2025.01.21
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初任の先生からの質問「学ぶ意味を明確に示す」(NO.17)

新しい年、そして3学期が始まりました。授業日数は思いの外少なく、あっという間に修了式や卒業式を迎えてしまいそうです。3学期は、子どもたちにとっても、また我々教師にとっても1年間をしっかりとまとめる時期になります。短いながらも、充実した日々にしたいですね。

そこで今回は大きなテーマになりますが、「人はなぜ学ぶのか」ということを考えてみたいと思います。それを明確にしておかないと、特に思春期に近づいた子どもたちは、教師の話に耳を傾けなくなってしまいがちです。「学校なんだから勉強するのは当たり前」といった回答では不十分に感じます。また、「いい大人になるため」といったことも、説得力に欠けるかもしれません。

下記に私が算数を通して伝えてきたことをお伝えしますので、そこから何かを感じ取って答えを見つけていただければ嬉しいです。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

Q 「先生、台形の面積って大人になっても使うんですか?」と聞かれて……

A 大人になって使わなくても、学ぶ意味がある

5年生の算数では、2学期に四角形や三角形などの面積の求め方を学習しました。学習の進め方は、初めにこれまでに学んだ正方形や長方形の面積の公式を思い出したり、面積は1平方センチメートルが何個分かを数えることがもとになっているなどを振り返ったりします。
そして、これらのことを活かして、平行四辺形の面積を求めようというところからスタートします。「学んだことを活かす」ということは、「平行四辺形を正方形や長方形に見立てられるか」という課題に取り組むことです。その後、三角形、台形、ひし形と続きますが、それらも全て、学んだことを活かすことによって求められるのです。

私は、算数の図形の学習で、特にこの学習が好きです。子どもたちが、学びを活かすことに集中できるからです。算数を苦手としている子どもたちであっても、ああじゃないかこうじゃないかと考えることができるのです。

その授業の中で、「先生、台形の面積って、大人になっても求めることがあるんですか」という質問を受けました。そこで、私は次のように応えました。皆さんなら、どう説明するでしょうか。
「もちろん、設計をするとか、土地を測量するとかといった特殊な仕事でない限り、台形の面積を求めることはないかもしれません。ですから、この学習を通して覚えておいてほしいのは、面積の公式だけではないのです。学んだことを総動員すれば、新しい問題を解決することができるということこそを、覚えておいてほしいと思います。人生の中でどうしたらいいんだろうと悩んだときに、経験から学んだことを思い出せば、解決の糸口が見つかるかもしれないということです」

私の話を聞いて、5年生の子どもたちは、そういうこともあるのかなという表情を見せていました。しかし、今分からなくても、いつか分かるときがくるかもしれません。大切なことは、毅然とした姿勢で、彼らの質問に応えることだと思います。

Q 算数以外でも、将来役に立つことは?・・・

A お話の中には、人生の糧が潜んでいる!

国語や道徳で学習するお話を通して、自分がどのように生きていけばいいのかと考える機会があります。教訓が内在したお話だけではなくても、生きていく上での参考になるはずです。

R.シュタイナーは、とりわけグリム童話を読み聞かせることを勧めました。例えば、白雪姫が毒のリンゴを食べたあとでも生き返るような場面を通して、大きな困難さに直面したとしても解決する可能性を信じることの大切さを教えているのだといいます。

極端な表現を使うとすれば、人は学ぶために生まれてきたと言っても過言ではないでしょう。ですから、「学ぶことこそが生きることだ」とか、「人は学ぼうとする生き物だ」と子どもたちに説明することも、間違いではないと思います。しかし、大人が人生の中で知り得た結論を子どもに押し付けるような形で伝えるのではなく、物語やお話を通して伝えていくのも、素晴らしい手段だと思っています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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