2024.11.02
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初任の先生からの質問「難しい保護者への対応」(NO.13)

2学期に、教育実習生が入る学校も多いと思います。
今回は、初任のさくらさんが教育実習生から受けた相談を、私にも教えてくれました。
実習生からの質問はずばり、「若い女性教師は、保護者からの苦情が多いと聞きますが本当ですか?」というものです。
さくらさんは、確かにそういうこともあるように感じているとしか答えられなかったと言います。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

私自身が思い起こしてみると、男性教師と女性教師の差というものを、小学校の現場で感じることは少なからずありました。しかし、男性教師が苦情を受けることがないということはありませんし、「若いから」という理由だけで苦情が寄せられるということでもないと思います。
例えば、誰であってもいくつになっても、異動して初めて出会う保護者から信頼を得るまでは、時間がかかります。そんなときには、特に保護者からの問い合わせが多くなるのは当然なのです。

ただ、保護者との間にしこりを残すようなことがあると、子どもたちにも影響してしまいます。そこで、どのようにしたら苦情を寄せてくる保護者に対応できるのかを、私の経験からお伝えしていこうと思います。

Q 保護者から苦情を言われると、心が折れそうになります・・・

A 自分を振り返りつつ、丁寧かつ毅然とした姿勢で対応すること!

学校という場でなくても、人と人が関われば我慢や不満が生まれるのではないでしょうか。その際に、相手の気持ちを察して謝ったり、不満を上手に表現したりするスキルがあると、大きな波風を立てる前に解決することができます。しかし、相手が保護者となると、スキルさえあれば乗り切れるというものではありません。保護者とは滅多に顔を合わせることはありませんし、情報がもっぱら子どもからもたらされることに難しさがあるからです。

例えば、子どもの情報が楽しいものの場合には、それが正確でなくても問題にはならないのですが、トラブルなどの情報のときに正確な情報がもたらされないと問題が発生する可能性が高まります。つまり、子どもは親から叱られるのを避けるために、自分にとって都合のいい表現をすることがあるということです。

そうはいっても、保護者から苦情をもらったときに、「あなたのお子さんは、自分に都合よく話を作ったようですね」などと言ってしまっては、火に油を注ぐことになります。まずは、「ご心配をおかけしまして、すみません」という相手の気持ちを和らげるような言葉を使ってみましょう。そして、可愛い我が子が悩んでいたり苦しんでいたりすれば、親としては黙っていられないものなのだということを理解しましょう。

でも、保護者の機嫌を取ろうとして、謝ってばかりというのは考えものです。自分の対応に不備がなかったかを振り返ることは大事ですが、一定の時間をもらって、実際に何があったのかを整理してからお伝えするようにしましょう。

不要な苦情を避けるために、学校で何かトラブルが起きたときには、その日のうちに解決して、子どもたちを気分よく下校させることが大切です。トラブルを見逃して対応が遅れれば、当然、保護者も不信感を抱くと考えるべきです。ですから、常に丁寧に子どもたちと関わる姿勢を続けていくことが最も大切だと思います。そうすることによって、保護者からの信頼も築きやすくなることを覚えておいてください。

Q モンスター化していると感じる保護者への対応が知りたいです・・・

A 自分だけで対応せずに、先輩教師の知恵と力を借りること!

私はかつて、毎朝のように電話で苦情を伝えてくる保護者に対応したことがありました。言われたことを解決しても、翌日には別のネタが湧いてくるようでした。初めのうちは頑張ろうという気持ちがあっても、何日も続くとさすがに参ってしまいます。そして、とうとう明日からは出勤するのをやめようと思う日がきました。そして、私は勤務校の校長に、続けられそうにない旨を話しました。

もし、そのときの校長が別の対応をしたら、私は本当に辞めていたと思います。しかし、校長からはこんな話がありました。「あなた自身を否定しようとして、苦情を言ってきているのではないと思います。保護者の不安が、そうさせているのだと思っています…」。そういうこともあるのだなと、気付かされた言葉でした。

しかし、この話を頭で考えて理解できても、苦情が続けば心は消耗してしまいます。ですから、理不尽な苦情が続く場合には、一人で対応するのをやめましょう。自分だけが背負い込む必要はないのです。同学年の先輩教師や管理職に相談して、一緒に対応してもらうのが得策です。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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