2026.04.08
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算数科における学び合いの仕掛け― 算数の練習問題を「先生と勝負」 ―

子どもたちの「勝ちたい」という気持ちを、個人間の競争ではなく学び合いの原動力として生かす実践を紹介します。教師対児童という構図を設定し、「全員正解で子どもチームの勝ち」というルールのもと、協力して問題解決に取り組ませます。時間制限や役割意識が協働を促進し、失敗を個人の責任としない価値観を学級全体で共有します。成功体験を積み重ねることで、仲間と学ぶ意義や相互支援の姿勢を育てることを目指した授業実践です。

東京都品川区立学校 平野 正隆

子どもの「勝ちたい」気持ちを学び合いに変える方法

子どもたちは、勝負ごとが大好きです。負けるととことん落ち込むのに、それでも「やろう!」と言ってきます。この勝ちたい気持ちを、個人同士の競争ではなく、学び合いを促すエネルギーとして生かせないか。そこで取り入れたのが、教師 vs 児童という構図です。

子ども同士を競わせるのではなく、「みんなで協力して、先生に勝つ」という構図をつくります。

3年生算数「2けたをかけるかけ算」での実践例

3年生算数「2けたをかけるかけ算」を例に、この仕掛けの取り入れ方を紹介します。この授業では、(3けた)×(2けた)を扱います。

メインの問題を終え、「数が大きくなっても、かける数の位ごとに計算すれば、これまで学んだかけ算や筆算を使って計算できる」とまとめました。その後、適用問題に取りかかる場面です。

全員正解を目指す投げかけが協力を引き出す

ここで、次のように投げかけます。

教師「では、みんなが本当に(3けた)×(2けた)のやり方を理解したか、確認しましょう。全員で、全問正解できるかな」

すると、すぐに現実的な声が返ってきます。

児童「全員は無理です」

そこで条件を示します。

教師「協力しても構いません。解き終えた人同士で答えを確認したり、困っていたら助けてもらったりしてもいいですよ。ただし、答えを写すなど、理解のない協力は禁止です」

児童「それだったら……」

教師vs児童の勝敗ルールが学びの緊張感を生む

ここで、勝負の構図を明確にします。

教師「もし、全員が全問正解したら、子どもチームの協力勝ちです」

児童「もし、一人でも、一問でも間違えたら?」

教師「先生の勝ち!!」

少し強引に聞こえるかもしれません。しかし、続けて大切なことを伝えます。

教師「ただし、そのときは、その1人を責めてはいけません。協力したはずなのに、気付けなかった周りにも責任があると思いませんか」

児童「たしかに。自分がその1人で責められたら嫌だし」

この一言で、「失敗=誰かのせい」ではないという価値観が共有されます。

時間制限を設けると子ども同士の協力が加速する

教師「では、〇分間で、勝負開始!!」

児童「ギャー!」「時間制限あるの?」「短すぎ!」

と叫びながら、子どもたちは一斉に問題に取りかかります。時間制限があることで、早く終えた子が周囲を見る、困っている子に声がかかる、答え合わせが自然に始まる、といった動きが一気に活性化します。

教師の役割は勝つことではなく成功体験を積ませること

この場面で最も大切なのは、子どもたちに成功体験を積ませることです。教師は机間巡視をしながら、間違えている子のところで、小声で「もう一度、ここを確認してみようか」と促したり、他の子と答えを合わせるように勧めたりして、最小限の支援を行います。

また、設定した時間内に終わらなかった場合、子どもたちは「もっと時間ください!!」と声を出してきます。初期の段階では、そのたびに時間を延ばしてあげます。

全員正解の成功体験が協力する姿勢を育てる

大切なのは、「みんなで全員、全問正解できた」という体験を、しっかり味わわせることです。この成功体験が、協力すれば達成できる、周りを見ることが自分のためにもなる、という感覚につながっていきます。

慣れてきたら、「今回は、時間を延ばさないでやってみよう」と、子どもたちと確認してから挑戦してもよいでしょう。

勝負という形を借りながら、実際に育てたいのは、学び合う姿勢と仲間へのまなざしです。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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