初任の先生からの質問「通知表シーズンを乗り切る」(NO.7)
久しぶりに初任の桜さんと会いました。「このまま、教師を続けられるか自信がない」というメールが届いたので、急ぎ時間を作ったのです。
会ってみると、以前のはつらつとした印象が消え「どうして、毎日遅くまで仕事をすることになるの?」という私からの問いに答えようと考える顔に、翳りが見えました。
奇しくも、先輩の先生から、「私の働く学校では、初任の先生が2人とも辞めてしまったのよ」と聞かされたばかりで、桜さんの表情からも大きな苦労が偲ばれました。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
2時間ほど相談に乗った帰りしな、「どうしてもキツいなら、辞めてもいいんだよ。健康が一番なんだからね」と念を押すと、「いえ、続けます」ときっぱりとした返事があり、少し安心しました。
あとひと月乗り切れば、夏休みです。夏休みといっても研修などがたくさんあるでしょうが、子どもから離れて気持ちを切り替えることができます。夏休み前の通知表を書く数週間を、頑張っていってほしいと思います。
Q 通知表のどこから始めたらいいのでしょう?
A 様々な所見があるので、計画的に!
私の若いころと違って、所見(子どもたちの学習の様子を、保護者に文章で伝えるもの)をパソコンで書くので、誤字脱字も修正しやすいという意味では楽になりました。しかし一方で、道徳や英語、総合的な学習の時間などの評価も文章表現で行わねばならず、分量は格段に増えたといっていいでしょう。ですから、一夜漬けのような短期集中では、とても書ききれるものではないのです。学校の実情や子どもたちの実態に合わせて、少しずつ準備を進めていってほしいと思います。
まず、それぞれの所見の分量を確認します。150字なのか、200字なのかといった文字数を確認するということです。また、学校に表現のひな型があれば、それを参考にします。もし、何をどうやって書いていいのか分からないようなら、教育雑誌に頼るのも方法です。教育雑誌の中には、通知表の表現集のような特集を組んでいるものもあります。それを見ながら、子ども一人一人に即した文章を考えていけばいいのです。
何もかも、最初から完璧にできる教師はいません。先輩の力を借り、ときには他の情報も活用して、無理なく、ただし丁寧に仕上げていきましょう。
Q 先輩の先生の話し相手をしていて、時間がどんどん過ぎてしまい……
A 教室にこもって仕事をしてもいいのです!
放課後になると、大抵の場合、教師は職員室で仕事をします。そして、雑談をしながら丸付けをしたり、書類を書いたり、翌日の授業の準備をしたりすることになります。雑談というのは、決して悪いものではなく、子どもたちの情報交換の場となり、苦労を分かち合うことのできる貴重な時間でもあるのです。
しかし、その会話の時間がとても長く、目の前のやるべき仕事の妨げになるようであれば、ほめられたものではありません。教師の中には、話すことで自分の不安を解消したり、ストレスを調整したりする人がいます。実は私もおしゃべりな方で、誰かに聞いてもらうことで悩みが軽減し、元気を取り戻すことができるタイプなのです。ですから、若い先生たちの妨げになるようだと思ったときには、私は教室にこもるようにしています。逆に、若い先生が仕事を妨げられていると感じたなら、教室に逃げてもいいのです。30分間くらい集中して仕事をし、目処が立ったら職員室に戻るというやり方もいいと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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