2024.05.23
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初任の先生からの質問「見せる授業を作るために」(NO.4)

5月から6月にかけて、学校公開や運動会などの行事のある学校も多いと思います。保護者の方々に学校生活の様子を見ていただくことは、信頼関係を築く上で大切なことですが、授業参観を何度となく経験して慣れている私であっても、人に授業を見られるのは苦手です。子どもたちの前では、平気で冗談を交わし、心の中をさらけ出すことができるのに、大人がいると勝手が違います。見られているという緊張感や恥ずかしさ、相手にどう思われるのかという不安などが入り乱れてしまいます。それでも、仕事ですからやらねばなりません。腹を括って、共に頑張っていきましょう。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

さて、学校公開日だからといって特別なことはなく、普段の授業を参観してもらえばいいといわれます。それは確かにそうなのですが、実際に参観者がいるという場面では、普段通りとはいきません。そこで今回は、参観に相応しい授業をどのように作っていくのかについてのポイントを、お伝えしていこうと思います。

Q 保護者に安心してもらう授業のポイントは?

A 学校生活のルールやマナーを整え、一人一人が活躍できる場を!

まずは、授業規律をしっかりと育てていくことです。授業規律とは、授業の中のルールやマナーをいいます。授業前に教科書やノートを机上に準備する、授業の開始時刻には座って待つなどは、当然身につけておいてほしい授業規律といえます。それ以外にも、発言したいときには挙手をして指名されてから答える、指名されたら「はい、〜です」と丁寧な表現で答える、むやみに立ち歩かない、不要なおしゃべりをしないなど、暗黙の了解といわれるものも含むルールやマナーがあります。

1年生にはこういった規律を、ひとつひとつ丁寧に教えていかなければなりません。しかし、それが十分に身につくためには、おおむね1学期間という長い時間がかかるだろうということを念頭におきましょう。つまり、夏休み前までに、ある程度の規律を身につけさせるというのが目標となります。また、2年生以上であっても、新しい担任との間で規律を確立していくのは、一朝一夕にできるものではありません。ある程度の時間がかかるのだということを覚悟した方がいいと思います。

ただ、保護者の方々は、そういった事情を理解できるとは限りません。ですから、学校公開までには、必要最低限の規律を整えた方がいいでしょう。私が最も大切だと思っていることは、教師の話や友達の発言を聞く姿勢をつくるということです。面白い話や興味のあることを聞き、反応しておしゃべりをしてしまうことは問題ではありません。そうであっても、そのおしゃべりが止まらなくなり、教師の授業の進行を妨害してしまったり、友達の発言を聞き逃してしまったりしては、学習に相応しい姿とはいえません。たとえ反応したとしても、短い時間で聞く姿勢に戻るという切り替えを素早くできるように、繰り返し指導していってほしいと思います。

もうひとつ心がけてほしいのは、子どもたち一人一人が活躍できるような授業をすることです。保護者の立場からすると、平日とか休日にかかわらず、時間を作って学校に足を運ぶということになります。それなのに、我が子は一言も発言しない、手も挙げない、掲示されている作品も満足いくものではないとなれば、何のために時間を割いたのかと思ってしまいます。それでは、信頼関係など築けるわけはありません。

活躍の場を設ける手っ取り早い方法は、発表する授業をつくることです。総合的な学習の時間で取り組むような大きな発表の授業でなくてもいいので、物語や詩をグループで工夫して読むとか、算数の問題の解き方を友達同士で伝え合うといった、小さな発表の場をつくってみましょう。子どもたちが生き生きと授業に参加し、楽しそうで誇らしげな表情を見せることができれば、保護者の皆さんも安心されると思います。

Q 授業中に離席したりおしゃべりが止まらなかったりする子どもたちもいます・・・

A 普段の生活を見てもらうことも大切!

保護者の皆さんに安心してほしいと思っても、子どもたちが普段の生活と極端に異なる姿を見せるのもいかがなものかと思います。教師が努力しても、特性を変えることはすぐにはできません。

では、「離席してしまうのは、その子の特性なので仕方ない」と思っていいかというと、違うと思います。離席した子どもにどのように声をかけるのか、声をかけられてその子どもは座ろうとするのか、そういったことにこそ、保護者は注目しているのです。ですから、どんな場面であっても愛情深く関わることが大切ですし、それしかできないといっても過言ではありません。

保護者は、我が子が担任から見守られていると感じることで安心するのです。学校公開だから特別丁寧にということではなく、日頃から子どもたちには、丁寧に関わっていきましょう。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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