今日もよく頑張りましたね!子育てで落ち込んでいるときに試してほしいこと
私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。子どもとの毎日は楽しいことがたくさんありますが、不安になったり落ち込んでしまう日もあります。そんなときに、心が少し軽くなる方法をご紹介します。今回は「今日もよく頑張りましたね!子育てで落ち込んでいるときに試してほしいこと」をテーマに考えました。
完璧な親じゃなくても大丈夫
子育てに疲れたり悩んだりして、落ち込んでしまう親は少なくありません。そんなときは、まず知識を学ぶことが大切です。今の時代は完璧主義のパパやママが多く、一人で悩みがちです。でも、もっと気楽に子育てを楽しんでも良いと思います。
子育てについての情報はあふれているので、信頼できる専門家や情報源を見つけることはなかなか難しいです。インフルエンサーの情報だけに頼るのではなく、大手企業や大学からの発信、そしてこの学びの場.comのような長い実績のあるウェブサイトから情報を得ると信頼性が高いと思います。私の書いた本もヒントになるかもしれません。私の子育て方法は、子どもの心理を基にしているので少し特別で、子どもが本当に変わります。
でも、子どもに変わってほしいと思うなら、まず親自身の考え方を変えなければいけません。例えば、子どもが言うことを聞かないとイライラするといった感情は、子どもをコントロールしようとする思考から生まれるものです。子どもは生き物であり複雑な存在です。同じように育てても、兄弟でさえ性格や考え方は違います。植物も水をやり日光に当てても思い通りには育ちませんから当たり前のことです。思い通りにいかないから面白い、そんな考えで子どもに接すると良いと思います。
そして、子どもの成功や失敗を親自身の成果に結びつけないようにしましょう。一番大事なことは、どうすればこの子の毎日が楽しくなるだろうと考えることです。
子どもが望んでいるのは、何でも教えられる親や、高い期待をしてくれる親ではありません。子どもを愛してくれて、一生懸命な親です。「僕を愛している」「私は親にとって特別な存在なんだ」「パパとママは私が生まれたことを心から喜んでいる」と、子どもが感じていれば大きな問題にはなりません。どうか自分をあまり責めないでください。この時代に子どもを産み、育てているだけでも十分にすごいことなのです。「やらなくてもいいことはやらない」くらいの気持ちで、完璧を目指さないようにしてはどうでしょうか。
疲れた心を回復させる運動・食事・睡眠
落ち込みがちなときに、幸せホルモンを分泌させる一番効果的な方法は運動です。それも汗をかいて、心拍数が上がるほどの運動がいいです。私のおすすめは、縄を持たずに飛び跳ねる「エア縄跳び」です。短時間でできて、お金もかかりません。道具を用意したり、スポーツジムに行かなくてもどこでもできます。ランニングのように子どもを家に置いていく必要もなく、音も出ないので子どもが寝ている間にできます。運動後はホルモンの環境が変わるので、一週間も続ければ気持ちが前向きになるはずです。
バナナやナッツ、チョコレートなど幸せホルモンを増やす食べ物もあります。ダイエットをしていたり栄養が足りないと、気持ちも落ち込みやすくなります。
そして、睡眠も大切です。特に子どもが小さい時期は、夜泣きで十分に眠れません。睡眠不足では心も体も壊れてしまいます。そんなときは、子どもを預けてしっかり寝てください。睡眠をとらないと、気力は回復しません。
配偶者や周りの人間にできることは、話を聞いて理解することです。「よくわかるよ」「頑張っていることを知っています」と同感してあげてください。励ますことも大切ですが、「もっと頑張れるはずだ」「悩むほどのことではない」といった言葉や、子どもの悪口を言うことは避けるべきです。辛いのは自分だけだと感じて、自分自身を追い詰めている状況なので、「君は素敵な人間ですよ」と気づかせてあげてください。
悩みや気持ちを書き出すだけでも心が軽くなります
もしあなたの周りに話を聞いてくれる人がいないなら、「書くこと」をおすすめします。「今日はこれができなかった」「あれも大変だった」と愚痴をすべて書き出してみてください。そして、一週間後に読み返してみましょう。「なんだ、こんなこと悩んでいたのか」と思えるかもしれません。書くだけでも気持ちは楽になります。
愚痴を書き出したあとは、「感謝の気持ちを込めてもう一度子どもを見たら、どう感じるだろう?」と自分に問いかけてみてください。振り返ってみると、「親になんでも話してくれてありがたいな」「これからもっと良くなりそうだ」といった小さな気づきが得られるはずです。
最後に、自分自身についても「今日もよく頑張りましたね」と締めくくってみましょう。これだけでも、明日を少し楽しくするために何ができるかを考えられる心の余裕が生まれると思います。
これはセラピーでも使われる手法です。専門家のカウンセリングを受ける場合も、日々の生活や気持ちを記録して、自分を客観的に振り返らせることがあります。気持ちを書き出すことはセルフケアになり、それを読み返すことで感謝できることがたくさんあることにも改めて気づけるでしょう。
ただし落ち込む理由は、人それぞれです。あまり落ち込んでいる状態が続くと、うつ病のリスクが高まることがあります。もし、自分ではどうすることもできないと感じたら、専門のクリニックに相談してください。自分の心のケアを優先して、信頼できる人に助けを求めることが大切です。
アグネス・チャン
1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)
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