2023.12.28
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月の裏側の世界

保育園見学(保活)や一時保育利用で知り合った保護者さんと現場の保育士さんたちとの交流を通じて考えたこと。自分の立ち位置からは見にくい子どもの新しい面を見ようとすることの大切さ。

知っていることや、分かっていることが行動の支えにはなっても、実際にできるかどうかは別問題。
プロなのに(^^;)
つい自分の子だと、冷静になれなくなるものなんでしょうか。反省を込めて書きました。

墨田区立八広小学校 教諭 遠藤 千裕

知っていて、わかっていてもできるとは限らない。

我が子は只今可愛い盛りの1歳5ヶ月。
絶賛育休中の母親の私とべったりの生活を送っております。
育児堪能中。
育休大満喫中です。
かけたることも無しと思へばの状態です。

私がトイレに入ると泣き叫びます。
トイレに入ってきます。
公園で2m離れると泣きます。
自分で離れていったのに。
不条理でたまりません。
非常に可愛いです。たまりません。

保活と保護者共通の不安

4月の育休明けに向け保育園申し込みのため、秋は保育園見学に勤しみました。
週3軒保育園をめぐり。25ヶ所回りました。
四国の巡礼をした気分です。

保育園の見学では他の保護者さんと一緒になります。
その時に知り合ったママ友、パパ友が一様に心配していたことが保育園に慣れるまで我が子が泣くのに耐えられる気がしない…ということでした。

母子分離と初めての保育園、現場の声

実際にこのことに関して保育園で質問をしている方もいました。
一様に保育園の先生方が回答していたのは
「泣いていても、絶対大丈夫なので、子どもを『はいっ』とバトンタッチしたらすぐに出勤してください」
とのことでした。

エッセーをご覧になっている多くの読者の皆様、教育の現場の皆様もご存知のように、本当にそうなんですよね。

そうなんです。

親が見ることができる子どもはその子の一面でしかないんですよね。
子どもは子どもの社会(保育園であれ、学校であれ)が本当に小さい時からありますよね。
そして集団の中の自分としての行動と、家庭での子どもとしての行動は違うんですよね。

私の勤める小学校でも、一年生が校門でお父さんと離れられない、登校しぶりや不登校気味の子がお母さんと離れられないシーンをたくさん見ました。
行き合えばサラッと話しかけてそのままの流れで下駄箱まで連れていったりクラスまで連れていったり。
そうすると子どもは「先生に対応する小学生」としての対応に変わるんですよね。
人間は社会的な生物なんだなと毎回感心します。
(なので校門のところの保護者さん早く、出勤して・・・とか思うこともあったり)

子どもを持つまでの長い期間、
教員としてそのことを経験を通して体験・理解できたことは子育ての一助になると感じています。
そして今日までは、この経験のおかげで、
他の第一子を保育園に初めて預ける保護者さんより上手く母子分離ができるのかななんて思っていました。

分かっていても、知っていても、できるとは限らない

ところがどっこいです、
どっこいですよ。
初めて区の一時保育利用(1時間保育)を利用したんですが。
まあ、泣く。
泣くなんてもんじゃありません。
母死んだのかな、くらい泣き叫んで呼吸の合間嗚咽していて、とてもじゃないけどその場を離れられないテンションになってしまいました。

知識 < 目の前の泣く子ども

でした。
教員としての経験を通して得た知識ですが
その上で我が子の母子分離不安を乗り越えてバトンタッチしてその場を去る。
難しかったです。
人の子と我が子は全く違いますね。
なので校門のところの保護者さん早く、出勤して・・・とか思った保護者さんにちょっと謝りたくなりました。

いつか、
経験を通して得た知識と、
母子分離不安を克服できた保護者としての経験の二つを融合させて
精神論ではない知恵としての母子分離不安の解消メソッドを見つけられたらな…と思いました。

見つかるその日までは。
精神論で泣く子を置いて
その場を去ろうと思います。
(そして母がいなくなるとなんだかんだ娘は楽しく1時間過ごしていたそうです。そんなもんなんですよね、もう本当に)

私たち保護者を含む大人が他面的に子どもを知る手立て

我々保護者は保育園で1週間研修を受けた方がいいなと思いました。
他のお子さんが朝保護者から離れる様と、
その後いかに子どもが切り替えて楽しく過ごしているのか。
見た方がいい。
私たちみんな。見た方がいい。

きっとそれを見ることで
体感として
「自分の子どもが親に見せる顔と、集団の中の子どもの顔は違うのだ」と腑に落ちると思うのです。
それが自分の子どもは大丈夫、という信頼感になるとともに
一人の人間として多様な面が存在することが体感として理解出来ると思います。

例えば先々、学校でのお友達トラブル等があったときに、俯瞰して事象や子どもを捉える一助になるのではないかなと考えました。

地球から見える月面は常に同じ面ですが、
月にも裏側や側面があるのですよね。

子どもを多面的に捉える。
保護者としても、教員としてもできるようになっていきたいです。

遠藤 千裕(えんどう ちひろ)

墨田区立八広小学校 教諭
脱サラして教員になった育休中の教諭です。 
一般市民、保護者、ママ友、ニュースの視聴者、地域の人間として 「学校」というものを俯瞰してみることを初めて経験しています。 
ママ友との会話等を通して、学校側から見た時は理解できなかった「地域からのお言葉」や「保護者とのすれ違い」について、腑に落ちることが多くありました。
この経験を現場の先生方にもシェアすることで学校と周りの環境の摩擦係数を減らす方法を考えていけたらと思います。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

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