2025.04.03
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コラム 子どもの学びと大人の学び

今回は、今期の最後の記述ということで、いつものような実践報告ではなくコラムを書き綴っていこうと思います。
話題は「学び」についてです。
今期もお読みいただき大変ありがとうございました!
次期もどうぞよろしくお願いします!

明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之

ふくらみ始めた桜のつぼみが春の訪れを告げています。3月の末に6年生を送り出し、早くも1か月が経とうとしています。新年度の始まりにせわしなくしている頃合いでしょうか。

さて、今回は「学び」ということを話題にコラムを綴らせていただこうと思います。

はじめに

皆さんは今学んでいますか?
僕は、絶賛学び中であります!
なぜ、学んでいると言い切れるのでしょうか?
それは、僕自身の中に解決したい問いや課題が山ほどあるからです。それらに一つずつ取り組み、向き合っていく中で自分の成長を感じられるからこそ「学んでいる」と言い切れます。でも、その学びは「漢字を覚える」「計算ができるようになる」といったこととは少し違う気がします。結果的に今まで使わなかった言葉を習得して語彙が増えたこともあるかと思います。また、割合を用いてプレゼンを作成する中で、今まで以上に数に対する見方が育まれたこともあるかもしれません。しかし、そうではなく、もっと広い世界で学びを創っている気がしています。

子どもたちに求められる学び

今の子どもたちには、様々な資質・能力が育まれることが望まれています。それは、知識や技能といった目に見えやすいことだけではなく、むしろ思考力や粘り強さといった目に見えにくいことまでもを含めて育まれようとしています。

例えば、総合的な学習の時間の中における「探究」では、課題設定能力や情報活用能力、自己省察力等、本当に幅広い資質・能力の育成が期待されています。しかし、このような資質・能力を私たち大人はそなえているのでしょうか?

以前、大学院を経験された先輩にこのような話を聞いたことがあります。ある講義で教授の先生が「自分で課題を立てて、それらを解決したことをまとめてレポートを作成し、そのレポートを交流しあいましょう」と、課題を提示されたそうです。
すると、それに対する反応は二分されたといいます。一方は胸を躍らせ自分の課題に向き合った方。他方は、何をしたらよいかわからずさまよった方。皆さんでしたらいかがでしょう?

また、市の指導主事先生方の研修の一部においても同じような課題での研修があるようです。つまり、自身で課題を設定し、それらを解決したことを持ち寄って事例として交流しあい、新しい知見を見出すという研修だそうです。

どちらの事例にも共通して「あれ?大学の授業って先生が教えてくれるのじゃないの?」「研修なのに何も教えてもらえなかった…」と、うまく取り組めなかった方の声も上がるそうです。

大人でさえ難しい学びの在り方

さて、上で示した課題は何も特別なことではないでしょう。なぜなら、私たちが普段の実践の中で子どもたちと創っている学びの在りようとすっぽり重なるからです。総合的な学習の時間のスタートは「課題設定」です。そして、その課題を解決するために「情報を収集」します。それらを「整理分析」し、最後に「まとめて表現」しますね。この一連の学習の過程を「探究的な学び」と呼んだりもしますが、今の子どもたちはこの学習に毎年取り組んでいるわけなのです。皆さんは、子どもたちが「課題」を見出そうとしているときに「早く考えて!」「まだ考えてるの?」なんて言葉で急かしたりはされていませんよね!?
先ほどの事例でいうと、大学院に通っている大人でさえ、指導主事先生として活躍されている先生方でさえ実はかなり頭を悩ます学びなのです。それを子どもたちも挑戦しているわけですね!

変化する「学び観」

では、そういった学習の中で僕たち(大人も子どもも)は何を学んでいるのでしょうか?
一言でいうと、その答えは「一人ひとり異なる」というのが正しいように思います。今までは(もちろん今もそうですが)「分数の掛け算ができる」「新出漢字が書ける」といった、ある程度学習者も指導者も共に認識しやすい事柄を「学び」の軸に考えていました。しかし、これからはそこからさらに、一見気づきにくい、でも本人にとってはとても価値のある学びが求められていくわけです。

冒頭で、僕自身が学んでいると言い切りました。しかし、同じ学びがほかの人に必ず必要かと言われればそうではないと思います。むしろ、不要なことのほうが多い気もします。でも、僕は楽しく学んでいるのです。必要最低限の学び(これを規定することは容易ではありませんが…)と、そこから広がる夢のような学びの世界とを、学校教育の中で豊かにデザインしてあげることができると、子どもたちはもっともっとのびのび学びと向き合うことができるのかなぁ…そんなつぶやきを残して本稿を閉じたいと思います。

さいごに

次回は、今年度(令和6年度)に実施した総合的な学習の時間の学びについて、実践を報告させていただければと考えています。
少し長い単元ですので3週ほどかかりそうですが…ぜひ、気が向きましたらお読みいただけますと幸いです。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)

明石市立鳥羽小学校 教諭


「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。

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