2025.11.05
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

明日からできる登校支援 ー児童同士のつながりを育む工夫ー(その2)

今年度は、1年生の担任をしています。
1年生は日々、私にいろいろなことを気づかせてくれます。

大阪府泉大津市立条南小学校 大橋 健太郎

はじめに 〜つながるキーワード「相手の気持ちを考える」〜

そんな1年生のことで、同僚から興味深い話を聞きました。

「列を崩さないために手をつないでください」と言ったら、「お友だちじゃないから手をつなぐことができない」と断られたそうです。
みなさんなら、この話を聞いてどう感じるでしょうか。手を「つなぎなさい」と児童に言いますか。下にスクロールする前に一度、考えてみてください。

私なら、次のように言います。
「そっか。手をつなぐということは、仲よしの印だね。でも、嫌だと言われたとき、お友だちはどんな顔をしていたかな。うれしい顔だったかな。それとも、悲しそうな顔だったかな」

このように言います。私の目的は手をつなぐことだけではありません。重要なのは、相手の気持ちになって考えることです。仮に相手が嫌な気持ちになっているなら、どうすればよいでしょうか。ここを子どもと考えていくことが子どもと子どもをつなぐ「大切なキーワード」になります。

教師も児童の思いを考えること

4月のことです。ある児童が母子分離不安を抱えていました。私はその児童に、前回掲載した登校支援をしました。(詳しくは「明日からできる登校支援~小1の登校しぶりにどう向き合う?~(その1)」をご参照下さい)

しかし、この児童の場合は、これだけではうまくいきませんでした。その証拠に、教室へ行っても泣きやまないのです。ただ不思議なことに、友だちの声かけや手を差し伸べることで笑顔になります。その様子を見ていると、この児童にはクラスの友だちとの関わる時間が必要だと感じました。

このように児童の様子を観察し、どんな瞬間に、どうやって安心するのかよく見ておきます。そうすることで、教師がどのような場をつくり、関わっていけばよいかが少しずつ見えてきます。そんなときに、「子どもの思いになって考えているか」が大切なのです。

安心する場をつくる 「サークルタイム」

サークルタイムとは、円になって話をする時間のことです。目的は、他者理解と自己表現です。
この活動を通して、相手の良し悪しを知り、関わり方を学んでいきます。児童同士が関わる中では、自己表現も重要です。
何も発信しなければ、相手が自分のことを理解してくれません。楽しいことも楽しくないことも含めて、自己表現をすることで、つながりが少しずつできていきます。

活動内容「遊びながらつながれるようにすること」

サークルタイムは朝の時間に行います。
時間は8時45分〜9時00分の15分間です。

主な活動内容は、次のとおりです。

・自己表現
幼児期に学習したものを基にしながら、歌を歌ったり、ダンスをしたりします。

・グループ交流
しりとりやじゃんけん遊び、話題を決めて話をします。

・全体交流
円座になって、お返事リレーをはじめ、クラス全体で取り組むものを選びます。時にはタイムを測り、児童の意欲を高めるようにしていきます。

このように、交流をしていきます。

ちょいポイント① 児童と共に創ること

サークルタイムでは児童の意見を聞いて取り組むこともありました。

「次は何をしたいかな」
「明日はどんな曲いいかな」
というように児童から意見を聞き、取り組む意欲を高めていきます。

ちょいポイント② 成功と失敗を共有すること

この活動では思いを共有することが一番肝心です。成功や失敗も両方、共有します。

例えば、児童から
「今日はけんかをしたから、次はしないようにしたい」
「今日、じゃんけん列車が楽しかったからもう一度したい」
と出たとします。
「けんかをした」という意見は明日に気をつけたいこと、「楽しかった」という意見はもう一度したいことです。

「楽しかった」という意見については、「楽しかった人?」と聞けば、多くの児童が挙手をするかもしれません。
「けんかをした」という意見については、なんて聞きますか。

私は、
「どうしてけんかをしたのかな?」
「どうしたらけんかをしないようになるのかな?」
と聞き返します。

原因を全員に共有するべきか、それとも解決方法を共有するべきか。ここはクラスの実態や発達段階に合わせて、聞き返していくといいでしょう。

ちょいポイント③ ICTを活用すること

ICTを活用することで、子どもたちのよさを視覚的に伝えることができます。市町村によりできる範囲は異なりますが、写真を撮り、児童に見せると効果的です。ICTを活用する意図は、誰にでもわかるように伝えるためです。
児童の中には、つながろうとしてもつながり方やきっかけがつかめない場合もあります。そんな児童のために、上手な関わり方を視覚的に伝えることで、理解しやすくなります。

最後に 〜つながりとは〜

「はじめ」に書かせていただように、私はつながりを思いやりの延長戦上ととらえています。ただし、これは正解であり、不正解かもしれません。私自身が考えるつながりは、私の経験と教育観でできているものだからです。
ですから、読者の方々にあえて問うなら、「先生方にとって、つながりとは?」です。その答えを探しながら、実践を取り組み、日々アップデートしていきたいと考えています。

大橋 健太郎(おおはし けんたろう)

大阪府泉大津市立条南小学校、kyoso's サークル所属、国語教育 大阪探究の会所属


「こどもの思考が生きる」授業を目指して、日々子どもたちと共に学んでいます。
子どもたちが教えてくれたこと、子どもの姿から学んだことを読者の皆様と共有していければと考えています。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

この記事に関連するおススメ記事

i
pagetop