匿名の相手からの誹謗中傷にどう対応する?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「匿名の相手からの誹謗中傷にどう対応する?」です。SNSやオンラインゲームなどで知り合った名前も知らない相手から、いわれのない中傷を受けたり、悪口を言われたりして子どもが悩んでいるときに、親ができることはなんでしょうか?
何よりも大切なことは「まず自分がやらないこと」。
まず「自分がやらない」ことが大切です。インターネット上の誹謗中傷を減らすためには、まず自分からです。匿名で誹謗中傷しない、悪口を言わない、根拠のない噂を広めないなど、守るべきルールを子どもと一緒に考えましょう。
もちろん表現の自由はありますから、自分の意見を発言することは悪いことではありません。でも、自分が言ったことには責任を持つべきです。自分の投稿で誰かが傷ついたらきちんと謝らなければいけません、事実ではないことを拡散してしまったら訂正する勇気が必要です。そういった行動ができないようだったら、投稿してはいけないということを子どもに徹底的に教えることが大切だと思います。
自分たちが被害に遭うまでは何もしないということが、この誹謗中傷の土壌を作ってしまいます。自分が加害者にならない、軽い気持ちで悪口に同調しない、嘘の情報に騙されない、間違えを認める勇気を持つことをまず教えてください。
「見て見ぬふりをしない」それだけで誰かの応援になる

私も仕事柄、名前も知らない人たちからの誹謗中傷を受けることがあります。そんなとき、100個の悪意あるコメントの中に、1つでも応援してくれるコメントがあると本当にほっとします。この応援してくれる意見の存在は、すごく大事です。もう大丈夫、私には味方がいると思うと勇気が湧いてくるんですね。インターネットで“炎上”している場面に遭遇したとき、巻き込まれるのが嫌でつい見て見ぬふりをする人が多いようです。どうせ書き込むなら悪口ではなく、いい意見を投稿するよう提案してみてはどうでしょうか。
子どもがトラブルに巻き込まれたときは。
「匿名」は安全圏ではありません。将来に影響することも。
すでに海外の名門大学では、受験生のSNSや投稿履歴のチェックが始まっています。差別的な発言や反社会的な投稿をしている場合、人格や品性に問題があると判断されてしまい、入学が許可されません。後から発言を取り消したとしても、一度インターネット上に出回ってしまった情報は止めることはできません。軽い気持ちで書き込んだ投稿が原因で、将来希望する大学に進学できない可能性だってあるかもしれません。
匿名だからと安心せず、ネット上での発言は誰かを傷つけたり、人生に影響したりする危険性もあるんだということを改めて認識しましょう。

アグネス・チャン
1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)
ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!
「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
