2017.09.28
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スキルトレーニングの極意(No.11「旅行中に知った自分らしい生き方」)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 9月に入って涼しくなったと思ったら、台風一過の暑さもありました。このところ過ごしやすい時期が短くなっているようにも感じますが、読書の秋、食欲の秋を楽しみたいものですね。また、紅葉の美しい季節ということで、出かける方も多いのではないでしょうか。そんな時期に、ぜひ参考にしていただきたいと思い、今回は夏の旅行での出会いをご紹介したいと思います。

 「人と関わる」ときには、つい相手のことにばかり目がいってしまいますが、自分を大切にできるからこそ相手を尊重できるのだろうと思います。自分を大切にして、自分らしく生きるとは、どういうことをいうのでしょうか。私は中欧への旅行で、仲間からたくさんのことを教えてもらいました。ぜひ、皆さんにも知っていただき、自分らしさを考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。

 
 まず、最初にご紹介したいのは、最も長くご一緒させていただいた少し年上の女性です。私も彼女も一人での参加だったので、自然と一緒に行動することになったのです。毎年欠かさずに海外旅行をされてきたというその女性は、旅行の準備が完璧であることに驚かされました。保冷に使う袋や、クッション材、テープもコンパクトにまとめて持ってこられていました。溶けやすいチョコレートのお土産や、壊れやすいお土産を買っても安心です。加えて勉強になったのは、長袖にこだわって洋服を準備されていて、荷物を軽くしていたということです。たとえ暑くても、最近は四季を通して長袖を着るようにしているのだそうです。そういう選び方も、自分らしさを出しているのだろうと思いました。私は、暑かったらどうしよう、涼しかったら困るだろうと考え過ぎて、荷物がとても多くなってしまいました。

 次に、同世代の女性のことをご紹介します。同世代ということは、更年期などの影響で気温の変化や、特に強い日差しに弱いことを意味します。私たちがハンガリーのブダペストを訪れた日は、熱波がやってきているということで実に38℃もありました。日向を歩くのには覚悟がいりましたし、日陰にいても顔から塩が吹き出しているのではないかと思うくらい汗が出ました。私は旅行前に現地の天気予報を調べていたので暑いことは知っていたのですが、ヨーロッパの人たちは日傘を使わないだろうと思って、雨傘を持って行ったのです。しかし、その女性はしっかりと日傘を持ってきていて、堂々とさして歩いていました。私は自分の考えの狭さに、とても情けない思いをしました。仕方なく雨傘をさして歩くことにしましたが、晴雨両用を持ってくる選択もあったのにと、後悔することになりました。

 もう一人、強く印象に残った男性がいました。彼は話し方に不自由さを抱えていましたが、いつも明るく振舞って、同行者のみなさんを楽しませてくれました。自分が人からどのように見られているのかという不安をもっているとは思えませんでした。いつも自分の思ったことを話し、自分のやりたいことをやっていました。

旅行三日目のウイーンの晩は、街から少し離れたホテルに泊まりました。多くの仲間は、日中の暑さに参っていて、早々に休んでいたように思います。ところが翌朝、その彼はスマホ片手に、タクシーで夜のウイーンに繰り出したということを自慢げに教えてくれました。オーストリアの言葉を話せるわけでもないのに、すごい行動力だなとびっくりしました。一生に一度しか見るチャンスがないかもしれないウイーンの夜景を、絶対に見逃したくはなかったと話してくれました。

 その男性のお友達からも、心に残る話を聞きました。彼は現役で働いていたころは、お金を稼ぐことばかりを考え、きつい顔つきをしていた。でも退職後1年が経って、今はお金よりもやりがいが大切であることに気がついたし、穏やかな顔つきになったように思うというのです。すると思いもよらず、古い知り合いから仕事を頼まれるようになったとおっしゃっていました。金銭的に余裕があるからこそのお話だろうとは思いましたが、その話からは多くのことを教えられたように思います。

 それから、母親と娘さんのペアからも学ばせてもらいました。彼らは常に水着を持って歩いているそうで、それが功を奏し、誰もが行こうとしても行けなかった温泉に行くことができました。一番驚かされたのは、ハプスブルク家のシェーンブルン宮殿を見学する前日に宮殿の売店を訪れ、エリザベート妃が身につけていたという髪飾りのレプリカを手に入れていたことです。そして見学当日には、エリザベート妃を彷彿とさせるような髪型とファッションを楽しんでいました。一瞬一瞬を楽しむという形で、自分らしく生きるということを教えられた一日となりました。


 最後に、飛行機でお隣になった若い人たちから教えられたことも、ご紹介したいと思います。行きの飛行機では、フランスのボルドーに住む男性と隣になりました。バカンスを利用して、日本に3週間も滞在したそうです。「あこねにも行きました」というので、最初はわからなかったのですが、Hakoneの最初のHをフランス語では発音しないのだなと気づきました。それで、読み方を教えてあげました。私は自慢ではありませんが英語が苦手です。彼の英語もフランス語訛りでした。でも、地図や文字を書くことによって、意思疎通ができました。とても楽しい出会いでした。

 帰りの飛行機では、ドイツから日本に旅行するという若い女性と隣になりました。彼女は病院で技師として働いているそうですが、仕事がきついので一旦辞め、3ヶ月間も日本を巡るというので驚かされました。日本人の中にも世界を巡る人たちがいますが、度胸があるなと思いました。自分は添乗員さんの力がなければ、とても外国を歩き回ることはできません。

 旅行というのは、美しい景色を見たり、文化に触れたりすることができる魅力がありますが、それだけではないのだなと思います。私が参加したようなグループ旅行では、普段は関わることのできない異なった職業の方や、様々な地域の方とご一緒することができるので、思いもよらぬ学びがあるし、楽しさを味わうこともできるのです。人との出会いの楽しさが、旅に人を引き付けるといってもいいのかもしれません。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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