2021.11.12
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家族支援@学校 「保護者対応」と「家族支援」はどうちがう!?(第三回)

教員の仕事のメインは本来、児童生徒の教科指導と生活指導。ところが、もうずいぶん前から、保護者対応と呼ばれる大人相手の仕事が大きな割合を占めています。
私はこの保護者対応を家族支援と言いかえ、まったく新しい視点で考えていくことを提案します。第三回の今回は、「保護者対応」と「家族支援」がどう違うのかを解説します。

東京都内公立学校教諭 林 真未

「家族支援」は働き方改革

第一回では、現代の家族が、公的にも、私的にも孤立しがちで、支援が全く足りていない切ない現状について、第二回では、家族支援@学校の担い手も、やはり全く足りていない現状について解説しました。そして、結局は最前線にいる「担任の先生」が、背に腹は代えられず、子どもや親の支援を引き受けざるをえない状況があることも。
だからこそ、私は先生方に「家族支援」の力を身につけてほしいと考えています。
けれどこう書くと、昨今の働き方改革に逆行して、私が「教師はこれまでの業務に加えて、家族支援も担うべき」と主張しているように読めてしまうかもしれません。
違うんです。
教師のブラックな働き方をなんとかしたいというのは、私自身にとっても切実な願いです。
むしろ「家族支援」を知ることで、「保護者対応」に費やしてきた時間とパワーをセーブできるのではないかと、期待しているのです。

「保護者対応」と「家族支援」

このふたつとも、保護者にアプローチするのは同じです。
教科指導や生活指導とは別枠にあるということも同じ。
けれど、異質と言ってもいいほど違う営みです。
では、その違いをこれから見ていきます。

対象は「子ども」か「子どもと保護者」か

学校の先生が支援の対象として見ているのは、あくまでも「子ども」自身であって、保護者は、学校での子どもへの指導を円滑に進めるために「対応」すべき存在。これが「保護者対応」の発想といえるのではないでしょうか。
一方、「家族支援」は、子どもと保護者をひっくるめた家族全体のウエルビーイングを目指します。そのため「子どもと保護者」すなわち家族全体を、支援の対象としています。だから保護者は、「対応」する相手ではなく、子ども同様、支援の対象です。

「向かい合う」と「隣り合う」

「保護者対応」は、学校側と保護者側が向かい合って、お互いの主張を伝え合うイメージがあります。
一方、「家族支援」は隣り合うイメージ。保護者の横にそっと学校が寄り添って、一緒に子どもの育ちという共通目標に向かうイメージです。

ネゴシエーション(交渉)とサポート(側面支援)

「保護者対応」の実際では、学校と保護者が同じテーブルで話し合い、それぞれの考えを擦り合わせていくイメージがあります。学校側から言えば、保護者には伝えられない、あるいは伝えても理解してもらえない現実を抱えながら、穏便な解決を目指す。保護者の側から言えば、なかなか思いをわかってもらえない苛立ちを感じながら、ある程度のところで納得して終わる。そんな印象のものだと思います。
「家族支援」は、家族に対するサポートの提供です。子どもだけでなく家族も支援の対象ですから、保護者の困りごとあるいはクレームを丁寧に聞き、それに対応するサポートを提案します。その中には、学校が提供できるサポートのほか、行政制度の紹介、関係機関に繋ぐ等のサポートがあります。そして“サポートしない”サポートも大事な選択肢です。
(「家族支援」の詳細については、第四回から順次説明していきます。)

家族支援はトラブル予防

理不尽な保護者に対しても、「対応」ではなくて「支援」なのか?
ここまで読んで、そう思われる方もおられるかもしれません。
けれど、最初から「家族支援」の考え方を念頭において、保護者の方とコミュニケーションをとっていると、不思議とトラブルが予防できます。理不尽と感じるクレームも現れにくいのです。
それはなぜか。
そもそも、先生も保護者も、トラブルやクレームを双方望んでいません。そしてトラブルやクレームのほとんどが、ちょっとしたすれ違いや誤解、コミュニケーション不足が原因。
そしてその背景には、先生の「親ならちゃんと躾けて」「学習準備もしっかりフォローして」という思いと、保護者の「今度の先生、どうだろう」という値踏みに近い視線があると思います。
だから、まずは先生の方から、その構図を壊してしまうのです。「子どもも保護者も丸ごと支援する」と発想すれば、自ずと保護者への視線も温かくなります。すると、逆に保護者の方も優しい視線を返してくれる。
……理想論でしょうか。
でも、どうせ生きるなら、理想に挑戦してみましょうよ。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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