2024.02.15
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保護者も一年生

産後ヨガ教室のお友達と五人で会った時に
「保育園と小学校って違いが大きくて戸惑う」という会話になりました。
小学生2年生の男の子S君を育てるパワフル3男児の母Sさんの相談で、学びがあったので書いてみようと思います。

墨田区立八広小学校 教諭 遠藤 千裕

状況

S君が教室で激しく行動するタイプで、毎日先生から電話をもらっていたのに最近は直接相手の保護者から電話をもらうことが多くどうしたらいいか分からない、ということでした。

内容としては
「A君の筆箱に鉛筆で落書きをした」
「B君にしつこく暴言を吐いて中指を立てた」
「C君を階段で押して6段落とした(幸運にも怪我はなし)」
ということが1ヶ月間にあり、全て担任経由で連絡があり、連絡をしていいか確認をされた上で、相手のお家から電話をもらったそうです。

Sさんの困惑

今までの全てのトラブルは担任が学校で解決してくれて、その内容を担任から聞いていただけなので、年明けから対応方法が急に変わったと感じたそうです。
(もしかしたら、3年生に上がるタイミングでのクラス替えや担任交代の可能性を踏まえ、S君の困り感やトラブルについてSさんの理解を促すために3学期は対応を変えているのかも…と思いつつ)

保育園と小学校のトラブル解決の違い

保育園:

・トラブル相手の名前は明かされない
・園の先生が保育時間中に全て解決してくれて、お家でもお話をしておく程度の対応だった
・短い時間で解決した

小学校:

・トラブル相手の名前は明かされる
・内容によっては学校時間内での全解決が難しく、保護者同士の話し合いや謝罪等々が必要のようだ
・内容によっては解決に時間を要する

これは、保育園と小学校の年齢や発達段階の差が理由だということはSさんも納得しているようでした。

Sさんの質問

Sさんの感情的なわだかまりを捉えることができ自分としてもとても勉強になりました。
Sさんは情熱的で、大きな会社の中堅社員でとても理論的な議論ができるタイプです。
話を聞いているうちにクールダウンしてきました。

①今回の3つのトラブルについて今までのように担任に間に入って解決をしてほしいと頼むのは、無理か?

●考えと伝えたこと

そもそも担任は間を取り持ってくれているので、Sさんが担任に相談する流れで助言や、以前のような介入もお願いすれば可能だと伝えました。
むしろ小学校で起こったトラブルに対し、保護者同士で解決を図ることはとても難しいですよね。
余計に拗れてしまうかもしれませんし。

②相手の親は自分に何を求めているのか?謝罪?こどもの喧嘩に?

 ・相手が何を求めているか分からない。大人の謝罪だろうか?(Sさんは、保護者同士の謝罪は不必要と考えるタイプ)
 ・子ども同士の指導が一通り終わって納得しているのに、大人同士の謝罪が必要だと思う人が理解できない

自分の今までの経験をもとに似た事例を交えて、小学校での一般的なトラブル対応の流れやよくある方法を伝えました。
トラブルを察知してから、担任、学年、管理職と情報を共有し、担任一人で抱え込まずに組織対応をしていることや、時間がかかる場合も双方の家に進捗状況を逐一報告するようにしていること等を伝えました。
組織対応を心がけている点は特に、Sさんは「知らなかった!」と驚いていました。
「組織対応をしてくれているなら、担任の個人的経験値や能力での対応差が均一化されるのでありがたい」とも言っていました。
現場としては当然の手順ですが、知ってもらうことで安心させられたようでよかったです。

 ・家で指導はするけど、激しいタイプの息子の横にいない限り、行動を静止することはできない

ここは子どもへの指導、どう諭して、行動の変容を促すかという教育の大命題だと感じました。
ビシッと指導して、シャキッとした担任のクラスなのに何故か専科教室でダレたり、暴れたりするクラスの話などをして似ている点について話し合いました。
最終的に、周りに大人がいなくても、自らの頭で考えてより良い行動を取れる子にするのが大命題ですが…。
「手を替え品を替え、言葉を替え、質問を替え、根気よく長い目で見て、伝えていく以外ないのかなと思います」と話しました。
「でも決して、彼はこのまま変わらない、自分は彼を躾けたり諭したりできないと思わないでほしい」こともしっかりと伝えました。

今回の件で良かった点

担任と保護者Sさんが信頼関係を十分に築けていた点です。
入学からこれまで、きっと担任は丁寧にやりとりをしてSさんとS君のためにきめ細やかな指導や連絡をしていたからこそ、不信感を持たずに
「私の考えってあってる?ズレてる?」
「ちょっと第三者に相談してから担任に話を持っていこう」
と冷静に考えたのだと思います。

トラブルが起きていない平時にできること

・トラブル対応の流れを学校職員内だけでなく、保護者にもあらかじめ伝えておくことで安心感をもたせる

今回の会話で、一部の保護者に、担任が全てのトラブルを一人で解決していると誤解されていることがわかりました。
トラブルが起こってからではなく、平時に(例えば年度当初等)学校での問題解決手順について全体共有ができていると学校への信頼感が高まるのではないかと考えました。

今回のおしゃべりの中で気づいたことは、自分も含めて、子どもが1歳なら、親も一歳。
子どもが1年生なら、親も1年生 ということでした。
年齢や経歴、社会人経験云々ではなく、本当に新しいフィールドで全く新しい経験をしているのだと腑に落ちました。
保護者側も大いに不安を感じているので、その不安感を安心感に変えられれば学校への信頼はますます高まるのかなと思いました。

同時に、こういう不安を上手に吐き出せる横のつながりを持つことは、教員としても、保護者としても大切だなと感じました。

遠藤 千裕(えんどう ちひろ)

墨田区立八広小学校 教諭
脱サラして教員になった育休中の教諭です。 
一般市民、保護者、ママ友、ニュースの視聴者、地域の人間として 「学校」というものを俯瞰してみることを初めて経験しています。 
ママ友との会話等を通して、学校側から見た時は理解できなかった「地域からのお言葉」や「保護者とのすれ違い」について、腑に落ちることが多くありました。
この経験を現場の先生方にもシェアすることで学校と周りの環境の摩擦係数を減らす方法を考えていけたらと思います。

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