2024.10.16
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男性の育児休暇を取るか取らないかの選択はもう必要ないのではないだろうか(1)

最近、男性の育児休暇に関する話題を耳にすることが増え、取得率は高くなってきたのではないでしょうか。中には、積極的に育児休暇を取得させる企業もあるらしいです。また、私の教え子が大学の卒論テーマに「男性の育児休暇」を取り上げるなど、大学生までにも届く話題になっています。実際に、私の周りの男性教諭の多くが育児休暇を取得しています。男性の育児休暇が増えてきている理由はなんでしょうか。それを紐解いていくために、私の経験談から育児休暇の良さを語っていきたいと思います。

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介

わたくしごとですが

私には1歳5ヶ月になる愛娘がいます。自分の子どもはやはりどの角度から見ても、何をしていても可愛いものですね。よく耳にする「目に入れても痛くない」って言葉を感じているところです。
さて、本題ですが、昨年度、私は育児休暇を取得しました。迷わず取りました。そのきっかけは、10年以上も前のことです。

当時は男性の育児休暇はあまり馴染みがなく、周りのほとんどが取得していませんでした。「男性が育児のために休暇を取るの?」という目線の方が多かったようにも感じます。そんな中、私の男性同僚が育児休暇を取得しました。最初、私も男性が育児休暇を取得することに驚きました。その人の分の仕事はどうするのだろうか。担任の代わりなどいるのだろうか。学級の子どもたちはどうしたらいいのか。など、正直マイナスな視点での驚きの方が強かったのを覚えています。

しかし、同僚の姿を見たり話を聞いたりしているうちに、視点は180度変わりました。自分の子どものことを生き生きと話す姿、職場では見られないお父さんとしての笑顔、何よりも子どもへの愛情の深さを直接感じ、彼にかっこよさを感じました。教室での児童約30名に対する分の愛情を、自分の子どもたった一人にその全てを注ぐことができていました。この仕事だからこそ途轍もない深い愛情に変換されたことだと思います。そんな彼の姿を見て、私は10年以上前から育児休暇を取得することを心に決めていました。

「慣れ」という見えない魔法

育児休暇を取る大前提の良さは、子どもと触れ合う時間を長く持てることが挙げられます。単純に「触れ合う時間が長い」ということだけが良いと言っているわけではありません。それによって、良い効果がたくさん現れて来ます。
一つ目は「子どもが父親に慣れる」ことです。全国の父親にとって悲しいことに、子どもは母親がどんなときでも第一です。それはごく当然だと思います。なぜなら、子どもは産まれる前から母親と命を共にし、母親の命から栄養や力を得ているのですから。父親は産まれてからしか直接関わることができません。悲しいですが、これが我々父親軍団にはどうしようもない現実です。そういう意味で「子どもが父親に慣れる」というのはとても大きな効果があります。

買い物などで母親が食料品を選び、父親は子どもを抱っこする。
母親がお風呂に入っている間に、父親が子どもと一緒に遊ぶ、またはあやす・寝かしつける。
母親が友達と遊びに行くとき、父親が子どもの面倒を見る。
母親が熱を出した時、父親が子どもの全ての面倒を見る。
これらは、ごく普通のように感じ、理想としている子育て像だと思います。何が不思議なのか感じることもできないのかもしれません。

しかし、友人や職場などの様々な家庭の育児に関するお話を聞くと、
買い物は母親が子どもを抱っこ紐で抱っこしながら買い物をしている。
母親のお風呂は子どもが寝ている隙に5分で終わらせる。
母親が熱を出しても子どもを抱っこしないといけない。
子どもを父親に抱っこさせると泣きじゃくる。
父親が寝かしつけできないため、毎日母親が1時間かけて寝かしつけをしている。その間、父親にできることは食器洗いをして子どもを起こさないように静かに息を潜める。

という答えが返ってくることもありました。私もびっくりです。(もちろん家庭によって事情や内容は異なるため、一概に全てに当たるとは思えない)
これが子どもが父親に慣れていない家庭の現実でした。または、父親が子どもに慣れていない家庭とも言えます。

では、どうしたら子どもが慣れてくれるのかというと、話は戻りますが、育児休暇を取得して、子どもとの時間を多く持つことです。子どもと体を触れ合わせることで、子どもに安心感を与えることができます。仕事終わりに少し抱っこするだけでは、子どもからしたら「母親ではない誰か、親戚が来た」と思われるかもしれません。このように長い間体を触れ合わせることで、子どもが父親の体温や抱っこの仕方、声色などを自然と覚え、慣れ、安心感を感じることができます。育児休暇を取得して子どもと過ごす時間を長く持つことで、「子どもが父親に慣れる」と一言で言いますが、実は「慣れる」という言葉の中には果てしない量の慣れる項目が存在しているのです。

父親にしかできないスーパーレア的役割

私の娘が4ヶ月の頃、私は娘と二人で買い物に出かけることがよくありました。そこで知り合いに会うと「母親は?」「一人で買い物に来てるなんてすごすぎる」と言われました。娘をベビーカーに乗せて二人で散歩に行くこともよくありました。周りからは信じられない光景らしいです。

そして、「子どもが父親に慣れる」ことで特に良いことがあります。それが二つ目の良さとなる「母親の負担を大いに軽減することができる」ことです。子育て中は、これまでできていた生活や自由が全て子どもの時間へと変換されます。自分がトイレに行くのも一苦労です。いや、二苦労とでも言いましょう。

子どもが父親に慣れているからこそ、父親にできることは限りなく広がります。家庭の中で父親ができることは父親が行い、母親と一緒に子育てをしていくスタイルを築いていくのが理想的だと思います。先の私の場合だと、娘と買い物や散歩に行っている間、妻は娘の離乳食を作ったり休憩をしたりなど、自分のすべきことやしたいことをする時間を取っていました。
それでも休憩し切れない現状はありました。それは、どうしても父親にはできないことです。授乳です。良い授乳を行うためには、母親の健康面が重要です。この部分において父親にできることは、母親にできるだけ家庭の負担を与えず、ストレスを感じさせないようにすべきだと思います。これは子どもの栄養にも大いに関係してきます。
育児休暇を取得することで、父親が「母親の負担を減らし、母子の健康を保つ役割」を果たすことができます。これは「父親にしかできないスーパーレア的役割」とも言える利点です。

まだお伝えしたい内容があるので、2回に分けてお伝えしたいと思います。育児休暇の良さだけでなく、取得したことによる影響もお伝えします。

育休が 心を繋ぐ オムツ替え

後半に続く。


何卒

石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭


沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。

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