2024.06.11
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(連載)家族支援@学校~レジリエンシー(最終回)

この連載では、保護者対応を家族支援と捉えなおし、カナダ/アメリカの家族支援の考え方を学校で活かす道を探ってきました。
第二十回の今回一区切りとし、一旦、この連載を終えます。
最終回は、家族支援学でいちばん大切にされている、レジリエンシーについてです。

東京都内公立学校教諭 林 真未

レジリエンシ―って?

昨今では少し認知されてきましたが、レジリエンシーという言葉、もしかしたら初耳の方もおられるかもしれませんので、簡単に解説します。
レジリエンシーの翻訳は、回復力、復元力、弾力。
家族支援の文脈においては、何らかの痛手を負った、あるいは困難な状況にあった家族、家族メンバーが、自らの力で立ち直っていく力を指します。
以前解説したエンパワーにも大いに関係があります。
人は、エンパワーすることで、レジリエンシーを最大限発揮できるのです。

”最初”の”最後”に学ぶレジリエンシー

あれは2000年頃。「レジリエンシー」という言葉もその概念も、まだまだ日本では馴染みがない頃のことです。

カナダの大学で家族支援学を学んだ時、まず最初に、私は「家族問題1」という必修科目を受けなければなりませんでした。
そこでは、家族に起きうる諸問題について徹底的に知識を叩き込まれました。
まず現状を過不足なく知っていなければ、家族支援などできないのですから、これは当然のことです。

けれど、来る日も来る日も胸の塞がれるような事例を検討し、その背景について理解し、次々と家族問題についての哀しい知識が増えていく日々は、なかなかハードなものでした。

こんなにたくさんのやるせない事情に囲まれることのある「家族」を、どれだけ支援することができるのか。
そもそも、それは、不可能な野望なのか。
……と、この科目が終わるころには、すっかり気持ちが落ち込んでしまったことを覚えています。

ところが、この科目の最後に位置づけられていたのが、「レジリエンシー」でした。

家族に様々な困難が起こりうる、と暗澹たる気持ちになっていた私の心は、この概念を学ぶことによって、まるで雲が晴れていく青空のように、晴れわたっていきました。

どんな悲惨な状況にあっても、人は生まれつきレジリエンシーを備えている。
だから、希望を失わなくていい。
悲しく辛い事例ばかりのテキストの最後のチャプターで、「家族問題1」は、私に、そう教えてくれました。
この学びによって、とても感動して、力がみなぎっていくのを感じたものです。

ホントに救われるんです。
最後に「resiliency(レジリエンシ―)」という力を知ることによって。

おそらく、学び手がそういう感情的な経路を辿ることさえ計算して、この科目のチャプターが構成されているのではないか、と私は考えています。
家族支援学、恐るべし……。
私ごときに何ができたのかはわからないけれど、あの頃、もっと声を大にして学んだことを世の中に訴えるべきだったと今さらながらに悔やまれます。

(当時は「カナダの家族支援は日本の20年くらい先を行っている。今、日本にこの家族支援を伝えれば、20年先の未来を先取りして、悲しい状況を予防できるはず」と身の程知らずに思っていたけど、もちろん、私一人の力で世の中の流れを変えられるはずもなく、結局、世の中が予定通りに20年後に追いつくのを見ているだけでした…。)

家族支援は、「人は誰でもレジリエンシーを持つ」という前提を信じぬきます

先に書いたように、「レジリエンシー」という言葉は、回復力、復元力、弾力というのが語彙です。

けれど家族支援の文脈においては、この言葉は、「どんなに深刻な現実があったとしても、人間にはもって生まれたレジリエンシ―(驚くべき回復力)があり、そして、私たち家族支援者は、このレジリエンシ―を信じて、それが最大限発揮されるように、支援を提供していけばいい」という意味合いで使われます。

他の誰でもなくその人自身の力で、人間は回復することができる。
これが家族支援におけるレジリエンシー。
このことを信じることで、家族支援学は成り立っているといっても過言ではないくらいです。

これは、子どもの教育においても、言えることではないかなと思っています。

参考 カナダの大学の家族支援学「家族問題1」テキスト内容(2000年当時のもの)

1.社会の中の家族
2.家族の発達の新しい見方
3.(関係性や社会における)”パワー”の問題について
4.文化的差異、多様性 そして偏見
5.女性の性的役割とされていることについて
6.家族の中の男性、父親としての男性
7.結婚と離婚
8.受胎・出産・子育て
9.仕事と家族
10.貧困
11.家族の中の暴力、虐待
12.介護者、世話する人としての家族
13.回復力と可能性(レジリエンシー)

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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