2025.03.25
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愉しい授業を創る 愉しい授業づくり 新年度準備編

「愉しい」授業とは、どのように創ればよいでしょう?と問われたら、どのように応えますか。
人それぞれ異なるでしょうけれど。新年度のスタートに向けて、3月、どのような準備をしますか?
私が初任者のころ、考えていたこと。

浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授 川島 隆

どんな年度末を過ごしていますか?

年度末。
いくつになっても落ち着かず、ソワソワしている私です。
すでに、新たな年度の準備に忙しくされている方、少しゆったりとした気持ちで新年度に向けてエネルギーを充電されている方、教室や職員室を整えている方。
4月から、新たな学校での出会いを心待ちにしている方。
あなたは、どのような年度末を過ごされているでしょうか。

私が初任者の頃のある一日。
日直業務で、事務室での年度末を迎えていました。

「今年度を振り返る」

事務室では、電話対応、来客対応と、普段の学校生活とは異なる慌ただしさがありますが、そのような中で、時間を見つけて、「実践記録」を書き綴っていました。
どのようなことを書いていたかというと。

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子どもたちは、楽しい春休みを過ごしている一方で、学校では、すでに新年度に向かって動き出している。
転任・退職される先生方もいる。
新しく赴任する先生もいる。
学年・学年部も新たになる。

一年間を振り返ると、僕自身、現在の学年体制にだいぶ助けられてきた。
もし他の学年に入っていたら、とてもここまでやってこれなかったろう。
やりたいことを自由にさせてもらったこともあった。
一方で、力不足で、できないこともあったし、気付かない点も多くあった。
まわりの先生方には、「感謝」の一言に尽きる。
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こんなふうに綴っているのは、本当に正直な気持ちで、1年を振り返ると、自然に沸き起こってくる気持ちでもあります。

新年度の課題は、何か

そして、次のように続けています。
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さて、4月からは、2年目。
今まで、初めてだからと許されたことも、厳しく見られることだろう。
また、学年体制も顔ぶれが変わることで、うまくやっていけるかどうか分からない。

自分自身としての2年目の課題としては、(学校の)研修テーマのとおり、「自ら学び取る姿勢を子どもたちに創っていくこと」である。
今年は、教師主導に依るところところが多かった。
子どもたちが、「やるぞ!」という気を持って、誰が言うともなく、課題に取り組むようなことができればよいと思う。
学校生活のある一面だけでもよい。
リレー練習、当番活動、清掃活動、係活動、もちろん授業、どの場面でもよい。
子どもに、「自ら学び取る」姿勢が見られたら、と思う。
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新年度、教師として、何を目指すのか。
明確にしておくことは、この3月だからこそ、じっくり考えられることかもしれません。
4月当初、子どもたちに、「新年度(新学期)の『目標』を書きましょう」と言って、カードに書かせたりすると思います。
子どもに示すかどうかは、とにかくとして、先ずは、教師自身が、目標を持っていることを、私は、大切にしたいと思います。

新年度の課題達成のために

「実践記録」では、さらに、次のように続けています。
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このような姿勢が子どもたちに見られるようになるには、僕自身、どのような指導をするかが大切である。
とりわけ「我慢」の2文字が必要だろう。
また、僕自身、体育科という教科を中心に研修を深めていくことである。
どの教科も難しいが、特に、体育科は、専門であっても、奥深さがある。
「楽しさ」という、たった一つの言葉であっても、今年度、かなり自分を悩ませてくれた。
とにかく、「体育」という教科において、少しでも自信を持てるようにしたい。
そして、3つ目として、子どもと接する機会をできるだけ多く持ち、子どもの心が分かるように、さらに、子どもと心が通じ合えるように努力していくことである。
目の前の仕事に追われ、昼休みや休み時間など、子どもたちと触れ合うべき時に、自分の仕事をしていることがあった。
忙しさの中でも、時間を見い出していきたい。
子どもが今、何を考えているのか、分からないでは困る。
何に喜び、何に悩み、悲しんでいるのか、困っているのか。
一人一人の心が分かるようにしたい。
日記や作文を書かせて、読むことも一つの手立てではあるが、一対一で言葉を交わすことを第一としたい。
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新年度の課題を達成するために、何をするのか、3つを挙げています。
1つ目の、「我慢」とは、子どもの動きを待ち、見守る姿勢を持つということ、
2つ目は、教科指導に少しでも自信を持てるように、自ら研修するということ、
そして、3つ目に、子ども理解を深めるということです。

いずれも一朝一夕にできるものではありません。
しかし、その思いを明確にしておかねば、ただただ場当たり的な生活を送ることにもなりかねません。

結びに

「有言実行」という言葉があります。
発言したことを、責任を持って実践することです。
元々は、「不言実行」からつくられた言葉だとされています。

では、みなさん。
① 「有言実行」
② 「有言不実行」
③ 「不言実行」
④ 「不言不実行」
この4つの言葉のうち、皆さんは、どの言葉を好まれますか?
どの言葉に、価値を見い出しますか?
①や③の「実行」することは、大事です。
そして、その実行(実践)によって、目標が達成されれば何よりです。

そして、「有言」しても「不実行」であった。
これもまた、大事だと思います。

「有言」しておくことは、自分の考えを、先ずは、整理し、目指すところを、明らかにしているわけです。
結果、できなくても(「不実行」)、目指そうという思いをもつことは、それだけでも、価値あることだと思います。
新年度スタートまであとわずかですが、新年度に向けて、思いを、課題を、目標を有言してみてはいかがでしょうか。
言葉にしてみては、どうでしょうか。

これも、新年度の準備の大事な一つではないかと思います。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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