2024.08.31
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初任の先生からの質問「ユニバーサルデザイン教育とは」(NO.10)

夏休み中の東京は35度を超える日が続き、近所に日用品を買いに出かける短い時間でさえ、暑さ対策が必要でした。みなさんがお住まいの地域でも、過ごしにくさがあったことと思います。とはいえ、夏休みも終わり、3学期制の学校では2学期が始まります。普段の生活リズムに戻すのは、大人も子どもも苦労があるかもしれません。励まし合って乗り切っていきましょう。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

一方で2学期は、秋に向かって学習も充実させていくことのできる時期でもあります。また、教師として力を付ける時期でもあります。先輩の先生方から、たくさんのことを学び取っていってほしいと思います。

Q ユニバーサルデザイン教育と言われても、どこから始めたらいいのか・・・

A 何を目指し、何を支えていくのかを明確に!

私が親しくしている初任教諭のさくらさんは、夏休みの研修でユニバーサルデザイン教育の大切さを学んだそうです。しかし、ユニバーサルデザイン教育といっても、教室環境から授業の流し方まで多岐にわたり、どこから始めたらいいのか不安になったといいます。

そこで、すぐにでも取り組めそうな点を整理してお伝えしたいと思います。

1 教室環境

いうまでもなく、整理整頓を心がけ、整然とした環境で学習に取り組めるようにしていきましょう。黒板には不要な物を掲示せず、黒板の周囲にも気が散りそうな配色の物を掲示しないことが基本です。しかし、学習の進行の上でどうしても掲示しておきたいと思うものなどもあるでしょう。絶対にこうでなければならないということはありませんので、子どもたちが集中できるような掲示の仕方を工夫してみてください。

2 伝え方を明確に

子どもたちに話すときには、ゆっくり、はっきり、明確に伝える努力をしていきましょう。前置きが長すぎたり、情報が多すぎたりすると、肝心なことが伝わりにくくなります。必要に応じて、手順を黒板に書いていくとか、絵や図を使ってイメージを補うなどの支援も考えていくといいと思います。また、一度説明したことを、子どもたちに言わせて確認するやり方も効果的です。

3 伸ばしたい力をイメージして支援する

上記したような支援は大切でも、いきすぎてしまうと子どもの伸びようとする力に制限をかけてしまいます。実例をご紹介しますので、考えるヒントにしてください。

1学期の終わりに、私は4年生とそろばんの学習をしました。「今から数を言うので、そろばんの玉を動かして表してみてください」と言うと、「先生、黒板に数を書いてもらえませんか。私は耳で聞き取るのは苦手です」という声が聞かれました。こんなとき、皆さんならどのように対応しますか。

私は、「簡単な数なので、耳で聞き取る練習をしてみよう」と伝え、黒板に数を書くことはしないで耳だけで聞き取らせました。聞き取るという活動には、コツがあります。どこを聞き取ると数として表していけるのかを、やりながら覚えていくのです。数回練習すると、誰もが間違いなく数を表せるようになりました。私はゆっくり、はっきりを心がけて数を読み上げました。

この例のような場合、必ずしも聞くことが苦手な子どものために配慮する必要はないと思います。聞くことや読み取ることが苦手な子どものために、何をどうすればいいのかを、場に応じて考えていってみてください。

4 発達障害のある子どもたちに適切なものを全体に応用する

特定の子どものおしゃべりが止まらず、授業の進行に支障をきたすことがあります。「今は先生が説明する時間だから、聞きますよ」といった声掛けでは、一向に成果をあげることができません。そんなときには、「1分間黙るゲーム」という形にして、説明する間は全員が黙っているという約束で授業を進めることも効果があります。黙っていることが、話を聞いているということに直結しているとは限りませんが、少なくとも話を聞きたいと思っている子どもたちには有効です。

また、聞き取ってほしいことを話した後に、クイズ形式で質問するという活動も楽しんでやってくれます。例えば、算数の確かめ算のやり方の手順を確認したあとで、「どんな式にすればいいのでしょう」「あまりはどうすればいいのでしょう」と細かな点まで聞いていくと、普段以上に集中して聞く姿勢を育てることができます。

遊びながら学習しているような気持ちになると、進んで学ぼうとすることが多いようです。ユニバーサルデザイン教育というのは特定の子どものための支援ではなく、子どもたちの多くが集中して、楽しいと思って学習をすることのできる環境を整えていくことだと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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