初任の先生からの質問「同僚とのかかわり方」(NO.14)
今回は、最初に個人的な話をさせてください。
私は十数年前にNPO法人を立ち上げ、発達障害のある子どもたちや不登校傾向にある子どもたちと保護者への支援、若手教師への相談指導をおこなってきました。とはいえ、現役で教師も続けてきたので、仕事の中で出会った人たちへの支援が中心であり、また、この学びの場での情報提供も活動のひとつという位置付けになっています。知力も体力も旺盛とはいえない自分が長い間続けてこられたのは、たくさんの子どもたちや保護者の皆さん、そして読者の皆さんに支えていただいたからだと思っています。この場を借りて、感謝申し上げます。
また、そんな中、読者の方から感想をいただきました。読んでくださる方の生の声は、知り合い以外からは得難いものです。本当にありがとうございました。これを励みに、さらに精進しようと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
さて、今回も、人間関係に悩む相談がありました。私が若いころは、学校は先輩の教師だけがいる職場でしたが、最近は様々な職種の方がいます。東京都の小学校の場合は、SSSと呼ばれるスクール・サポート・スタッフ、副校長補佐、通級指導学級の専門員、ALTと呼ばれるAssistant Language Teacher(外国語指導助手)、SC(スクールカウンセラー)、それ以外にも時間講師やインターンシップで手伝ってくれている大学生などもいます。昔ながらの職員室の面積では、机を置く場所さえ確保できない状況が生まれているのです。
ですから、誰がどのような仕事のために働いているのかを把握するのさえ難しいのが実態です。名前を覚えるのすら時間がかかります。若手教師が、多くの仕事内容の異なる先輩たちの中で働くのは、気苦労の大きな時代になりました。
Q 誰かわからないのですが、いきなり叱られました・・・
A 職員室で愚痴を言わないこと!
私自身も若手と年齢の差が広がり、相手を思ってのアドバイスであったとしても、傷つけることがあるかもしれないと思っています。ジェネレーションギャップで片付けてしまえばそれまでですが、年齢差をこえて分かりあうためには、時間が必要だと痛感しています。ですから、何気ない先輩からの一言が、叱責に聞こえてしまうのも致し方ないのだろうと想像しています。
とはいえ、もし叱られたと感じたなら、信頼できる先輩教師に相談してみてください。誰が、どんな意図をもって、何を伝えようとしていたのかをはっきりさせるのです。それが分かれば、叱られたという図式ではなかったと気づくかもしれませんし、言った方の表現の癖だと理解できるかもしれないからです。ただ、愚痴をこぼしたり、反抗的な言動をとったりするのは避けましょう。職員室の中で話したことは、回り回って自分に返ってくるものです。それは、自分自身の評価を下げることに繋がるのです。
もし、泣きたくなったり愚痴を吐きたくなったりしたときには、帰宅して家族に話す、友達に聞いてもらう、信頼のおける同僚に誰もいないところで聞いてもらうといった配慮が必要です。
多くの人が集まる職場では、学校でなかったとしても、人間関係を円滑に維持していくのは至難の技なのです。誰もが苦労しているし、それが成長のチャンスと捉えて、頑張っていってほしいと思います。
Q どの先輩の言うことが正しいのか悩みます・・・
A 「子どもたちのために」というベクトルを忘れずに!
教師の多くは、努力家であり誠実であると思っています。しかし、些細な点で意見が異なることは、よくあるものです。
例えば、授業の邪魔をしがちな子どもへの支援について、ある教師は「教室の外に出すべきだ」と言うかもしれませんし、別の教師は「なんとしても教室の中に置くべきだ」と主張するかもしれません。この場合、どの意見が正しいという視点で考えるのはいいことではありません。対象の子どもの様子や、成長の度合いによって、判断は異なるものだからです。今、対象児童にとって何をしてやれるのか、周囲の子どもたちのために何をしてやれるのかを、総合的に判断していくべきです。そして、定期的に、支援方法を検討していく必要があるのです。
もちろん、これは一つの例にすぎません。様々な考え方の違いは、常に存在します。ですから、誰かの考えに振り回されることのないよう、自分の考えをしっかりもつ必要があります。「子どものためになることは、なんだろうか」という問いをもつことです。それから、教育について勉強を続けることも必要だと思っています。
荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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