怒涛の4月がしんどすぎた皆様へ
教員という仕事において、最も慌ただしく、特に正解の見えづらい4月。
異動や初任で不安の中にいた方、準備万端のはずが思い通りにいかなかった方...そのすべての先生方に届けたい言葉があります。
「完全な教師」を目指すことが、時に自分を追い詰めてしまう――言葉とともに、少し肩の力を抜いて歩き出すためのヒントを綴りました。
千代田区立九段中等教育学校 廣瀨 紘太郎
4月を乗り越えた皆様へ
まずは皆さん、お疲れ様でした。
教員という仕事において、最も忙しく、余裕がなくなる時期——それが4月ではないでしょうか。
特に異動された方や初任の方、本当にお疲れ様でした。
まずは、激動の4月を乗り切ったこと自体(たとえ指導がうまくいかなかったとしても)が何より大切なことだと思います。
教育界における4月の決まり文句
年度当初、特に学級開きや授業開きでよく聞かれるのが、「黄金の〇日!」や「〇〇開きは□□すべき!」といった決まり文句です。
もちろん、こうした経験則が身に付いている人にとっては、あまり気にならないのかもしれません。
しかし、経験が浅かったり、自信がなかったりする人にとっては、プレッシャーに感じることもあるでしょう。
特に4月を振り返ったとき、「〜すればよかった」「〜し忘れた」といった後悔が浮かび、自信をもって「やりきった!」と思える人はそう多くないのではないでしょうか。
心のよりどころにしている言葉
かくいう私も、4月の指導を振り返って「上手くいった」とは到底言えません。
日々「何がいけなかったのか」「どうすればよかったのか」と自問自答する日々です。
このような必要以上に落ち込みそうになったとき、私が心のよりどころにしている言葉があります。
思想家・内田樹さんが、数学者・岡潔の随筆『風蘭』のあとがきで述べている一節です。
以下に引用します。
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私自身はある時期まで「完全な教師」になることを夢見ていた(図々しい夢だが)。十人学生がいたら、十人が十人とも私の講義に耳を傾け、私の意図を理解し、私の差し出す手をつかんで、一気に知的開花を遂げるような教師に憧れていた。けれども、二十年くらい教師をしたところで、それが不可能であるばかりかむしろ有害な野心であることに気づいた。教育というのはひとりでする仕事ではない。「いろいろな」教師たちの「いろいろな」教育方法、教育理念との対立や葛藤や協働を通じてはじめて成り立つものである。あるときに、そのことに気づいた。
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教育は、ひとりではできない
学級担任をしていたり、授業を行っていたりする中で、何かうまくいかないことがあったとき、つい「自分が悪かったのではないか」と思ってしまいがちです。
しかし、教育という営みは一人で完結するものではありません。
この言葉に出会ってから、「一人で全部やりきれなかったとしてもいい」と思えるようになり、肩の力が少し抜けた気がします。
とはいえ、これは「責任を取らず、適当にやっていい」ということでは決してありません。
むしろ、どうにもならないことを一人で抱え込まずに、周囲と協力しながら粘り強く向き合っていくことが大切です。
一難去ってまた一難。
このあとには、よく言われる「5月病」や「魔の6月」がやってきます。
気候も不安定になり、生徒たちも大人も気分が沈みやすい時期です。
だからこそ、4月の結果にとらわれすぎず、変に気負わずに、等身大の自分で少しずつ前に進んでいきましょう。

廣瀨 紘太郎(ひろせ こうたろう)
千代田区立九段中等教育学校
「活動あって学びあり」をモットーに、日々研究を重ねています。特に国語科教育では、アダプテーション(翻案)の手法を取り入れた授業を実践し、生徒の深い学びを目指している。
教科の枠を超えて、多様な視点からものごとを捉え、表面的なことだけでなく、その背後にある本質に迫ることを大切にしながらよりよい教育のあり方を皆さんとともに探究していきたい。
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