教え子の幸せを祈って 卒業生の手紙が教えてくれたこと
中学校では、小学校時代にお世話になった先生に手紙を書くという活動が行われているようです。
卒業した子どもたちからの手紙が、小学校に届き始めました。
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一
教え子の手紙

大好きな桜
毎日一番早く出勤し、郵便物を取る作業があるので、卒業した子どもたちから届くはがきを目にします。私が昨年度6年生で受け持っていた子どもからの手紙もあります。文面を見ると、充実した中学校生活を送っていることがうかがえます。
「〇〇部に入ってがんばっています」「友達がたくさんできて楽しいです!」「勉強が難しくなってきました」などなど、子どもたちのいきいきした様子が目に浮かびます。子どもたちの手紙を読んでいると、「もっとこんなことをしてあげればよかったなあ…」「もっと子どもたちのためにできたことがあるのではないかな…」など、後悔の気持ちがよぎります。
今回、子どもたちの手紙を読んで、以前出会った国語教育で有名な、大村はま先生の言葉を思い出しました。それは、「教師は渡し守(わたしもり)」という言葉です。つまり、教師は担当している時がすべてであり、自分の手元から離れたら、見守りながらも次に進んでもらうということだと考えています。
そして、子どもたちに直接関われるのは、現在担任している今この時だけだと改めて思います。もちろん卒業後にも、たくさんの子どもたちが訪ねてくる先生もいますが…。子どもたちは私のもとを巣立っていきますが、私はずっと教え子のことを想い続けることはできます。
「教師は渡し守」、そして「今受け持っている子どもたちとは今しかない」ということを胸に、また気持ちを新たにがんばっていきたいです。
これまでの教員人生を振り返って
教員人生も早いもので今年で27年目を迎えました。長い期間、教員の仕事をしてきましたが、あっという間にここまで来てしまったというのが正直なところです。これまでの教員生活を振り返ると、いろんなことがあったと感じます。うれしかったこともあった反面、正直、今も心に残る傷も多いです。でも、それ以上にたくさんの貴重な経験をすることができました。
今でも、時々会って近況を報告し合う仲間の先生もいます。そんな仲間に支えられながら今の自分がいるんだと感じます。本当にそう思うようになりました。
つい先日、もう立ち直れないかと思うぐらいつらい出来事がありました。その時には、もう24年前に一緒に組んだ先生が心配して励ましてくれました。そのおかげで立ち直り、仕事を続けることができました。感謝しなければならないなあと感じます。また、いつも上司にも恵まれ、さまざまなピンチを何とか乗り越えることができました。
以前、担当していたクラスが学級崩壊のような状態になり、保護者からも多くの批判を受けたことがありました。毎日のように問題が起こり、何度も「教師の仕事を続けられないかもしれない」というピンチに陥りました。そのピンチを救ってくれたのが、当時の上司です。おそらく、私に至らないことが数多くあったと思うのですが、校長先生は私に何一つ厳しい指導をしませんでした。
そして、「あまり気にするな」「休日は学校のことを忘れなさい」といつも声をかけてくれました。もし、この時に、校長先生から私の至らない部分について厳しく指摘されていたら、おそらく今、教員を続けていなかったと思います。そのくらい追い込まれていました。よく乗り切ったと今でも思います。
これまで私のことを支えてくれた方々への感謝を忘れてはいけないと思います。そして、少しでも恩返しをしていかなければならないとも感じます。
「今」この時を常に大切に・・・
これまで26年間、毎朝子どもたちを昇降口で迎える「あいさつ運動」を続けてきました。なかなか成果は出ませんが、とにかく続けてこられたことはうれしく思っています。子どもたちに自分なりに気持ちを込めてあいさつを続けられたこと自体に、価値があると思っています。
私の教員人生も、これから終盤に入ってきます。これまで以上に感謝の気持ちをもって仕事にあたりたいです。今、私のクラスにいてくれる子どもたちへの感謝、いつも支えてくれる同僚たちへの感謝、そしてずっと長い間励まし続けてくれる元同僚の方たちに何か恩返しをしたいと思います。
明日からも、変わらずに先生として子どもたちの前に立ち続けます。心を新たにまたスタートです。今受け持っている子どもたちのためにこれからも全力で取り組んでいきます。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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