初任の先生からの質問「若手の良さを生かす」(NO.20)
昨年4月の当初、1年間この仕事をやり遂げることができるのだろうかと、不安な気持ちでいっぱいだったことを思い出します。
きっと初任の先生のみならず、多くの先生たちも何かしらの不安を抱えてスタートを切ったことでしょう。やっとゴールに辿り着きますね。さて、皆さんは1年間を振り返ってみて、どのような感想をもったのでしょうか。
初任のさくらさんから、以下のような質問が届きました。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
Q 隣のクラスのベテランの先生と比べると、何ができたのかなと・・・
A すぐに追いつくことはできなくても、若手の良さを生かして!
ひと学年のクラスが1学級という小さな学校は少ないので、初任の先生はベテランの先生と同じ学年を組んで、たくさんのことを教えてもらいながら仕事をするのが一般的です。しかし、たとえ懇切丁寧に教えてもらったとしても、同じような成果を上げることができるとは限りません。学年が一緒に集まる場面では、自分のクラスと隣のクラスをつい比べてしまうこともあるでしょう。そして、子どもたちの小さな言動に、あれやこれやと思いを巡らしてしまうこともあると思います。
そういった凹んでしまうような気持ちになることは十分に理解できますが、それは誰もが通る道です。ベテランとか中堅と呼ばれる先生たちであっても、初めは焦ったりがっかりしたり、自分はダメなのかもしれないと悩んだりしてきたのです。私たちは、1年間に700時間前後の授業をしています。それが10年続ければ、7000時間となります。経験を積んできた先輩教師と比べても、到底勝ち目はありません。比べることそのものが無意味だと思いませんか。
ある本を読んでいたら、「ときぐすり」という表現を目にしました。どんなに悲しいことや辛いことでも、時間が解決してくれることがあるという意味で使われるそうです。私たちの仕事上の悩みも、まさに「ときぐすり」が解決してくれるはずです。
授業の1時間1時間を大切に、そして1日1日をかけがえのないものとして子どもたちと関わっていれば、知らず知らずのうちに力がついてくると思います。そして、自分のことだけではなく、周囲の人たちが何をどう考えて教育にあたっているかも、よく観察してください。あらゆることを自分には関係ないことと思わずに、学校がどのような働きで回っているのかを覚えておくことが大切です。
一方で、皆さんには可能性があります。若さを最大限に生かして、子どもたちと関わってほしいと思います。子どもと年齢が近いということは、話題にも共通のものが多いことでしょう。また、休み時間などに体を使って思い切り遊ぶことも若手の特権です。それぞれのキャリアでできることをやればいいのです。
余談ですが、私が最初に教師になったとき、先輩から「給料の分だけ、働いてくれれば十分だから」と言われました。現在と事情は異なるかもしれませんが、無理をしなくてもいいという優しさがあったと記憶しています。
Q 来年度はどこを担当するのか、考えてしまいます・・・
A 出会いは偶然ではないと思うこと!
私は現在、臨時的任用教員として働いていますので、毎年のように、次はどこで働くことになるのかなと思います。同じ学校に、育児休暇などを取る先生がいれば継続となりますが、そうでなければ次の学校を探さねばなりません。年齢を重ねる度に、新しい学校に赴くのは、慣れるまでがしんどいなと思う年度末です。
しかし、もし新しい職場に赴任するとしても、ひと月が過ぎ、さらに夏休みを迎えるころになれば、子どもたちや同僚、保護者の皆さんとも親しくなれると信じています。また、出会いは偶然ではないとも考えています。「この子どもたちと出会うために、ここに来たんだな」と思うことが多いのです。
誰かと出会うことは、奇跡のように思います。その出会いが自分にとって、必要性があるから出会うのです。また、相手にも必要だから自分と出会わせてくれるのです。そう考えると、世の中はうまくできていると思いませんか。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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