてもらうといった姿勢で関わることは大事だと思います。誰にでも得意分野があり、教えてもらうことで自分を成長させていくことができるからです。

分からないことがあったら、「今、教えていただけますか?」と前置きをし、相手が可能ならどんどん教えてもらうといいと思います。相手が忙しそうにしているときには、「いつなら教えていただけますか?」と聞いておけば、相手も時間を作ってくれるはずです。

さて、このようなやり取りをしていくうちに、同僚の先生たちと次第に仲良くなっていくと思いますが、相手のプライバシーに関することを自分から話題にすることは避けた方がいいと思います。中にはプライベートなことを話すことを嫌う人もいるからです。

同世代が集まる学生時代とは異なり、仕事の場では年齢差も広がります。学生のノリでは通じないこともたくさんあるのです。礼儀をわきまえて、いきなり相手の懐に飛び込むようなやり方をしないようにすれば、次第に距離感を掴めるようになってくると思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

同じテーマの執筆者
  • 松井 恵子

    兵庫県公立小学校勤務

  • 松森 靖行

    大阪府公立小学校教諭

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop