2024.10.07
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初任の先生からの質問「大きな行事を実施していく際に」(NO.12)

今年は夏の暑さが長引き、暑さが原因で体調を崩す子どもたちも見受けられました。しかし、ようやく秋本番。芸術の秋、スポーツの秋という言葉に背中を押されるように、秋は運動会や学習発表会のような大きな行事が目白押しになる学校も多く、本格的な練習が始まっているのではないでしょうか。ただ、こういった子どもも教師も慌ただしく過ごす時期は、気をつけなければならないことがあります。
今回は、この時期だからこそ生かしたいこと、配慮したり支援したりしていくべきことをまとめたいと思います。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

Q 運動会の練習で、子どもたちの一部には疲れが見えます・・・

A 学校生活に余裕をもたせながら、学習の成果を上げられるように!

感染症対策が始まったころから運動会のやり方が見直されてきており、絞り込んだ種目で短時間に終わらせようという風潮も見られます。しかし、運動会に対する保護者や地域の方の期待は依然として大きく、簡素にしてしまうわけにはいかないという実情もあります。また、運動会の練習時間が限られているとはいえ、普段の生活よりは体育の時間が増えることは否めません。すると、結局のところ、運動の苦手な子どもや、集団での活動に難しさを感じる子どもたちにも皺寄せがいってしまうのではないでしょうか。

そこで、私は2つのアイディアを提案したいと思います。ひとつは、体育以外の時間に余裕をもたせることです。そうはいっても、決まった学習内容をこなさないわけにはいかないのも事実です。ですから、授業のやり方を工夫してみてください。教師主導で45分間を過ごすような授業は、子どもに疲労感を与えます。そこで、ワークシートや練習問題をする時間を増やし、自分のペースで学習できる余裕を作るのです。

だいぶ前の話ですが、リレーの朝練をこなし、体育の授業があり、休み時間になると運動会の係活動が詰まっているような6年生が私の算数教室に来てつぶやいたことがありました。「ここはいいなあ、自分のペースで学習できるから…」実のところ当時の私は、6年生の彼らが塾での学習で教科書の内容を既に習得していたため、時間を持て余し気味なこともあったのです。それで、苦肉の策で、難問のプリント学習を取り入れるなどして、試行錯誤を繰り返していた時期でした。子どもの側から見れば、それがマイペースで学習できるというやり方であったことということです。

もうひとつは、若い先生たちは、自分の体力を基準に練習をさせてしまいがちであることに気付いてほしいということです。元気に走り回っているようでも相手は子どもであり、体力も成長の過程も様々なのです。そこを忘れてしまっては、子どもをますます運動嫌い、行事嫌いにしてしまいます。

体育の授業を数分間早めに終わって水分補給や着替えなどの時間を確保する、もう一度だけ練習させたいという思いを抑えてイメージより練習を減らすなど、体力的にも精神的にも、余裕をもたせられるように考えていってほしいと思います。

Q 行事を通して、子どもたちが成長するものなのでしょうか・・・

A 行事が終わった後、頑張ったねと言ってもらえるように!

運動会があったからといって、急に走るのが速くなるとは限りませんし、いきなり体力が向上するとも思えません。でも、みんなで心を合わせると、大きな力になるという実感をもたせてやることはできると思います。それは、玉入れや綱引きであっても、ダンスなどの表現であっても同様です。学習発表会で歌や合奏、劇などを披露する行事であっても同じことが言えるでしょう。

私は、子どもたちと練習をするときに、いつも言って聞かせていたことがあります。「どうせ苦しい練習をするなら、終わったときに頑張ったねと言われるようにしよう」というものです。普段の生活とは異なる場面を保護者や地域の皆さんに見ていただくチャンスを、どのように生かしていくのかが、教師の腕の見せ所だと思っています。

しかしながら、行事が終わった後に登校してきた子どもたちに、「頑張ったところを、褒めてもらえた?」と聞くと、「うちの親、何も言ってくれなかった」としょぼんとした表情を見せる子どもも少なくありません。どうぞ、保護者の皆さん、子どもたちを褒めてやってください。当日の演技だけではなく、彼らは練習中からものすごく頑張っているのです。そして、テストの点数では計れない成長を感じ取っていただければと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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