2026.03.14
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通常級の特別支援 一斉指導時の声かけ(3)

最近、いろんな自治体で先生方にお話しする機会があるのですが、どこへ行っても強く感じるのは、先生方が通常級の特別支援に本当に苦労されているんだなあ......ということ。特に、ほかの子に害を与えたり、授業妨害したりする子をどうすればいいのか、頭を痛めておられます。
そう、特別支援と通常級の特別支援は全く違うんです。私は先生方にそれを強く伝えたい。 そして、なんとか皆さんのお役に立ちたい。
というわけで、3回目の今回は、一斉指導時における私の実情を公開します。

東京都内公立学校教諭 林 真未

耳当たりのいい言葉より目の前の事実を優先する

特別支援の専門家は、その子本人の支援について「こうすればいい」「ああすればいい」って教えてくれるけれど、通常級の担任にとっては、その子は30人前後の子どもたちのなかの1人。彼らのアドバイス通りに、その子だけに注力して丁寧に対応することなんてなかなかできない。 
そうしたいのはやまやまだけれど、学級全体の運営があります。その中で、その子と周りとの関係性があって、ほかにも気になる子がいて、それから手のかからない子だって同じように大切にしたい、となると、......悩ましいですよね。

「発達障害はグラデーション、どの子にもその要素があるのだから特別視はしないで」
「困った子は困っている子、その子の心に寄り添って」

とか、あーもう、うんざり。
そんなことはわかってます。もう何度も聞かされました。

現実を直視しましょう。
通常級には、明らかに他の子と異質な子が必ず数人います。もちろん異質=悪じゃない。ただの事実です。
困っている子は、逸脱行動で先生やクラスメートを困らせています。これもまた事実です。そして通常級の担任は、基本的には一人でこの状況に立ち向かわなければならない。
これが多くの担任の先生方が直面している現実ではないですか。

一斉指導後の個別の声かけ

その子たちは、基本的に「一斉指示に従う」はできません。
繰り返し、聞いていないことを非難して「ちゃんと話を聞いていなさい」を言い続けても意味はない。だってそれができていたら、他の子とすでに同じ行動ができているはず。

だからもう彼らはそれができないことを前提に、その授業の課題を説明するときは、一斉指導と個別の声かけをセットにするよう自分に習慣づけています。
(私の場合、つい個別の声かけを忘れて、その子ができていないと「もお…、聞いててください!」って性懲りもなくプンプンしちゃうということがよくあるのは、ここでは隠しておこう笑。)

なんとか、このエクストラワークを減らそうと、個別の声かけをする一方で、本当は、みんなと一緒に一斉指導を理解することがスタンダードなんだ、ということも絶えず伝えています。1年間かけてゆっくりと。
年度の中盤からは個別の声かけの前に「今、先生は何と言いましたか」と、一斉指導で話を聞き取れたかどうかを確認し、できていたら大いに褒めます。

なお、個別の声かけの必要度合いによって、座席の配慮をします。
100%必要な子の場合は、最前列のどこかに必ずいてもらうかな。

以前、お伝えした学級運営と教師のありようが十分機能していると、子どもたちに「一番前ばかりでずるい」「いつも一番前でダサい」という感情は湧いてきません。単純な適材適所と理解されます。

ついでに言うと、口頭と板書もセット。これは特別支援が必要な子だけでなく、クラス全体の指示理解を助けます。
やむをえず口頭だけで伝える時は「黒板には書かないからよく聞いて」とあらかじめ言います。

指示に従わない子

また、単純に聞き取ることができないのではなく、分かった上で「指示に従うのが嫌だ」と主張する子もいますよね。はっきり言葉にする子も、態度でそうと知らせてくる子も。
その場合、私は「わかった」と引き下がります。
すると、放っておけばいつのまにか言われたことをする子、「やっぱやる。どうすればいい?」と聞いてくる子、いつまでも意地を張り続ける子、いろいろです。

いつまでも意地を張り続ける子には、よく話を聴きます。その時間内に一斉指導やほかの子の指導がある場合は、休み時間や給食の時間、放課後に話します。
よく話を聴いてみると、こういう子のほとんどが「言っている意味は分かるけれど、そのやり方が分からない」が原因でした。そう素直に言えなかっただけなのです。もしかしたら、そう言えばいいということ自体を思いつかなかったのかもしれません。
毎授業のたびに「もうやだ!やらない」と叫ぶ子がいたのですが、そのからくりがわかってからは、同じ言葉が私の耳には、「困った、分からない」と聞こえるようになり、「はいはい、ちょっと待っててね」と穏やかに対応するだけで済むようになりました。

それでもまだ指示に従わない子

さらに、意味もやり方もわかっているけれどやりたくない、という子もいます。
この場合、それこそ今はやりの主体性を大切にするならば、やりたくないという気持ちを大切にすればいいではありませんか。その子の主体性を尊重してそのままにしておいて……
なんて意地悪なことは言いません。教育業界における主体性ってそういうことじゃないですもんね。
あくまでこちらが設定した学習内容の範囲内での主体性を発揮させなければいけないのが教師の役割(個人的にはそれを「主体性」と呼ぶことに違和感を抱き続けて、もう10年が経った笑)。

そういう意味では、やりたくないと主張する子だって心の奥底では、やったほうがいいかなってちょぴっと思っています。そして説得されることを待っているかもしれないのです。
こういう子に対峙するとき、私は学級運営編で子どもと共有するとお伝えした、「何のために学ぶのか」という価値観を引っ張り出します。

もちろん、言い方はもっと丁寧ですが、私が伝える内容はこんな感じ。
「学びは自分のためだけじゃない。みんなを幸せにする道具。そのために学校も先生も用意されている。つべこべいわずに早くやれ!」

次回は「傾聴・共感」を深堀ります。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」

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