2024.10.02
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子どもの肥満の原因は?楽しみながら正しい食習慣を身につけよう

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。食生活の変化や運動不足などにより、子どもの肥満が増えています。今回は「子どもの肥満の原因は?楽しみながら正しい食習慣を身につけよう」をテーマに考えました。

子どもと一緒に食事の日記をつけましょう

子どもの肥満が増えているのは、食生活が主な原因ではないかと思います。揚げ物や甘いもの、スナック、ジュースなどを摂りすぎていないかを考えてみてください。
子どもが食べた物を正確に把握するために、子どもと一緒に食事の日記をつけてみましょう。何をどのくらい食べたのかを記録してみると、意外と多く食べていることに気が付くはずです。ダイエットの仕組みは単純で、摂取カロリーが消費カロリーより少なければ痩せて、多ければ体重が増加します。

子どもの場合は、栄養を考えてバランスよく食べることが大切です。どのくらい食べて、動いているのかを、子どもと一緒に計算してみましょう。強制されているという気持ちにならにように、楽しみながらゲーム感覚で取り組むようにすると良いです。
「30分歩くとこのくらいカロリーが消費されます。座っていると、このくらい」「呼吸をするだけでもエネルギーを使うよ。人間って、生きているだけでたくさんカロリーを消費しているんだよ」「君の身長はどのくらいかな。毎日どのくらいのカロリーが必要かな?」と、まずは基礎代謝について一緒に学びましょう。

まずは食への正しい知識から

次は、カロリー計算を一緒にやってみます。食べるもののカロリーを毎日一緒に学んで、その後に「カロリーを摂取し過ぎないために、君が食べたいものをどれくらい食べられるか計算してみよう」「学校まで歩くとどれだけのカロリーを消費するのかな」とパズルのように当てはめていきます。そのうえで、「毎日200キロカロリーを減らしてみようか」「アイスクリームを食べたら、ご飯のおかわりはできないよ。どっちにする?」といった提案をして、食べ物を選択するときに、カロリーオーバーにならないように意識を高めていきましょう。子ども自身が納得して取り組まなければ、続けることは難しいでしょう。

忙しくて健康的な食事が準備できないときもあると思います。「買い物する時間も、食事を作る時間もない」という方もいるでしょう。私は子育て中、食材の宅配サービスを利用していました。買い物に行かずに、空いた時間に子どもたちのために3食のご飯を作る事ができました。でもどうしても食事を作る時間がない場合は宅配やテイクアウトなど、自分に合った方法で良いと思います。

ただし、食についての正しい知識が必要です。そうするとコンビニでも健康的なものを選ぶことができます。お弁当やお惣菜を買う場合に、唐揚げとコロッケ、ソーセージといった組み合わせでは、カロリーを摂りすぎてしまいます。おでんとおにぎり、サラダ、鮭だと良いバランスの食事になります。食べ物の選び方を子どもにも教えるのが大切です。

 

 

また、飲み物はジュースなどの甘い飲料は避けましょう。うちでは、子どもの飲み物は麦茶や牛乳、水でした。今でも息子たちはジュースを飲む習慣はありません。お茶といっても、ミルクティーのような甘いお茶は避けましょう。
ジュースやコーラなどの甘い炭酸飲料を日々飲み続けると血糖値が上昇し、インスリンの分泌が乱れ、血液がドロドロになります。ジュースなどに含まれる糖分は吸収しやすく、興奮状態になったり、急に落ち込んだりします。情緒不安定な子どもになりがちで、イライラしてくると、子どもはまた甘い飲み物がほしくなります。大量摂取を続けていると肥満だけでなく、糖尿病になる可能性も高くなります。大人も子どもの前では、甘い飲み物は控えましょう。子どもに飲んではダメと言っても、大人が飲んでいては説得力がありません。

ただし、全ての甘いものを禁止するのは、かわいそうです。我が家ではチョコレートやアイスクリーム、ケーキはOKでした。たくさん食べてはいけませんが、適量なら大丈夫です。スナック菓子を食べると、甘い飲み物がほしくなります。そしてジュースを飲むと、またスナックがほしくなります。その繰り返しで無制限に食べてしまいます。それよりはアイスクリームを1個、ケーキなら一切れ、チョコレート3、4粒を食べた方が健康的です。

そして、ケーキは買わずに、子どもたちと一緒によく作っていました。手作りなら子どもも待つことを覚えますし、どんな材料が含まれているのかを知ることができます。「こんなにお砂糖と油が入っているので、食べる量は程々にね」と言うときに、説得力が出てきます。

大切なのは痩せることではなく、ちょうどいい体型になること

基本的に肥満児でなければ、ダイエットをする必要はないです。私自身としては、子どもはあまり痩せすぎない方がいいと思っています。子どもの成長には適度な脂も必要です。子どもの骨格や体質によって体重は変わりますから、「何キロ痩せよう」と気軽に目標を決めることは良くありません。

大切なのは痩せることではなく、「ちょうどいい体型になる」ということです。太っていることがコンプレックスになると、自己肯定感が低くなってしまいます。そうではなく、「今でも十分素敵、ハンサム、かわいい」という気持ちを持たせてあげてください。

目指すのは子どもが自分で食事管理ができるようになることです。親がいなければできないのでは、子どもは我慢できずに食べたり、食べたことに後ろめたさを感じて、自信を喪失してしまいます。子どもたちに健康的な食生活を身につけさせることは、親から子どもに与えられる最大の贈り物です。自分に合った正しい食べ方を身につけて結果として瘦せたなら、それは健康的な生活のご褒美なのです。見た目ではなく、健康的に生活するための食事管理は大人になっても貴重な生活習慣です。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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