初任の先生からの質問「2学期にもう一度やり直す気持ちで」(NO.11)
2学期の今ごろになって、子どもたちが4月のころのような状態に逆戻りしているのではないかと不安になることがあります。私自身も経験し、多くの先輩たちも同様の話をしていたので、そういった状況は一部に限られたことではないのだろうと思います。子どもたちは、長い夏休みに家庭での生活を満喫し、登校する日常とは異なったリズムや空気感の中で過ごしてきたのです。逆戻りと焦ることなく、普段のリズムを取り戻せるように働きかけていきましょう。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
一方、2学期は、教師としても仕切り直しの時期になると思います。1学期は夢中で走り続けるようにやってきたことが、夏休みの間に少しずつ整理されたのではないでしょうか。教師としてのあり方を、俯瞰的に見る余裕も出てきているかもしれません。
そこで今回は、自分を振り返るヒントになることをまとめてみたいと思います。
Q 先輩の先生から、「教師は話術」と言われたのですが・・・
A 誠心誠意、正しい言葉を使っていくこと!
「教師としての話術」を磨くことはとても大切ですが、思うようなスキルを身につけるには、多くの時間がかかります。話術を磨こうと意識し続けることで、ようやく2年目や3年目のころ、自分の成長に気づくものだと思っておいた方がいいかもしれません。
ポイントはいうまでもなく、何を言っているのかが伝わるような話し方をするということです。しかも、「短く簡潔に」「子どもたちの頭の中で、どのように受け止められているのかをイメージしながら」ということになります。
そして、「話す技術」は、「聞かせる技術」でもあるということを忘れないでおいてください。言い換えれば、分かりやすい話し方をすれば、子どもたちも聞くことを嫌がらないということでもあります。子どもたちに、「話を聞いていると勉強がよく分かる」とか「先生の話は面白い」などの聞くメリットがあれば、聞いてくれるようになるのです。
その際、大事なことは、「正しい言葉」を使うことです。丁寧な言葉遣いをすることはもちろんですが、道徳的にも正しいことを話さなければなりません。また、子どもの気持ちに圧力をかけたり、強制したりするような話し方でも考えものです。愛情をもって、丁寧に分かりやすくということを心がけていってほしいと思います。
Q 自分の意図していることが伝わりにくくて・・・
A 教師が何を伝えようとしているのかをクイズにしてみるのも方法!
以前子どもたちに、「時計を見てごらん」と言ったところ、「先生、今は○時□分です」と返されてしまったことがあります。私は、「もう授業が始まっていますよ」と伝えるつもりが、時計を読む勉強になってしまったということです。笑い話のようですが、教師と子どもの間に、「こう言われたときには、こうすべき」のような暗黙の了解が築かれていなければ、こういったことはよく起こります。
私はときどき、「次は何をしてほしいと思っているでしょう」とクイズを出します。すると、授業の流れから、「振り返りを書いてほしいと思っている」とか、「友達の発表を静かに聞いてほしいと思っている」のような返事が寄せられます。そんなときには、「当たり」とか「すごいね」と褒めています。何をどうしてほしいかを言葉で表現することも大切ですが、ある程度のことは言葉にしなくても伝わる関係を作っていくのもいいと思います。
これも似たような笑い話ですが、高学年の子どもたちに「私が静かにしましょうと言うときには、席に着いて授業の準備をし、挨拶をして授業を始めましょうという意味が含まれています」と話したところ、「初めて知った」と言われてしまいました。冗談ではなく、子どもたちの本音だなと思いました。日頃から、自分の意図するところを伝えていくことも必要だと考えさせられた出来事でした。
荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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