2020.08.20
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支援はオーダーメイド 教育はセルフメイド 

支援も、教育も、お洋服にたとえると、とってもわかりやすいと気づきました。

東京都内公立学校教諭 林 真未

支援はオーダーメイド

家族支援者として、私は長いこと、支援はオーダーメイドと訴え続けています。
このことは、家族だけでなく、特別支援など、他の支援すべてにあてはまると思います。

オーダーメイドのお洋服は、
その人の家に行って寸法を測り、好みや要望を聞き、それにあった生地、糸、ボタン、金具など必要なものをすべてそろえ、仮縫いを経て、プロフェッショナルが縫い上げるもの。

一方、既製服は、
同じ規格同じ種類同じサイズのものが店頭に並んで売られます。ほしい人がお店に出向かなければ、手に入りません。ピッタリのものがあればいいけど、ない場合でも、必要なら、そこにあるもので妥協するしかありません。

そして、オーダーメイドは贅沢、既製服を買うのが当たり前。人々はそう思って暮らしています。

言ってみれば、これが今の”支援”の現状です。

支援の受け手側が、既存の制度に身体を合わせている。しかも、制度は縦割りのことが多く、横断的な利用は一苦労。だから最初からあきらめて、支援を受けない選択をする人もいます。だけど、支援の受け手は一人ひとり違うのだから、本来、それぞれの必要に応じて、オリジナルの支援を創るべきです。

洋服は既製服でもいいけれど、支援はオーダーメイドでなくっちゃダメなんです。

教育はセルフメイド

教育はセルフメイドです。
セルフメイドとは、一からすべて自分で創り上げることです。

気にいった素材を見つけて、紡いで、あるいは織って、普段使いの服に仕上げていく。
そんな丁寧な作業のイメージ。

自分が実践する教育は、もうこれしかないと考えたのは、さんざん人の作った服を着てきたから。
たくさんの魅力的な服(教育実践)を「似合うかも」と買い込んで着てみても、どうもしっくりこない。そんな経験を重ね続けてやっと、教育という服は、自分の本性と地続きでなければ、うまくいかない。自分というキャラクターと一体じゃないとだめなんだ、と気づいたのです。

だから、下手でもぶかっこうでも、自分の手を使ってこつこつ創り続ける。
素敵な素材を見つけてはそれを加え、過ちに気づいては手直しし、少しずつ形を変え続ける、一生完成しないセルフメイド

それがその人の教育だと思うのです。

自分なりの教育をしたい。誰かに言われる教育じゃなくて。

見出しに使ったのは、お笑い芸人EXITの兼近大樹さんが、ある動画のなかで「子どもが生まれたらどんな教育を?」と問われて答えた言葉です。

動画のなかで、彼は、貧困家庭に育ち中卒で犯罪歴のある教育格差当事者/サバイバーとして、教育格差の本質を、見事に射ぬいています。

学識者たちの膨大な言葉に惑わされずに、ぶかっこうだけどだいじな自分のコアを失わず、むしろそこから発想していくことで新しい知見を産む。その鮮やかな様子にとても驚きました。

そして、動画の最後で、彼が、教育はセルフメイドと同じことを言ってくれたので、私はとっても嬉しかったのでした。

「自分なりの教育をしたい。誰かに言われる教育じゃなくて。」

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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