3年生算数の授業から考える 量感をつかむことの大切さ
日々、先生方の授業を参観し、その後のミニ協議を通して、共に授業について考えています。
授業改善のサポートをしながらも、新たな気づきや課題発見など、私自身の勉強にもなっています。
今回は、ある先生の授業を見て改めて感じた「量感をつかむことの大切さ」について紹介します。
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
3年生の算数で見えたこと
3年生の算数の時間。
量の単位と測定に関わる数学的活動を扱った授業での一場面です。
教師:それぞれの□に入る単位を考えていきましょう。
問題【えんぴつの長さは16□です】
(既習であるkm、m、cm、㎜を全体で確認していたので、子どもたちはその中から選んでいました)
児童:cm!kmだと大きすぎる!
教師:そうだよね。
問題【ピクニックで歩くきょり(距離)は5□です】
あまり反応が返ってこなかったので、先生は「正しいと思う単位に手を挙げてください」という活動に変えていました。
教師:㎜だと思う人?
ー誰も手を挙げないー
教師:cmは?
ー誰も手を挙げないー
教師:mは?
ー7人ほどが手を挙げるー
教師:kmは?
ー13人ほどが手を挙げるー
また別の場面では、かさを扱う問題です。
問題【コップに入った牛乳の量は200□です】
教師:これは?
ーLは0人。dLが半分の子。残りはmLー
どうしてこのようなことが起きたのだと思いますか?
そして、どのような手立てがあればよかったと思いますか?
量感をつかむ
「量感をつかむ力」が不足していることが、今回の誤答の原因だと私は考えます。長さについては、ある程度の量感をつかむ経験があるとは思いますが、かさに関してはどうでしょうか?
dL(デシリットル)という単位って日常ではほぼ使いませんよね。目にする機会も少ないでしょう。
「量感をつかむ」とは、ものの数量や大きさをイメージする(見積もる)力を指します。具体的には、長さや重さ、かさなどの感覚をもつことで「だいたいこのぐらい」と予測することができます。
先ほどの問題で考えると
ピクニックの問題。1mがどのくらいの長さなのか、1kmがどのくらいの距離なのか、その量感をつかめていないということです。ちなみにこの子たちは、長さの単位にmやkmがあることは知識として知っているんです。1km=1000mということも理解しています。こう考えると、知識として理解しているだけでは不十分だと言えそうです。
同時にただの知識としてではなく、日常と結び付けて量感をつかませる手立てがあれば子どもたちは問題を解決できそうですよね。私の学校で使っている教科書には、100mを実際に測って歩いてみる活動や、教室の縦や横の長さを調べる活動が載っています。「日常と結び付ける」意図が見られます。
では、子どもたちが普段登下校している道のりや、学校近くのスーパー、公園までの距離はいったいどのくらいなのでしょう?
地図のアプリを使っておよその長さを調べれば
「ぼくって毎日〇kmぐらいを歩いているんだな、そりゃあ疲れるはずだ」
と実感を伴った理解につながると思います。
コップの問題ではどうでしょう。
dLは普段目にする単位ではありません。こんなときには2年生で使った「ます」を目の前に置いて考えさせればよいと思います。「dLますはこのくらいで、mLますはこのくらい。だとしたら…」とそれを基に見当をつけ始めるはずです。もしなければ、作ってみるのもいいですね。 1dL=100mLなので身近なもので作れそうです。
数字も一緒
長さやかさもそうですが、数に関しても量感はとても大事です。1年生で「10のまとまりをつくる」という指導をしますが、10のまとまりによって数の大きさを捉えやすくなり、大小の判断がしやすくなります。また、数をただの記号として捉えるのではなく、意味のあるまとまりと認識できるようにもなります。「数字が数えられるから身についている」と考えるのではなく、数と量がきちんと結びついているかも見取る必要があります。
つい大人目線で
「これくらい、生活していたら分かるだろう」
こんなふうに考えて授業がうまくいかず、子どもが混乱してしまう場面を私自身何度もしてしまっていました。
「量感をつかむ」
これを1年生での指導から充実させることで、学年が上がって扱う数字が大きくなっても、重さやかさなど測定に関する内容が増えても、子どもたちは生活と結び付けて考えることができるのだと思います。

古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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