2025.11.13
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年齢にとらわれず、自分らしく「枯れない生き方」を

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。人が年を重ねても、自分らしく輝き続けるにはどうすればよいのでしょうか。今回は「年齢にとらわれず、自分らしく『枯れない生き方』を」をテーマに考えました。

「若さ」は、外見だけで決まるものではありません

70歳になって、「若いですね」「元気ですね」と言われ、編集者からは「なぜ枯れないのかを本に書いてください」と勧められました。それをきっかけに、これまで自分が当たり前にやってきたことを見直すようになりました。

若さというのは、外見だけのことではありません。行動や考え方、そして「気の持ち方」で印象は変わります。だから、私は年を取ることは、まったく怖くありません。むしろ年齢を重ねられたことは感謝であり、誇りなのです。

年齢にとらわれることなく、好奇心を持って学び続け、相手に興味を持つようにしています。この気の持ち方が元気のもとになっています。日々の小さな心構えや行動の積み重ねが「枯れない」生き方につながっているのです。日本語の「枯れる」という言葉には、深い意味を感じます。年齢や見た目ではなく、心や体がしなやかであれば、枯れることはありません。私も、生き生きとしていたいという気持ちで、毎日を過ごしています。

食と睡眠、ストレスを整えて、調子のよい毎日を

自分の体をよく知っていれば、調子を整えられるでしょう。どんなに健康的な生活をしていても、遺伝や環境の影響があり、誰もが病気になる可能性はあります。でも、調子のよい日が続いて、元気に長生きできたら、それだけで十分ですよね。だからこそ、毎日の中で自分の調子を上げていくように心がけています。これは、若い方も年齢に関係なく早めに実践したほうがいいでしょう。

そのためには、食事と睡眠を大切にして、ストレスをためないようにすることが重要です。

私は自分の体質にあった食べ物を選ぶようにしています。中医学には、五臓を健康に保つための「五色五味(ごしょくごみ)」という考え方があります。心臓は「赤」と「苦い」、肝臓は「青」と「酸っぱい」、脾臓は「黄」と「甘い」、腎臓は「黒」と「塩辛い」、そして肺は「白」と「辛い」とされています。

西洋医学とは違った概念で、心臓には血管や脳まで含め、脾臓は胃などの消化器官、腎臓はホルモンバランスも含めた領域、肺は空気に触れる部分なので気管支や皮膚も含まれます。色と味がそれぞれの臓器に関連し、バランスよく食べることで臓器を健やかに維持できるという考えです。

例えば、私は歌を歌う仕事をしているので、声や皮膚をよくしたいという思いから、白菜や山芋、豆腐、白きくらげなど白いものを良く食べます。信じるかどうかは別として、いろいろなものを食べることが大切です。

何を食べたらよいかは、体質によっても違います。乾燥しやすいのか、むくみやすいのか、ほてりやすいのか、冷え性なのか、人によってさまざまです。気力のない人は栄養のあるものを、エネルギーがあり余っている人はさっぱりしたものを、冷え性なら温まるものを食べ、体を冷やす食材は避けるとよいでしょう。すべての食べ物には何かしらの効能があります。自分の体質に合わせながら工夫して食べていれば、調子はよくなっていくはずです。

 

@学びの場.com

睡眠やストレスを自分の意思でコントロールするのは難しいと思うかもしれません。でも、実は睡眠や心臓の動き、体温調節など、日々の何気ない体の働きは自律神経と深く関係しています。だから、自律神経を整えることができれば、心と体も自然と調子がよくなります。その自律神経に働きかけることができるのが、呼吸です。深くゆったりとした呼吸をすることでストレスを和らげたり、ぐっすり眠れるようにすることもできます。

また、セロトニンやオキシトシンといった「幸せホルモン」もイライラを抑えたり、気持ちを落ち着かせる効果があります。幸せホルモンは、家族やペットとのスキンシップ、会話などでも増えると言われています。こうした方法については、私の本にも少し詳しく書きましたので、興味があれば参考にしてみてください。

年齢はただの数字、いくつになっても自分らしく生きる

70歳は一つの節目です。若いころは、70歳はずいぶん先のことだと思っていたものです。でも、年齢は数字にすぎません。100歳になる母が今年亡くなり、これからの生き方を考える機会が増えました。年を重ねても、いつまでも夢を見て、好きな自分でいることが大切だと感じています。

今、新しく取り組んでいることがいくつかあります。恋愛小説を書き始めましたし、気軽に読める漫画のような育児書も中国で発売されました。

また、歌って踊れるような曲も作りたいと考えています。中国では、公園で音楽に合わせて踊る中高年の方々がいます。そうした人たちを明るく励ますような歌を歌いたいのです。私も一緒に踊りたいのですが、なかなか勇気が出ません。それも今の私にとっての挑戦です。やりたいことは本当にたくさんあって、アイデアが次々湧いてきて時間が足りないほどです。

もともと私は仕事を断らない性格だったのですが、最近は無理をしないようにしています。仕事が気になることもあるのですが、息子たちは「ママ、勇気ある行動だ」と言ってくれました。70歳を過ぎて、心のままに生きていいんだと感じるようになりました。

これからの時代、みんな長生きします。いつまでも元気で動けて、毎日自信を持って過ごせるような自分でいられたらいいですよね。

関連情報
新著紹介『70歳、ひなげしはなぜ枯れない - 心も体もしなやかでいるための45のヒント -』

「ひなげしの花」でデビューして53年
70歳のアグネス・チャンが語る、人生後半をしなやかに生きるヒント。
70代はもっと純粋に、前向きに!
気持ちの持ち方・食事・運動・睡眠・人とのつながり……etc.
健康と若々しさを保つために、アグネス・チャンが実践してきた「45の方法」を紹介。
70歳を迎えた今だからこそ伝えたい、心と体をしなやかに保つ知恵が詰まった一冊です。

著:アグネス・チャン
発行:ワニブックス
価格:1,600 円+税

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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