「公認心理師をもつ教員」には、学校の何が見えているのか
広く教育に関わる方々の中には、心理に関わる資格を持ちながら、担任として教壇に立ち続ける現職の教員がいます。
公示されている職業分野と合格者数などから推測すると、全国では数千人規模?とそれなりの人数となるのではと推測されます。
ただし、自分自身の経験上、資格があっても給与に反映されるわけでもなく、心理に関わるポジションが小学校において特に約束されているわけでもありません。
多くの場合教員免許のように資格ありきで採用されているのではなく、教職を続ける中で資格を取得された方がほとんどだと思います。
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭
公認心理師資格をもつ教員は学校現場にどのように関わっているのか
教育者が心理に関わることには、さまざまな意見があるとは思いますが、私がそうであるように、それぞれ理由があって資格を取得されたのではと思います。私の場合は、どうしても対処しなければならない現場の状況にありながらも、判断の基盤となる考えや情報・状況の受け止めが不足していることに気がついたことが一番の理由でした。
今回は、私が実際に職場でどんなことをしているのか どんなことをしようと考えているのかを述べてみたいと思います。
なぜ、教員が心理資格を取得するのか
教育者が心理に関わることについては、賛否や立場の違いがあるテーマだと思います。でも、今の現場の状況は立ち止まってはいられません。どんどん成長する子どもたちを支えてあげたいので、「待った!」もできません。
だから、心理的な資格取得に至る背景には、それぞれの現場経験に根ざした「待ったなし!」の理由があるのではないでしょうか。
私自身の場合、経験や善意だけでは対応しきれないと感じたことが、心理学を体系的に学び直す動機となりました。
学校は「人」と「関係性」で成り立っている
現在の学校現場では、一人の教員が抱え込むのではなく、チームとして一つの事例に向き合うことが求められることが増えています。これは支援の内容・質を高めるだけでなく、教員自身の負担を軽減し、継続的に続ける意味でも大切なことだと思っています。
学校という場は、同じような制度や校舎であっても、そこに集う教職員の関係性や、共有されている価値観によって、雰囲気や文化がずいぶんと違うものです。年度ごとに教職員の異動があっても、子どもたちにとって安心できる、温かい雰囲気がずっと維持されている学校が存在するのも事実です。
そこには、教育の課程や組織の在り方といった要因に加え、教職員同士が、みんなで知らず知らずのうちに実践で得た知識や考え方を、すり合わせてきた積み重ねがあるのではないかと感じています。
公認心理師資格をもつ教員が果たせそうな役割
もし、そうした学校文化の形成や維持の過程に、心理的な視点もできる先生の存在が、ささやかでも影響を与えているとしたらどうでしょうか。
会議や日常のやりとりの中で、公認心理師資格をもつ先生の一言が、他の教員にとっては無自覚だった子どもの状態や学級の在り方に気づくきっかけになったと聞いたことがあります。それは「専門家としての助言」というよりも、物事の見方の選択肢を一つ増やすことに近いものかもしれません。
心理資格をもつ教員に求められているのは、資格そのものを前面に出すことではなく、学びを通して得た視点や言葉を、学校という場の中でじわじわと共有していくことかなと考えています。あくまで現場の教員の一人として、周囲との関係性の中で、でもこれは自分の役目だなと思っていることを果たすという感覚です。
現役・公認心理師教諭が意識していること
以下は、私自身が学校現場で意識していること、また今後も大切にしていきたいと考えている関わりの視点です。
- 職員室の受容的な雰囲気を保つこと
教員同士が安心して相談できる空気を保てるように心がけてます(冗談ばかり言ってますが)。 - 年間行事やカリキュラムの流れを踏まえた情報共有
学期の節目や行事前後に、子どもの心理的負担を想定した視点を時々話します。 - 日常の関わりの中で子どもの心を支える
特別な支援だけでなく、普段の声かけや関係づくりをどんどんやってます。自分のクラス以外の子ともかなりの数コミュニケーションを取ります。 - 保護者の思いや不安も整理し、両者に伝える役割を担う
面談に立ち会い、相互理解を促す方法はないか一緒に考えることもあります。 - 実践を言語化し、記録や発信につなげる
校内研修や紀要、実践報告、研究論文など、形は問わず作って、ここぞという場で共有し、こういう考え方もあると示したりします。 - 研究と現場をつなぐ媒介的な役割を意識する
できる範囲ですが、理論をそのまま適用するのではなく、現場に即した形で翻訳する視点を大切にしています。やっぱりそのままではわかりにくいことが多いなあと思ってるので。 - 同僚性に基づく心理的支援
専門家としてより、同じ教員としてなんとなく隣に座っている感じでいるつもりです。それで、誰かが安心してくれるのならそれでいいと思っています。 - 心理的視点を生かした授業や活動の工夫
時々、公開授業を引き受けて心理的な視点を盛り込みつつ授業を行います。特別支援教育的な授業や心をそのまま扱う保健の授業の実践が多いです。 - 学校内での支援モデルとなる実践を、無理のない形で示す
じっさいに一緒に教育相談に関わったり、相談の仕方のモデル提示もしたりします。ただし、あくまでも教室で再現可能なものにしています。
学校現場における心理的支援はどのように行われているのか
学校現場における心理的支援の特徴は、効果や変化を日常の実践の中で確認し、その都度調整していける点にあると感じています。支援の重さや方向性を固定せず、子どもや学級、学校の状況に応じて柔軟にそして継続して関わることができると考えています。
公認心理師資格をもつ教員であることは、特別な立場を主張することではありません。むしろ、日常の教育実践の中で、見えにくい側面にそっと目を向け、学校という共同体を内側から支える一つの在り方なのだと思います。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト
いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。
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