男性の育児休暇を取るか取らないかの選択はもう必要ないのではないだろうか(2)
前回、育児休暇を取得する良さについて話をさせていただきました。
今回はその続編です。
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介
二人三脚の育児
育児休暇を取得する良さの三つ目は「父親が母親と一緒に子どもの成長を追いかけることができる」ことです。
仕事をしていると(職種にもよりますが)朝から夕方までの時間帯、父親は子どもの成長を見ることができません。帰宅後母親から「今日こんなことができたよ!」と、写真や動画を見せてもらっても、直接見たわけではないのでその感動にはやはり差が生じてしまいます。
育児休暇を取得すると、取得している間は自分の子どもの成長を直に感じることができます。育児休暇が明けると、子どもの成長を直に感じる時間が強制的に奪われてしまいます。もし、育児休暇を取得しなかったら、産まれてから直に感じる時間がずっと休日しかないことになります。女性は産休や育休などの休暇が男性よりも多く補償されていますが、男性にとっての育児休暇は何回もあるものではありません。自分の人生のたった一部分だけでいいので思い切って仕事を休み、子どもと直に触れ合い、成長を支える楽しい時間を持ってみませんか?
夫婦で生活リズムをアップデート
四つ目は、「子どもがいる生活リズムを作ることができる」ことです。子どもが産まれると、これまでのような生活は難しくなります。起きる時間、食事をする時間、テレビを観る時間、お風呂に入る時間など、全てが一変します。子どもが産まれて最初に感じる大変さはこれらだと思います。
もし、父親が育児休暇を取得しないのであれば、父親は仕事があるため、いつものルーティンで動かなければなりません。しかし、母親は育児のためにルーティンを崩さなければなりません。そこで、夫婦の生活リズムのズレが出てきます。その影響として、ご飯を食べたいけどご飯が作られていない、テレビを観たいが観ることができない、話をしたいが話ができないなど、これまで一緒に過ごせていた時間に小さなズレ生じ始め、互いにストレスを感じてしまいます。
育児休暇を取得すると、夫婦共に同じ生活リズムを構築していくことができます。また、育児の大変さを共有しているため、互いの気持ちを理解でき、助け合ったり認め合ったりすることができます。やはり、同じ時間を同じだけ過ごすことは相手を理解するためには大切なことです。相手を理解すると相手を許すこともできます。すると、育児にも余裕が出てきます。それは子どもがのびのびと成長することに大きく繋がります。このように、良いことは良いことを増大させていきます。
育児の天秤は平等でなければならない
これらのように育児休暇を取ることによって様々な良さがあります。私は今、育児休暇を終えていますが、終えたからこそ育児休暇の良さを今でも感じています。職場復帰をしても、子育ての大変さは体が覚えています。だからこそ母親の悩みや困り感、何を準備したら良いのか、助けたら良いのかなどが肌で感じ取ることができていると思います。
しかし、これらの育児休暇の良さを語る上で、前提として男性が必ず持つべき考え方があります。それは、「やってあげている感を持つことは間違っている」ことです。男性の感覚として、子育ては主に母親が行うものと感じている人が多いのではないでしょうか。
例えば、男性が自分の妻に「食器を洗っておいたよ」「子どものおむつ替えてあげたよ」「今日は自分が子どもをお風呂に入れてあげるよ」と発言することがあるかもしれない。これらのセリフに疑問を感じませんか?
私は「あなたは家族の人ではないの?」と問いたくなります。家族として家事をしたり、子どもの世話をするのは当然中の当然だと思います。それなのに、「~してあげた」という表現はおかしいと思います。男性は「育児は母親が行うものではなく、同じだけの量を夫婦で分担しながら行うもの」だと認識しなければならないと思います。その上で、ぜひ育児休暇を取得してほしいです。
育児休暇は「子育てをする制度」としてだけでなく、「夫婦を繋ぐ制度」でもあると感じています。夫婦互いに支え合いながら、時には育児について熱く語り合ったり、家族としての今後の人生の計画を立てたりなど、育児休暇を取得することで「家族を支える、夫婦を支えるための時間」を安定して持つことができます。この安定した時間は、仕事と育児の両立をしている間につくることはなかなか難しいです。「どんな子に育てたいのか」「何はダメで何は良いと伝えるのか」「どのような教育をしていくのか」「どの保育園に行かせるか」「場合によっては引っ越しをするか」など、夫婦で決めることは無限にあります。その時に安定した時間はとても重要だと思います。
ここまで育児休暇の良さをたくさんお伝えしてきました。しかし、育児休暇にもマイナス面は当然存在しています。
プラスがあればマイナスもある
やはり物事には良さがあれば、反対に影響もあります。
育児休暇を取得することで社会とのズレが生じます。私が仕事をしていない間ほとんど家にいたため、社会との関係を閉ざされた状態になりました。私の場合、コロナ禍とコロナ終焉の間の育児休暇取得だったため、世界がマスクを着用していて、濃厚接触者や感染者、パーテーションという言葉が多く耳に入ってきていました。そして育児休暇を終え、いざマスクとアルコール消毒を持って社会に出ると、いつの間にか世界はマスクをせずに普通の日常を過ごしていました。さらに、集団での活動や食事などが全て解禁されていました。このように社会との関係がある程度遮断されるため、何かしら遅れを感じることになると思います。
また、長期の休暇となるため、仕事面にも影響は出てきました。新しいプランや仕事への取り組み方は日々進化しています。新しい教育の形などの研修会はその都度のタイミングに合わせて実施しているため、休暇を取得している身としては研修会を受けていない不利な状態での復帰となります。実際に私が休暇している間に、教育界ではICT機器の授業導入が進展していたし、行事の精選・簡素化が始まっていたりなどしていました。
さらに現実的な話になりますが、金銭面です。育児には予算が大切です。手当がつきますが、それだけでは足りません。計画的に貯めておく必要があります。
しかし、これらのように育児休暇による影響はありますが、取得する良さと比べると比べ物にならないではないでしょうか。子どもと触れ合う時間よりも優先すべきことなんてあるのでしょうか。
私が言わなくても男性の育児休暇取得率は上がっていますが、あえて言いたいです。男性は育児休暇を取るべきです。取得したからこそ良さが分かります。そして、それを後輩男性職員に伝えていかなければなりません。男性の権限力が強い時代から、女性の権限力も平等にしていく時代へと移行しています。男性が育児休暇を取得して、女性は働きに出るという家庭もあるのかもしれません。そんな時代だからこそ、男性も母親代わりできる準備をすべきだと思います。
何卒
石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭
沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。
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