2021.12.21
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(連載)家族支援@学校 「対等で親しい関係」(第五回)

教員の仕事のメインは本来、児童生徒の教科指導と生活指導。ところが、もうずいぶん前から、保護者対応と呼ばれる大人相手の仕事が大きな割合を占めています。
私はこの保護者対応を家族支援と言いかえ、まったく新しい視点で考えていくことを提案します。
5回の今回からは、キーワードを挙げて、家族支援の基本理念をお伝えしていきます。理論だけではつまらないので、学校現場でありがちなシーンに即して考えていきます。

東京都内公立学校教諭 林 真未

まずはコレ! 「対等で親しい関係」

家族支援は「対等で親しい関係」の上に成り立ちます。これは、家を建てる時の基礎工事のように、家族支援の大前提として、なくてはならないものです。 この視点から学校現場を眺めてみると、「授業の邪魔にならないように、ご迷惑をかけないように」と言いながら、先生に気を使いまくるPTA役員の皆さんとか、逆に、保護者に連絡をする際に、「お世話になっています、お忙しい時間に恐れ入ります……」と、丁寧すぎる先生とか、「対等で親しい」とは言えない関係になっている場合があります。 先生と保護者の間だけではなく、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等と保護者の間にも、実は、専門職と支援の受け手という「見えない上下関係」があります。 もちろん、それが普通でしょうし、全く悪いわけではないのですが、ここではあくまでも家族支援@学校の実現を目指して論を進めていくので、ご容赦ください。

「対等で親しい関係」が不可欠なのは、それが効果的だから

「対等で親しい関係」がなくてはならないのは、それが、家族支援にとても効果的だからです。 どちらかが必要以上にへりくだったり、あるいはなんとなく立場の強弱を感じたりして「対等な関係」がない状態では、健全なコミュニケーションは生まれません。また、お互いにある程度の信頼関係がある、つまり「親しい関係」がなければ、豊かなコミュニケーションにも結びつきません。 人は誰でも、「対等で親しい関係」の人と積極的にコミュニケーションを取りたいし、そんな間柄なら、何かあっても許しあえるものです。支援の実現には、活発なコミュニケーションとお互いの信頼関係は不可欠です。 その効果を見越して、家族支援は、「対等で親しい関係」をその土台に据えるのです。

学校現場で「対等で親しい関係」を築くには

だから、家族支援@学校を実現するために、学校現場においても、まずは「対等で親しい関係」を築きたいと私は考えています。 そのためには、ユーモアと明るさ、可能な限りの自己開示……そんなものが役に立つように思います。 私の場合は、元保護者(しかも専業主婦でPTA役員をやるタイプでした)という強みを生かして、同じ子育て経験者としての共感力や三人の子育て失敗談を活用しています。「なーんだ、先生もいろいろあったんだ」と、親しみを感じてもらえたら、と思って恥を晒しております笑。 また、カウンセラーやソーシャルワーカーといった専門職であるなら、最初の出会いで、そのイメージを壊すような計らいが必要です。 私は、ファミリーライフエデュケーターとして母親向け講座をしていた頃、講座の冒頭で「洗濯をしようと洗濯機を開けたら、干し忘れた前の日の洗濯物が脱水されたまま乾きかけていた」というエピソードをよく話していました。 これで一気に、「カナダの家族支援を学んだ専門家」というイメージと、専門職とただのお母さんという「見えない上下関係」を叩き壊すのです。 「対等で親しい関係」実現に、どこまで成功していたかはわかりませんが、このように、努力だけはしております^ ^。

本当に「対等で親しい関係」でなければ、いらない

「対等で親しい関係」作りは、テクニックではありません。 保護者とうまく付き合っていくために、本音は別にして、表面的には「対等で親しい関係」を築いておこう、と考えるくらいなら、やらないほうがいいです。 カウンセリングや相談の現場では、「傾聴」が大事と言われますよね。けれど私は、「ただのお母さん」だったときに、支援者にうわべだけの「傾聴」をされてうんざりした経験があります。自称・仮面専業主婦と称して図書館で心理・教育・家族等の独学をしていた私には、その支援者が、テクニックとして私の話を「傾聴」しているのがわかってしまったのです。このように、カウンセリングの基礎である「傾聴」も、テクニックとして使われた途端に、ゴミ屑になると私は思っています。 「対等で親しい関係」も同様です。 うわべだけなら、ないほうがマシです。  もしも家族支援@学校の実現に共感してくださるなら、 先生であれば、相手を多くの保護者のうちの一人と考えず、 専門職であれば、相手をクライアントの一人と考えず、 必ずその人自身と向き合ってください。 そして、 本当に「対等で親しい関係」を目指してください。

実は、「対等で親しい関係」が大切な理由は、もう一つあります。 こちらは、家族支援にとって、とても大事な概念に関係していることなので、次回に詳しく書きますね。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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