オランダで確信したこと ― 支援員として見えた日本の学校
オランダでの経験を経て帰国した私は、支援員として日本の教室に戻ることになりました。
教室を飛び出す子どもたち、忙しすぎる学校現場、そして大人が常に見回る教室。
その中で改めて考えたのは、「大人が見ていなくても学べる環境」をつくることの大切さでした。
合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員 川崎 知子
支援員として学校に戻る
オランダから日本に帰国した2019年11月。4月から正規の教員として働くことが決まっていました。今思えば、少しゆっくりすれば良かったとも思います。でも、当時は、仕事をしないことが不安で、「とりあえず働こう」と思いました。12月から学校で支援員として働き始めました。勤務時間は8時半から15時くらいまで。担任ではなく、教室に入って子どもたちの学習や生活をサポートする仕事です。
配属されたのは、いわゆる「座っていられない子」が多いクラスでした。
長年担任をしてきた身としては、子どもたちのサポートもしたいし、担任の先生のサポートもしたい。そんな少し欲張りな気持ちで教室に入っていました。
でも、そのクラスは、なかなか大変なクラスでした。笑
先生に注意をされて、教室を飛び出す子を追いかける日々でした。数人いたのですが、意外と一気に飛び出すことはなくて、順番に飛び出してくれるんだなあ、なんて思っていました。
先生に注意されたいと思っているわけではないけれど、注意という形で先生から「気にしてもらえる」という気持ちが、子どもたちの中に多かれ少なかれあるのではないかとも感じていました。
教室を飛び出す子どもたち
数人の子どもが順番に大声を上げたり、教室にいられなくなったりすることがよくありました。そんな時はその子たちと一緒に、図書室が空いていれば図書室に行ったり、特別支援コーディネーターの先生のところに行ったりしました。その先生は通級を担当していて、部屋が空いているときには使わせてもらうことができました。
その部屋には、大きなトランポリンがありました。そして何より、その先生が本当に優しくて、私はその先生からたくさんのことを学ばせてもらいました。
どの子たちも、別の部屋で過ごすと、本当に穏やかでした。コーディネーターの先生からゲームを借りたこともありますし、私がゲームを持って行ったこともあります。
(その時に使っていたゲームを、実は今、輸入販売しています。)
宿題は家でやるもの?
「勉強なんて大嫌い!」という雰囲気の子がいました。ある日、その子がぽつりと「宿題を終わらせたい」と言ってきました。私は思わず、「えらい!」と褒めて、教室で宿題をさせていました。すると担任の先生から、「宿題は家でやるものでしょう!」と叱られてしまいました。
担任の先生は、本当に真面目で一生懸命な先生でした。ただ、私より年下でもあり、きっとやりづらい部分もあったと思います。
それでも、なるべく対話をしながら一緒に過ごすうちに、少しずつ関係も変わっていきました。いつの間にかLINEを交換し、スーパーで偶然会っては立ち話をするような仲になりました。
オランダで確信したこと
支援員は、担任に比べると時給がかなり低いですし、休憩時間も取れません。他の支援員の方に、「休憩取れないですよね?」と確認してみたところ、「でも、担任の先生たちも取れてないですしね」という答えが返ってきました。すべての先生たちがきちんと休憩を取って、気持ちを切り替えられる環境が必要だと感じました。
また、こんなこともありました。ある日、珍しく(?)子どもたちが落ち着いていて、私は椅子に座って待機していたことがありました。そこにたまたま教頭先生が通りかかり、「ちゃんと立って見回ってください」と言われてしまいました。
長年ぼんやりと考えていて、オランダで確信したことがあります。 それは、常に支援員や先生、つまり大人が見回ることよりも、「大人が見ていなくても学習できる」という状況を、あえて作り出すことの方が大切なのではないかということです。そうでなければ、「大人が見張っていないとできない子ども」、さらには「誰かに見張られていないとできない大人」を育ててしまうのではないかと思うからです。オランダでは、本当にたくさんの子どもたちが廊下などの先生がいない状況でも学習を進めていました。
もちろん、安全のために大人が見守ることは必要です。けれど、すべてを管理し、すべてをコントロールしようとすると、子どもたちが自分で考えたり、自分で判断したりする余白を奪ってしまいます。
支援員として教室に入った数ヶ月は、担任として働いていた時には見えなかった学校の景色を、少し違う角度から客観的に見る時間でもありました。
教室を飛び出す子もいれば、静かに頑張っている子もいる。
一生懸命に向き合っている先生たちもいる。
どんな立場で働いていても、学校現場はやっぱり忙しい。
先生たちが忙殺されることなく、子どもたちの成長のために必要なことを考える余白の必要性を、改めて感じた日々でした。

川崎 知子(かわさき ともこ)
合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員
元公立小学校教員。東京・広島の小学校で約20年勤務。
2017年からは家族とともにオランダに渡り、イエナプラン教育を学ぶ。日蘭イエナプラン専門教員資格を取得し、現地のイエナプランスクールでアシスタントとして2年間勤務。20校以上の小中学校を視察した。
帰国後は、広島県福山市立のイエナプランスクール開校に携わり、現在は日本イエナプラン教育協会理事。
不登校支援や特別支援教育、保護者との関係づくり、対話・探究・遊びを通して、子どもも大人も、安心できる学びの場づくりに取り組んでいる。
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