2022.03.11
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(連載)家族支援@学校~失敗は、忘れたころにやってくる~(番外編)

学校に、「家族支援」の概念を、と始めたこの連載。
学校は「福祉」の担い手ではないのに「家族支援」を持ち込まれても......という多くの先生の抵抗を暗に感じながら、それでも、どうせ保護者とかかわるなら「保護者対応」ではなく「家族支援」を、と、この場でいろいろ解説してきましたが。
今回は、その私自身が大失敗をして、保護者の方にご心配をかけてしまったという告白。家族支援@学校 番外編です。

東京都内公立学校教諭 林 真未

失敗①報・連・相を怠る

「今年度もいよいよあと少し。とはいえ、それゆえに、この時期にトラブルが起きることが多いので、丁寧に教育活動を行ってください」と職員打ち合わせで、副校長先生が言った通りでした。

いろいろ苦労を重ねながら、それでもなんとか今年はつつがなく一年が終わるかな……と思っていた矢先に、大きな失敗をしてしまいました。
詳しい事情は書けませんが、あることで、保護者の方に大変心配をかけてしまったのです。保護者の方にも申し訳ないし、管理職や周りの先生方にも、大変お世話になりました。

失敗のひとつは、ことが起きた後、管理職への報告が遅れた、ということ。
「すぐ言ってくれたら、もっと早く、いろいろ力になれたのに」と叱られました。

悔しいのは、かつて子育て支援業界の一匹狼を自任していた私が、そのキャラを捨て、「この業界では迅速な報・連・相が絶対」と肝に銘じて行動していたのに、それが徹底できていなかったことです。

やっぱり、「この『教育つれづれ日誌』やそのほかの媒体で、いろいろ書いているんだから、なんの問題もなくクラス運営できている人と思われていたい」という深層心理が働いたのかなあ。
大きな行事の前で、そのことに時間をかけられず、管理職と話す暇もなかったんだから、学校が多忙すぎるのが悪いんだ。
「すぐに解決するだろう」と甘く考えて、ことが起きて「すぐ報告!」と思わなかったのが、とにかくダメだったよなあ。
など、失敗を前に、心は千々に乱れましたが、後悔先に立たずです。

「保護者対応」を「家族支援」に、なんて、なんだかんだ言う前に、まずは、報・連・相の徹底は絶対!とあらためて思ったのでした。
皆さんもご留意を。

失敗②思いやり&コミュニケーション不足

そのことが起きたときは、ちょうど大きな行事前で、他にも仕事は山積みで、そのことについて心配はしていたものの、とても、真摯に向き合っていたとは言えない状況でした。
今、振り返ると、しなければならないことで頭がいっぱいで、そのことに集中する余裕がありませんでした。
そのため、毎日ご連絡して、保護者の方の不安を受け止め、解決への道筋を共有し、学校での進行状況をお知らせする、といった丁寧なコミュニケーションを怠ってしまいました。

自己紹介文で、「家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあったらいい」と書いているのに、そのためには丁寧なコミュニケーションしかないと言っているのに、忙しさに負けて、自らそれを怠っているのですから、どうしようもありません。

いやいや、なにより、保護者の方の不安を誠実に思いやれていたら、連絡せずにはいられないはず。
相手(保護者)のことより、自分の都合を優先して、思いやりに欠けていたことに気づき、自分で自分が嫌になります。

失敗③自己覚知不足

今回の失敗を通じて、前回エラそうに自己覚知について語ったくせに、まだまだ自分をわかっていなかったなあと大反省しました。

まず、私は自分に甘い。
こういうことが起きてすぐ、頭に浮かぶのは、「でも……だったから」「わたしは……というつもりだった」というような弁解ばかり。
怒涛の弁解を堰き止めて、「自分のミスです。申し訳ありません」に留められるようにならなくちゃ。

それから、物事を楽観的にとらえる傾向があること。
今回のことも「たいしたことじゃない」「すぐに解決するだろう」と頭のどこかで気楽に考えていた気がします。
そして、忙しさに加えてそのことが、状況をとても案じていた保護者の気持ちに、十分寄り添えなかった一因だと分析したのでした。

そもそも失敗するヤツだと思え

教育雑誌に名を連ねるカリスマ教師だけでなく、同じ職場のデキる同僚たちと比べても、見劣りしない教員でいたいと、もっと言えば、やっとそういう教員になれた、と思っていたんでしょうね、私は。

だから、自分の力ですぐに解決できると思ってしまった。
自分は「ちゃんとやれている」と思ってしまった。
そして、上司に、問題が起きるクラスと思われたくなくて報告が遅れた。

とんでもないことです。

私は私に言い聞かせました。
「おい、お前は自分が子育てが下手だから、同じように、うまくやれないもどかしさを感じている人の力になるために、家族支援者になったんだろ? 今も同じだよ。明らかに教員に向いてないキャラクターのくせに、子どもと家族のそばにいたくて教員になったんだから、そもそも自分が失敗するヤツだと思え。ほかのキラキラ先生と肩を並べられるなんて思うな」

はい。その通りです。

そう思ったら、なんだか心が軽くなりました。
そうだ、私なんて、失敗するのがデフォルト。

こんな初歩的なミスをする私が、「家族支援@学校」の解説ってどうなの、とも思いますが、わかっちゃいるけどうまくやれない日々こそ、等身大の姿。私ができない人間だからこそ、失敗を重ねて学び続けて書いていくんだ!……そう思うことにします(笑)。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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