2022.10.23
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(連載)家族支援@学校~家族支援は「オーダーメイド」~(第十三回)

この連載では、保護者対応を家族支援と捉えなおし、カナダ/アメリカの家族支援の考え方を学校で活かす道を探ってきました。そして、そこで学んだ理論が、保護者との関わりの場面だけでなく、子どもとかかわる場面でも広く応用できると気づきました。今回は、前回予告した「オーダーメイド」について考えます。

東京都内公立学校教諭 林 真未

オーダーメイドって?

以前にも書きましたが、オーダーメイドというのは、その人のサイズや好みに合わせて、一点物のお洋服を作ってもらうこと。
そして家族支援は、絶対にオーダーメイド。つまり、その家族の現在のありように応じて、ふさわしい支援を提供するのが本筋です。
つまり、お洋服作りで言えば、採寸してサイズを確定する段階が、まず必要です。既製服で十分間に合う体形の人もいれば、そうでない人もいます。だから、第九回でご説明した「届くところの平等」の考え方で、必要な支援の量も違うのです。
次に、その家族に合った地域リソースや公的制度を探して、効果的で最適な支援を組み合わせ、あるいは創り出し、その家族に合ったオーダーメイドの支援を提供します。
しかし、実はこれが、日本のシステムのもとではなかなか実現しづらい。日本の場合は、支援の枠組みが先に決まっていて、家族がその枠組の中から選ぶようなシステム、いわばレディメイド(既製服)の支援なんですよね。
おそらく、私たち日本人は、なんにつけても、このレディメイドシステムに慣れきっていて、オーダーメイドを、贅沢やわがままと捉えてしまいがちなのではないでしょうか。

けれど、長い目で見れば、オーダーメイドの支援のほうが、その家族にピッタリふさわしいので、実は、効率的、経済的なのです。

オーダーメイドin家族支援@学校

今の日本の状況の中では、学校は、支援を必要としている家族を一番見つけやすい場所です。毎日通う子どもの様子や親の様子から、その家族の状況が垣間見られますから。私は学校が支援を必要としている家族を見つけたら、速やかに家族支援の提供機関に繋ぐというシステムが確立すればいいと思っています。繰り返しますが、本来は家族支援は学校の役割ではありませんから。
しかし現実には、「学校と地域が連携を」という指令だけが来て、連携コーディネーターは存在せず、スクールソーシャルワーカーも常駐せず、地域の家族支援リソースも圧倒的に少ないという……。
結果、学級担任レベルで、できる範囲のことをするしかないのが家族支援@学校の現状だと思います。だからこそ、応急処置として、学校の先生方に家族支援の考え方を伝えたい。

先生方、保護者に対応するときは、まずその家族の状況や保護者の思い、必要な支援をしっかり見極めることが先です。そして、今あるリソースで、できる範囲のオーダーメイドを。普段から地域リソースの情報を集めておくと心強いです。どうせなら、効果的な支援をしたいですからね。
と書きながら、それがなかなかうまくできないんだよな…という過去の数々の失敗が頭をよぎります。それでも、この考え方はどうしても知っていてほしいです。

レディメイドの教育システムでオーダーメイドの注文を受ける

学校の児童生徒との日常に目を転じても、「子ども一人一人に合わせた教育を」という掛け声だけは聞こえてくるけれど、こちらもまた、実際には、オーダーメイドの教育を作るシステムにはなっていません。レディメイドの教育システムでオーダーメイドの教育をしろという、無茶な注文をされているのが現状です。
そして世間は「今の学校では、子どもが、レディメイドの教育に身体を合わせられて悲鳴を上げている」と批判する。
現場の実感で言えば、多くの家族が一般的な支援だけでやっていけるのと同様、多くの子どもはレディメイドの教育の範囲で十分やっていけるんですけどね。
もちろん、オーダーメイドが必要な子がいるのはわかっているから、私たち教員だって、できれば「子ども一人一人に合わせた教育」=オーダーメイドの教育を十二分に実現したい。レディメイドで大丈夫な子にも、細やかにオーダーメイドの要素を付加してあげたい。誰だって、そう思っていますよね。
……というか、先生方は、すでに、レディメイドのシステムの中で可能な限りの、オーダーメイド化を実現している、と私は思います!

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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