2025.11.10
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なぜ算数を学ぶのか?「自分の行いに責任をもつため」後編(11)

前編では、算数の学習が「自分の行いに責任をもつこと」につながる理由と、そのための指導工夫について述べました。
後編では、それを踏まえた授業実践を紹介し、最後にまとめとして考察を加えます。

東京都品川区立学校 平野 正隆

実践「図形の角」(第5学年)第3時「四角形の角の大きさの和」

本時は、習熟度別少人数クラスのうち、算数を苦手としている子どもたちを対象に行いました。

導入:予想から見通しへ

三角形の内角の和が180°であることを確認した後、「では四角形は?」と問いかけると、子どもたちは190°や360°など、思い思いに予想しました。前時までの板書を振り返り、既習を基盤に新しい学びへとつなげました。

自由探究:班での学び合い

「三角形に分ければ求められる」との発想を起点に、子どもたちは班で補助線を入れたり、折ったり測ったりしながら探究を進めました。やがて「180°が2つ分で360°」と気づく子が現れ、歓声とともに理解が広がっていきました。

四角形の角の大きさの和

筆者作成

対話的説明:全体での共有

発表では、発表者が「ではこの三角形の角を合わせると?」と問いかけ、全体で「180°」と応答する場面が繰り返されました。聞き手も説明に参加する対話的スタイルにより、発表者と聞き手の双方が責任をもって学びに関わる姿が見られました。

誤りを生かす

ある子は四角形を三角形3つに分け、余分な角を含めてしまいました。しかし仲間とのやりとりを通して「180°を引けばよい」と修正に至りました。誤りを検討する過程そのものが、自らの行いに責任をもつ学びとなったのです。

適用:敷き詰め模様

最後に、正方形や長方形などのタイル敷き詰めに挑戦しました。四角形の角の和が360°であるからこそ成り立つことに気づいた子どもたちは、学びが生活と結びついていることを実感しました。

振り返りと記録

授業の最後に「今日分かったこと」や「もっと調べたいこと」を全員で書き出し、板書に残しました。さらに、その内容をタブレットで写真に撮って共有フォルダに保存しました。次時にその記録を見返すことで、子どもたちは自分たちの学びが継続していく責任を実感できるのです。

まとめ

算数の授業において「自分の行いに責任をもつ」という学びは、単なる知識や技能の習得にとどまりません。学習過程での振り返りや協力的な活動を通してこそ育まれます。本実践では、見通しをもたせ、自由探究で成果を共有し、対話的説明や共同作業を取り入れることで、子どもたちが自らの学びを自分ごととして捉える姿が見られました。

算数は正しい答えにたどり着くことだけが目的ではなく、その過程で自分の考えを確かめ、仲間と共有し、責任をもって学びに向き合うことが重要です。こうした経験の積み重ねこそが、算数を通じて「生きてはたらく力」を育むことにつながると考えます。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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