2021.10.06
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家族支援@学校~なぜ、学校で家族支援をしなければならないのか~(第一回 )

教員の仕事のメインは本来、児童生徒の教科指導と生活指導。ところが、もうずいぶん前から、保護者対応と呼ばれる大人相手の仕事が大きな割合を占めています。教師であると同時に家族支援者でもある私としては、この連載を通じて、保護者対応を家族支援と言いかえ、まったく新しい視点で考えていくことを提案したいと考えました。

第一回の今回は、学校が家族支援をしなければならない背景について、共有します。    

東京都内公立学校教諭  カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)  特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事 林 真未

そもそも、日本は家族関連予算が少ない

教育予算が少ないことは、皆さんよく御存じと思いますが(だから私たちはブラックな働き方をしているんですよね)、日本は、家族支援にかけるお金も同様に少ないのです。
そのため、日本には、本来、家族支援のために用意するリソース(社会資源)が、充分揃っていません。現状では、親に子育ての責任が一任される反面、親としての学びを得る機会は少なく、自分から積極的に動かないと、子育てを助けてもらう機会もありません。
その結果、なかには、知らぬ間に不適切な子育てに陥ったり、子育てを苦痛に感じたりする親が出てきます。
そこに、親自身の成育歴やパートナー問題など、様々な要因が重なると虐待に至ります。
虐待事件が起きるたびに、児童相談所や行政担当課が世の中に責められますが、そもそも基本的な予防が充実していないうえ、虐待が疑われたとき十分な対応をする余裕がないのです。また、たとえ余裕があっても、実際の支援は簡単ではありません。一つ間違うと介入を拒否されてしまうし、躊躇をしすぎると、手遅れになってしまう。世の中の人は簡単に評論するけれど、実は、とても難しい仕事だと思います。

昔はインフォーマル(非公式)な支援があった

公的支援が不足していることは大きなデメリットですが、実は、日本に公的家族支援が少ないのには、理由があるのです。
それは、昭和の頃まで、公に頼らなくても相互に助け合う習慣が存在していたということ。これはむしろ、日本という国のもつ長所です。

多様な形で人々が助け合っていたため、行政が支援を提供する必要がなかったのです。
その一つが「親類縁者」。
昔は、血縁や地縁、同窓等、様々な縁を頼って、困りごとを解決していたわけです。
もう一つは「ご近所さん」。
昭和の、生け垣と縁側のある家々や、隣の音の聞こえる長屋やアパートでは、お互いの暮らしぶりは筒抜けです。コンビニや置き配もなかったため、調味料を貸し借りしたり、荷物を預かってもらったり、ご近所と濃密な関係がありました。
そして、新米の親は、これら周囲の人から、いろいろな知恵を受け継いで、子育てをしていったのです。
令和の今、マンション、コンビニ、ウーバーイーツ、アマゾン、インターネット等を駆使すれば、ひとりでなんでも賄えてしまいます。「親類縁者」や「ご近所さん」との付き合いを鬱陶しく思っていた人には、今のほうがずっと自由でしょう。
けれど、その代り、その人たちの力も知恵も、借りられなくなってしまいました。

でも、

一人の子どもを育てるためには、村中の力が必要(アフリカの諺、カナダ・アメリカの子育て支援の合言葉)
です。

すべての子育て家族に関われる小・中学校

見てきたように、現代の家族は、公的にもインフォーマル(非公式)にも支援が充分ではありません。
もちろん、この時代でも、新しいやり方で上手に子育てしたり、豊かな人間関係を築けたりする親は多いでしょう。
けれどそうでなかった場合、親は1人で悩んでいるかもしれません。支援が必要なことに気づいていないかもしれません。子どもを不適切に扱っていることをわかっていないかもしれないのです。
そうなんです、先生たちが、学校で、特別な対応が必要と感じる親は、実は、なにかしらのバックグラウンドを抱えた、支援が必要な家族なのです。
小・中学校は義務教育ですから、福祉や就学前教育に繋がっていなかった家族でも、必ず学校とは繋がります。これは、大きな力です。どの子育て家族もつながる場所だからこそ、学校は、子どもの様子や親(保護者)の言動を通じて、支援の必要な家族を、漏れなく見いだす可能性をもっているのです。

学校が家族支援のハブ(つなぎ目)になる

ここまで読んで、「だからといって、学校は子どもの教育の場で、家族の支援の場ではないのだから……」と感じられた方も多いかもしれません。「公的な支援やインフォーマル(非公式)な支援が足りないからと言って、学校がそれを押し付けられても、肩代わりはできない」と。
もちろん、就学前に十分なアウトリーチ(出て行って届けるという福祉用語)がなされていれば、学校で家族支援する必要はないです。
けれど、実態として、それは足りていません。
その専門性が学校にないのは承知しています。
けれど、今、学校にいる子どもと親には、家族支援が必要なのです。
だからせめて、学校が、家族支援のハブ(つなぎ目)になることを期待します。
そのために、先生方には、家族支援のシステムを把握し、どのような支援が、あるいはどこと繋ぐのが適切なのかを知っておいてほしい。たまにしか来ないスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーより、保護者にとっては、やはり「担任の先生」が、頼りたい存在であることを踏まえ、効果的な家族支援の基礎基本くらいは知っておいてほしい(知っている方が、うまくいくはず…)。そう思っています。
そのためのお役にたちそうなこと、これからどんどん書いていきます。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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