なぜ算数を学ぶのか?「自分の行いに責任をもつため」後編(11)
前編では、算数の学習が「自分の行いに責任をもつこと」につながる理由と、そのための指導工夫について述べました。
後編では、それを踏まえた授業実践を紹介し、最後にまとめとして考察を加えます。
東京都品川区立学校 平野 正隆
実践「図形の角」(第5学年)第3時「四角形の角の大きさの和」
本時は、習熟度別少人数クラスのうち、算数を苦手としている子どもたちを対象に行いました。
導入:予想から見通しへ
三角形の内角の和が180°であることを確認した後、「では四角形は?」と問いかけると、子どもたちは190°や360°など、思い思いに予想しました。前時までの板書を振り返り、既習を基盤に新しい学びへとつなげました。
自由探究:班での学び合い
「三角形に分ければ求められる」との発想を起点に、子どもたちは班で補助線を入れたり、折ったり測ったりしながら探究を進めました。やがて「180°が2つ分で360°」と気づく子が現れ、歓声とともに理解が広がっていきました。

筆者作成
対話的説明:全体での共有
発表では、発表者が「ではこの三角形の角を合わせると?」と問いかけ、全体で「180°」と応答する場面が繰り返されました。聞き手も説明に参加する対話的スタイルにより、発表者と聞き手の双方が責任をもって学びに関わる姿が見られました。
誤りを生かす
ある子は四角形を三角形3つに分け、余分な角を含めてしまいました。しかし仲間とのやりとりを通して「180°を引けばよい」と修正に至りました。誤りを検討する過程そのものが、自らの行いに責任をもつ学びとなったのです。
適用:敷き詰め模様
最後に、正方形や長方形などのタイル敷き詰めに挑戦しました。四角形の角の和が360°であるからこそ成り立つことに気づいた子どもたちは、学びが生活と結びついていることを実感しました。
振り返りと記録
授業の最後に「今日分かったこと」や「もっと調べたいこと」を全員で書き出し、板書に残しました。さらに、その内容をタブレットで写真に撮って共有フォルダに保存しました。次時にその記録を見返すことで、子どもたちは自分たちの学びが継続していく責任を実感できるのです。
まとめ
算数の授業において「自分の行いに責任をもつ」という学びは、単なる知識や技能の習得にとどまりません。学習過程での振り返りや協力的な活動を通してこそ育まれます。本実践では、見通しをもたせ、自由探究で成果を共有し、対話的説明や共同作業を取り入れることで、子どもたちが自らの学びを自分ごととして捉える姿が見られました。
算数は正しい答えにたどり着くことだけが目的ではなく、その過程で自分の考えを確かめ、仲間と共有し、責任をもって学びに向き合うことが重要です。こうした経験の積み重ねこそが、算数を通じて「生きてはたらく力」を育むことにつながると考えます。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
同じテーマの執筆者
-
京都教育大学付属桃山小学校
-
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
-
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
-
陸中海岸青少年の家 社会教育主事
-
兵庫県姫路市立坊勢小学校 教諭
-
岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任
-
福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝
-
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭 -
大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) -
戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表
-
静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
-
佛教大学大学院博士後期課程1年
-
札幌大学地域共創学群日本語・日本文化専攻 教授
-
明石市立高丘西小学校 教諭
-
名古屋市立御器所小学校 教諭
-
高知大学教育学部附属小学校
-
ユタ日本語補習校 小学部担任
-
木更津市立鎌足小学校
-
北海道公立小学校 教諭
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
東京都東大和市立第八小学校
-
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
沖縄県宮古島市立東小学校 教諭
-
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
-
神奈川県公立小学校勤務
-
寝屋川市立小学校
-
鹿児島市立小山田小学校 教頭
-
仙台市公立小学校 教諭
-
東京都内公立中学校 教諭
-
目黒区立不動小学校 主幹教諭
-
東京都公立小学校 主任教諭
-
尼崎市立小園小学校 教諭
-
ボーズマン・モンテッソーリ保育士
-
埼玉県公立小学校
-
大阪府泉大津市立条南小学校
-
岡山県和気町立佐伯小学校 教諭
-
合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員
関連記事
- なぜ算数を学ぶのか?「自分の行いに責任をもつ力を育むため」前編[10]
- なぜ算数を学ぶのか?「美しさや不思議を味わうため」[9]
- なぜ算数を学ぶのか?「見通しをもって生活するため」[8]
- なぜ算数を学ぶのか?「生かそうとする態度を身につけるため」後編[7]
- なぜ算数を学ぶのか?「生かそうとする態度を身に付けるため」前編[6]
- なぜ算数を学ぶのか?「物事を効率的にすすめるため」[5]
- なぜ算数を学ぶのか?「自分の考えを相手に理解してもらうため」[4]
- なぜ算数を学ぶのか?「前向きに生きるため」[3]
- なぜ算数を学ぶのか?「多様な思考や価値観に触れるため」[2]
- なぜ算数を学ぶのか?「日常生活で活用するため」[1]
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事
「教育エッセイ」の最新記事













アグネスの教育アドバイス
映画と教育
震災を忘れない









































この記事をクリップ
クリップした記事
ご意見・ご要望




