初任の先生からの質問「人との距離感を探ること!」(NO.6)
人と関わるとき、相手との距離感を探り、良好な距離を維持していくことは非常に難しいものです。
親しいと思っていても、度を超えるような言動をとれば、それまでに築き上げてきた関係は一瞬で崩れてしまう危険性があるからです。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
中でも教師というのは、子どもたち、保護者、同僚、他校の教師仲間といった多くの人に囲まれて仕事をしているので、それぞれの関係性を築くのは並大抵のことではありません。毎日会っている子どもたちや同僚とは信頼関係を作りやすくても、滅多にお会いすることのない保護者と信頼関係を作ることは容易ではないのです。
では、適切な距離感を保ち、良好な関係を作っていくためには、どのようなコツがあるのでしょうか。難しい課題があれば、学年の先生やカウンセラーなどにあらかじめ相談し、どのように伝えればいいのかをシミュレーションしておくこともひとつの方法です。
Q 子どもたちと仲良くなったのはいいのですが、友達関係のようで・・・
A 「親しき仲にも礼儀あり」という姿勢を崩さないこと!
私自身が子どものころは、親子関係もそれなりに厳しいものがあり、両親に厳しく叱られた経験が数えきれないくらいあります。子どもをよい大人に育てるのは親の役目であるという考え方があったからか、我が子が他人から非難されることに不安が高かったからか、あるいは「いい学校に行き、いい会社に就職し…」という価値観があったからなのか、そのあたりは様々だと思います。
一方、私が関わった子どもたちと保護者との関係を見ていると、以前よりはフレンドリーだと感じることが増えてきています。もちろん、各家庭の生活の様子までは分かりませんし、価値観も多様化してきているので、何が良くて何が悪いということではありません。ただ、そういった親子関係が、学校で子どもたちが教師と関わる際に、影響を与えていることも確かです。
以前、私との距離感が近すぎるなと感じていた子どもたちが、案の定、私の机の引き出しを開けて中身を点検してしまったということがありました。子ども自身は、机の中を点検されることを歓迎しないと思うのですが、教師に対しては、善悪の判断なしにそういうことをやってしまいがちです。しかも、日頃から「机の中は、私の物が入っているので、勝手に開けないでね」と伝えていたにもかかわらず、穏やかな表現では通じないのだなと考えさせられました。
そこで、「自分がやられて嫌なことは、相手にもしない」という原則を、あらゆる場面で伝えていく必要があると思います。ときには、「教師は友達ではない」という、毅然とした態度を示すのも大切ではないでしょうか。難しい課題があれば、学年の先生やカウンセラーなどにあらかじめ相談し、どのように伝えればいいのかをシミュレーションしておくこともひとつの方法です。
Q 個人面談の際、普段の様子を忌憚なく伝えてもいいのかどうか・・・
A 初めての面談のときは、保護者の話を受け止めること!
子どもたちが、何かしらの課題を抱えている場合、「面談で伝えておかなければ」と焦る気持ちが出てしまいます。しかし、保護者は教師の人となりを理解できているわけではなく、まして自分より若い教師と短時間で信頼関係を作れるものではありません。ですから、「○○さんは、いつもこんなことをしてしまいます」のような批判めいた表現をすることは厳禁です。
まず保護者に、子どもたちの家庭での様子を聞いてみましょう。学校が好きだと思っているのか、担任を受け入れているのかを探るのが先決なのです。もし、そこで問題があると分かれば、早急に対応する必要があります。
次に、そこに問題がなければ、保護者が困っていることはないかという質問をぶつけてみましょう。もし、困り事があるようなときには、自分で解決策を提案したり、学校のネガティブな情報を重ねたりするのではなく、ここでも保護者の話に耳を傾けることが大切です。そして、必要ならばカウンセラーを紹介するなどの対応を提案してみましょう。
私自身も、若いころは保護者と話すのが苦手で、「先生にお話ししても、無駄だとは思いますが」のような前置きをされたこともあって、早くベテランになりたいと願ったものです。経験を重ねることで、保護者との関係作りや会話のリズムなども上手になってきますから、初めから飛ばしすぎないでやっていけばいいと思います。
難しい課題があれば、学年の先生やカウンセラーなどにあらかじめ相談し、どのように伝えればいいのかをシミュレーションしておくこともひとつの方法です。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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