初任の先生からの質問「語彙を増やし、表現力を高めるために」(NO.19)
いよいよ一年間のまとめの時期に入りました。
子どもたちにとっても教師にとっても、正念場です。
学校生活を円滑に過ごせるようなルールやマナー、そして学力が身に付いたのかどうかを確認していきましょう。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
ここで少し脇道に逸れますが、昨今の不登校の児童生徒や引きこもっている人たちの増加数を見て、「学校は不要だ」といった考えが散見されます。「学校は、今の子どもたちの実態に合わない」というのが、主張の根本にあるのだろうと推察します。私のように長い期間を学校で過ごしている者には、学校という世界や文化、風習のようなものを当たり前と思いがちですが、改善すべき点はきっとたくさんあるでしょう。
しかし、私は、学校を不要なものだとは思っていません。友達と関わりながら学ぶことで考えを広げたり深めたりすることができますし、人との関わり方そのものを学ぶこともできます。異年齢の友達と触れ合ったり、体を使って集団で運動したり遊んだりすることもできます。これらのことは、家にいてはできにくいことです。
ですから、改善すべき点を視野に入れつつも、子どもたちには、発達段階に応じて学校生活を自分なりに送っていけるような力を身に付けさせていきたいと思っています。
Q 考えを発表したり文章で表現したりする際の語彙が少なくて・・・
A 教師自身が言葉に敏感になったり、読み聞かせをしたりすること!
国語や道徳などの授業に限らず、「楽しかったです」とか「悲しかったと思います」というように、型通りの表現が目立つという話を耳にします。楽しかったのか面白かったのか、あるいは嬉しかったのかといった区別がつきにくいようです。また、喧嘩をしたときの感情も、悲しかったのではなく、悔しかったのかもしれませんし、何とかしなくちゃと焦るような思いだったのかもしれません。このような表現力の乏しさや語彙の少なさは、何が要因なのでしょうか。
家庭の教育力に左右されることはあると思いますが、まず教師自身の言葉へのこだわりがどの程度なのかについて振り返ってみてください。例えば、算数では平行四辺形を学習するときに、「向かい合った2組の辺が平行である」という表現を使います。子どもたちの中には、「2組」を「にくみ」と読むことがありますが、正確には「ふたくみ」です。それを指摘すると、「他の先生はにくみと読んでも、何も言われなかったよ」と返されることがあります。国語に限らず、算数や他の教科でも、言葉には敏感になってほしいと思います。
また、朝や帰りの時間、隙間時間ができたときなどに、読み聞かせをしてほしいと思っています。絵本を読み聞かせするだけではなく、お話を5分くらいずつに区切って、毎日少しずつ読むことも大切です。低学年では主に絵からイメージを広げるようにと考えるなら、高学年では文章や言葉からイメージを広げられるように読み聞かせをするのです。興味をもったなら自分でも読もうとするでしょうし、関連した本があるなら紹介していくことも必要です。
上述したことに限らず、語彙が少ない、表現が一辺倒と感じるなら、何をやれるかを考えてみてください。
Q トラブルの様子を聞いても、何を言っているのかが通じないことがあって・・・
A 話を整理して言い直してみること!
トラブルが起きたときには、子どもなりに興奮していますから、普段以上に話が通じにくいことがあります。まず落ち着いて言いたいことを言うように促しましょう。それでも分からないときには、話を整理して言い直し、それが違っていないかどうかを確かめていきます。先にも書いたように、感情の表現にも気を付け、どんな思いが隠されているのかを汲み取っていくことも大切です。
大人が手本になることで、子どもたちは表現力を磨いたり、語彙を増やしたりしていくことができます。自分は子どもたちの鏡であることを忘れずに、丁寧な言葉や表現を使って関わっていきたいものです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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