「フカイ」学び―「不快」と「付会」から深い学びを問い直す
教育業界限らず、巷には流行りの言葉というものが存在します。
ハイコンテクストな言葉は便利な一方で、定義が曖昧で互いの認識が合わず、建設的な議論ができていない可能性もあります。
今回は「フカイ」学びについて考えていきます。
千代田区立九段中等教育学校 廣瀨 紘太郎
深い学び
学校現場においてフカイ学びとは、言うまでもなく「深い」学びです。
しかし、深い学びの定義を即答できる人は少ないのではないでしょうか。
学習指導要領では深い学びを以下のように定義しています。
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習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点。
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以上からわかるように、深い学びの定義はやや抽象的で、校内研究会や授業で扱う際は具体例を出しながら共通した定義に落とし込んでいくことが不可欠です。
不快学び
ここで別の「フカイ」学びについても考えていきましょう。
個別最適な学びが求められている昨今ですが、生徒にとっての最適が単に「快適」になっていないか、注意が必要です。
快適とは「具合がよくてここちがよいこと」を示します。
例えば端末の活用が目的化し、ただ活動するだけになっている授業は、生徒には快適と言えるかもしれません。
最適と快適の違いもよく考える必要がありそうです。
「不快」な学びと聞けば何か良くない印象を持ちます。
しかし、快適な学びがマイナスの意味で使われるのならば、「不快」の学びはプラスの意味で捉えることもできそうです。
例えば探究的な学びは生徒の思考に負荷をかけることと言えます。
なぜなら、「わからない」「できない」という感情は換言すれば「ここちがわるい」とも言えるからです。
もちろん、その感情を引き受けながら粘り強く学びを促進させていくのは我々、教師の役割であります。
このように、不快学びといっても定義次第で全く異なる印象を持ってしまいます。
付会学び
牽強付会(けんきょうふかい)という四字熟語があります。
意味は「道理に合わないことを、自分に都合のいいように無理にこじつけること」です。
例えば「〇〇を実践すれば絶対に深い学びを実現できる」など自分勝手な解釈でフカイ学びを目指すことはまさに「付会」であり、独善的に無理にこじつけていることに他なりません。
教育という営みは一人では成し遂げることができないからこそ、他者と共通認識を図り、同じ定義の言葉を使えるように工夫していきたいところです。

廣瀨 紘太郎(ひろせ こうたろう)
千代田区立九段中等教育学校
「活動あって学びあり」をモットーに、日々研究を重ねています。特に国語科教育では、アダプテーション(翻案)の手法を取り入れた授業を実践し、生徒の深い学びを目指しています。
教科の枠を超えて、多様な視点からものごとを捉え、表面的なことだけでなく、その背後にある本質に迫ることを大切にしながらよりよい教育のあり方を皆さんとともに探究していきたいです。
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