2025.03.27
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先生にとっての何だかとても大切なもの 子どもと先生で創り出す豊かな「環境=風」

自分なりですが、やっと自由進度学習に取り組みはじめました。
子どもに思い切って委ねる授業こそ、子どもたちの「前向きさ」「やる気」がちょっと気になりますね。
そんなとき私たちにできることは何でしょう。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

先生自身が子どもたちの「環境的な要素」

私は、自然体験的な活動が実は大好きなのですが、そんなタイプの先生との一年は、教室の子どもたちの視点で考えると、「朝登校したときから帰るときまで、先生はなにかと屋外に出て池や林に行こうと誘うし、生き物や植物を育てることに熱心だし、田んぼや畑っぽいこともやらせるし、会話に海・山・川・里の話が多いし……」と感じる一年だろうなあと思います。

これってつまり、先生自身が子どもたちが教室で感じる「環境的な要素」の大きなウエイトを占めているということを示すように思います。まあ、私の場合は、私のあり方から感じるであろう「環境」が、自然体験やエコ活動的なイメージの「環境」とも重なる部分も大きいのですが。

たとえばどんな風が吹いているのか

ただ、ここで強調したいのは、今回は先生としてのあり方を話しているわけではなく、先生がその教室にそれとなくもたらすもののことなのです。影響ほどでもありません。いわばどこからともなく吹いてくるそよ風のようなもの、またはカフェで感じる雰囲気のようなものでしょうか。

熱血漢とかエキゾチックとか人物の形容にはいろいろありますが、それとなくもたらすものはもっともっと多彩です。なんとなく勉強したくなる、のんびり、安心、おだやかということばがうかぶこともあるでしょう。刺激的、新しい、驚き、最先端、わくわく、どきどきももちろんありです。赤、青、黄色、緑、白、黒など、色合いを感じることもあるのかも知れません。そこに「前向きさ」とか「やる気」とかもあったらなかなかですね。

私としては、なんとなく自然物を感じてくれればいいなあとも思います。

もっと具体的に示すなら、例えば、虫が好きな先生、体力作りに余念がない先生、ゲームに造詣が深い先生、パソコンで驚くようなことをする先生、一緒にいつもダンスをしてくれる先生、おもしろくて温かなジョークを連発する先生、海外に詳しくお土産話がたくさんな先生、常に何かを作っているアートな先生などという感じでしょうか。

例えば、「先生は学校(もしくは街とか場所とか)のどこが似合いそう?」って聞いてみたら、先生からのそよ風を子どもたちがどのように受け取っているか分かりそうですね。それがミスマッチのときは、私にはそういう一面もあるんだと再発見できると思いますし。

また自分の近くになんとなく集う子どもたちを見ても、自分の風は分かりますよ。類は「子ども」も呼ぶのです。

いろいろな先生と出会い一緒にすごすことの子どもの側の意味

多くの子は その地域の学校に通うのが一般的です。その学校は自然度が高いとか高くないとか、都会なのか市街地なのかそれとも周りが山々や海に囲まれた学校、それぞれに 地域性は違うのでしょう。だけど子どもたちはその学校が好きですし、その地域のことをまず学習するのはとても大切なことだと思います。

ただし、特に小さな子の場合、行動範囲はまだまだ狭く、生まれ育った地域を離れての活動は限られるでしょう。

だからこそ先生は、それぞれに個性的な風を吹かせて多様な環境をその学校に持ち込むのも大切なのではと思います。自分なら、今まで仕入れてきた様々な環境的なこと自然的なことをその地域の子どもたちに企画や検討の対象として または 体験の幅を広げるものとして 色々な形を提示してみたりもするのです。

将来の多様な状況に対応していくためには、多様な状況を経験したり学んだり感じたりすることが大事になってくると思われます。だから、何人もの先生が一人の子どもの生い立ちの中で様々に関わっていくことが、その子がこれから自己選択・自己決定していくための情報の蓄積につながるのではないでしょうか。

そして私たちにはつきものの異動のときに、吹かせた風がたとえささやかなものであっても、その子の中に残るものになるというのなら、それは本望というものですよね。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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