初任の先生からの質問「子どもの成長は後々になって表れる」(NO.16)
長いと思っていた2学期が、終わりに近づきました。自分にも同僚にも、そして教育に携わっているたくさんの方たちにも、「お疲れさま!」「子どもたちのために、ありがとう!」と伝えたいです。
ところで、学期末になってふと振り返ってみると、「果たして子どもたちは成長したのだろうか」、「自分は教師として合格と評価されるだけの仕事をしたのだろうか」と不安がよぎることがあります。「これでよかったのだろうか」「もっとやれたのではないだろうか」「他のやり方をすればよかったのではないだろうか」...。これらの問いは、とどまるところを知らないように浮かんできます。
今回は、夏から秋、そして冬にかけて頑張ってきた自分を褒められるように、子どもの成長について考えてみたいと思います。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
Q 子どもたちは成長しているといえるのか不安です・・・
A 子どもの成長は、見えないところでも起きている
私の経験の中で、気づいたことからお話ししましょう。実は先日、一昨年度担任していた子どもたちの学習発表会に行ってきました。4年生のときに担任した際には、図工以外の時間は子どもたちと共に過ごすという過酷な労働条件の中におり、「毎日、こんなに長い時間を私と一緒にいて、この子どもたちは大丈夫なのだろうか」と思ったものです。保護者の方よりも長い時間を一緒に生活するのですから、当時のプレッシャーは大きかったと思い出されます。
さて、久しぶりに会った子どもたちは、身長も伸び、顔も大人びて、名前が出てこないこともありました。しかし、6年生になった彼らの発表の中に、4年生で学習したことや、当時の生活の中で培われたものが潜んでいることに気づきました。子どもたちも、私たちにしか通じない経験の一部を、視線や表情で伝えてくれたようにさえ感じました。
さらに嬉しいことに、何人かの保護者の方から、「あのときがあったから、今の子どもたちがあります」と言ってもらえました。私は、教師を続けてきてよかったと、涙が出そうになりました。
私はたまたま2年間も経たずに再会できましたが、担任した子どもたちが大人になったときに出会うとことは、非常に稀なことです。ですから、自分の教育の成果を感じ取ることも、誰かから伝えてもらうこともありません。でも、子どもの成長というのは、そのときどきで目にできるものだけではないのです。
土の中にあった種子が、時間を経て芽吹くこともあります。それは1年後かもしれないし、30年後かもしれません。老年になって、あのとき小学校の先生が言っていたことはこのことだったのかと思い出すこともあるでしょう。
だからこそ、私たちは子どもたちに種を蒔かなければならないのだと思います。子どもの中に、将来芽吹くための種を蓄えさせなければならないのです。それだけ大きな影響をもつということです。
Q 保護者の方は、100点を取ることだけを求めているようで・・・
A それは当然のことです!
保護者の思いは、学習したことが身についているのだろうか、友達とうまくやっていけているのだろうかと、今に特化した心配事であるように感じます。しかし、それは親心というもので、否定されるものではありません。保護者の思いを受け止めること、100点を取らせるための指導をすることも、私たち教師の大切な仕事なのです。
子どもに学力を身に付けてほしい、人との関係を築くための道徳性やスキルを磨いてやってほしい、体も心ものびのびと成長していけるように指導してほしいなど、学校に寄せられる期待は年々大きくなっているように思います。ときには、その大きな期待に潰されそうになったり、自分だけが頑張っても無理だと投げ出しそうになったりもするでしょう。
でも、毎日の授業を淡々と、精一杯にやっていれば、結果は自ずとついてきます。愛情をもって子どもたちと関わっていれば、その成果も見えてくるはずです。背伸びすることなく、自分らしくやっていけばいいと思うことも大切だと思っています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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