2021.12.02
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(連載)家族支援@学校~「家族支援」ってそもそもどういうこと?~(第四回)

教員の仕事のメインは本来、児童生徒の教科指導と生活指導。ところが、もうずいぶん前から、保護者対応と呼ばれる大人相手の仕事が大きな割合を占めています。
私はこの保護者対応を家族支援と言いかえ、まったく新しい視点で考えていくことを提案します。
前回まで、家族支援@学校の必要性について書いてきました。三回を費やしても、先生方にご納得いただいているかどうか、はなはだ心もとないのですが、もう、このまま突き進みます笑。
第四回の今回は、そもそも「家族支援」とはなんなのか、を解説します。

東京都内公立学校教諭 林 真未

そもそも「家族支援」とは?

「家族支援」とは、当然、「家族」を「支援」することです。
では、「家族」とは? 「支援」とは?
耳慣れた言葉ですが、これをあらためて定義してくださいと問われたら、どのように答えますか。

「家族」の定義

今、家族のかたちはとても多様化しています。それゆえ、「家族の定義」には諸説あり、どれが正解ということもありません。
カナダの家庭支援職養成課程のテキストでは、「家族」とは、「二人以上の血縁または親密な関係に同居した経験のある関係」と定義しています。この定義に従うと、下記に挙げたものは、みんな「家族」です。

●父母と子ども家庭 ●多世代家族 ●共働き家庭 ●祖父母と子ども家庭 ●母子家庭
●父子家庭 ●再婚家庭 ●親類と子ども家庭 ●里親家庭 ●遠距離家族
●パラサイトシングルと老夫婦 ●事実婚家庭 ●同性愛カップル ●友人同士の共同生活

私は、「本人がその人を家族と思えば家族!」と単純に定義しています。精神科医の斎藤学さんは、著書の中で血縁や同居にこだわらない、周期的集まりやインターネットなどで結ばれる「魂の家族」を提案しています。
あなたは、「家族」をどう定義しますか?

「支援」の定義

「支援」という言葉は、施してやる、というような傲慢さを感じると批判する方もいますが、私はそうは思いません。
支援は、英語でいうと、サポート。
その人がうまくいくように、むしろ横から、あるいは背中から支えるイメージのものと私は感じます。

そして、恒久的に続くものではなく、その人が自分の力で生きていくことを目指して、一時的に提供されるもの。「自立とは依存先を増やすこと」という熊谷晋一郎さん(医師、東京大学准教授、脳性まひ当事者)の名言に従えば、人は、いつもなにかしらの支援とともに自立しているとも言えます。
時と場合、また、それぞれの必要に応じて、必要な支援は違います。家族支援はオーダーメードなのです。
誰でも、長い人生の中では、特別な支援が必要な時があるはずです。必要な時に必要な支援を得られることは、むしろ基本的な人権とさえ言えるかもしれません。
第一回で述べたように、それが、家族/子育てに関しては、全く足りていないのですが……。

「家族支援」とは……

以上見てきたことから、「家族支援」とは、多様な家族のウエルビーイング(より良い人生)を目指す、様々な活動をさします。子どものいない家族ももちろん対象ですが、子どものいる家族への支援がやはり中心です。
そしてそれは、子育ての手助けやアドバイス、保育、教育という範囲にはおさまりません。
就労支援、家さがしから、洋服リサイクル、食事支援、学習支援、性教育、婚前教育、親教育、自助グループ、アドボカシー(権利擁護、代弁)に至るまで多岐にわたります。公的福祉から趣味のグループまで、さまざまな地域リソースの情報提供、地域子育てセンター、ファミリーセラピー、法律相談などの必要な支援に繋ぐ作業も支援の範疇。
とにかく、多様な家族それぞれが必要とする支援は、なんでも、どんなことでも提供するというのが、「家族支援」なのです。

子どもと家族と地域は、切っても切れない関係

図は筆者作成

また、家族支援は、子ども-家族-地域は、切っても切れない関係にあるから、子どもの幸福を目指すなら、家族(またはそれに代わるシステム)、そして地域全体が幸福なコミュニティとなる必要がある、という基本的考えに立ちます。
だから、家族支援的な視点に立つと、学校的発想で子どもだけ取り出して考えること自体、成立しないのです。子どもに必要な教育を施すという機能よりもっと大きな大命題として、学校は「子どもを幸せにする」ことを目指している場所だと私は考えています。
そして、子どもを幸せにするためには、家族を、ひいては地域を幸せにするほかない、というのが「家族支援」の基本姿勢です(なお、ここでいう「地域」とは、学校や行政に関わる地域住民だけでなく、そこに住む人たち全てを包括した地域コミュニティ全体のことです)。
教師の傍ら、地域を幸せにするアクションができれば理想的ですが、ブラックな私たちにその余裕はなかなかないですよね。だからせめて、日常の仕事を通じて、自分の受け持った子どもと、そしてその家族の幸せに、少しでも寄与できればいいなあ、と思っています。

次回からは、キーワードを挙げて、「家族支援」の基本理念をひとつひとつ解説していきます。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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