2020.06.03
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コロナに負けない・流されない教育を!(パート2)

今回は、3年生最初の説明文の授業について書きました。
新型コロナウイルス感染症対策による臨時休校で時数が足りない中でも、私なりの指導すべき部分について書いています。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

説明文の授業開きについて(3年生)

今回は、3年生における最初の説明文の授業開きについて書いていこうと思います。

さて、前回にも書きましたが、私の自治体は新型コロナウイルス感染症の影響により、5月いっぱいまで休校になっています。国語の授業においても、例年通りの時数で、各単元を進めていくことはほぼ不可能です。従って、どこに焦点を当てて、どんな力をつけさせたいかを明確に教師自身がもっていなければなりません。

では、国語の説明文においては、どうでしょう。3年生の説明文では、「要点」を学習した後、「要約」を学習して、最終的には自分で要約できる力を育む必要があります。では、「要約」をする上で欠かせない「要点」はどの教材で学習するのか。私の自治体が使用している教科書は「東京書籍」ですので、それは、「自然のかくし絵」という最初の説明文の教材になります。ただ、要点を学習するには、2年生で学習する文章構成(「はじめ・中・おわり」)を理解しておかなければなりません。ここを理解しておかなければ要点を捉えることは難しくなります。算数でいうと2年生で学習するかけ算が分からないのに3年生で学習する割り算が分かるはずないという理屈と同じです。時間がいくらないといっても、最初の説明文の授業では、文章構成の復習をすることから始めるべきだと思います。

文章構成が明確な1年生の教材を使用

この文章構成の復習は、二瓶弘行先生(桃山学院教育大学教授)の講座を受講した時に刺激を受け、実践していることです。それは、「説明文の家」というフレームを作り、そこに「はじめ・中・終わり」の部屋を作り、さらには、小部屋を作って、名前をつけていくという学習方法です。この各小部屋につく名前が要点に当たるものです。これを、まずは3年生であっても1年生の文章構成が明確な教材を使用して学習していきます。この学習目的は、文章構成を復習すると同時に要点の捉え方を学習してもらうことです。

ところで、最近、職場の先輩からの薦めで、犬塚美輪先生(東京学芸大学准教授)の『生きる力を身に付ける14歳からの読解力教室』を読みました。その本を読んでいると、二瓶先生のこの学習方法とつながる部分がありました。それは、

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読解に限らず、方略をうまく使える「方略マスター」になるにはいくつかの壁を破らなくてはならないんです。第一の壁は、「方略を知らない」壁です。

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(犬塚美輪『生きる力を身に付ける14歳からの読解力教室』笠間書院 2020.4.p126)

つまり、上手く「要点」を捉える方略を使えるようになるには、まずは、「要点の捉え方」を学習する必要があるのです。そこで、3年生がいきなり3年生の教材文で捉え方を学ぼうとしても、クラスの児童全員が捉えられるとは限りません。そこで、簡単な1年生の教材文を使用して、まずは、「要点の捉え方」を学習することで、犬塚先生のおっしゃる「方略を知らない壁」を破ることができるのです。ちなみに、犬塚先生は第二の壁として「自分から使おうとしない」壁を挙げています。この壁を破るには、方略のメリットを感じたり、自身にかかるコストを低く感じられたりすることが大切だと書かれています。ここを見ても、1年生の教材を使うことは理にかなっていると言えます。また、最後の第三の壁を「うまく使えない」壁としています。この壁は、1年生の教材文を読んでいるだけでは、負荷が少ないため、感じることができません。そこで、いよいよ3年生の教材文「自然のかくし絵」に戻って、クラス全員の力を一人ひとりが借りながら、「要点」を捉えていく学習を設定していきます。

自力で論理をたどれる読み手に育てよう

以前にも書きましたが、塾の国語講師をしている時代に、いわゆるペーパーテストでの出来不出来は、「読み取り方」を知っているか、いないかによるものだと痛切に感じました。極端に言うと「筆者の意見」について問われている場合、対峙している文章構成が双括型なのか尾括型なのか、それとも頭括型なのかの知識を知っているだけでもかなり違ってきます。だからこそ、授業でも、「頭括型だと筆者の意見は最初に書いている」という「読み取り方」「捉え方」を教えなければなりません。公教育と私教育の国語授業の違いはあれども、公教育であっても、論理的な「読解力」を身に付けるには、「読み取り方」「捉え方」を学習する必要があります。そうでなければ、自力で論理をたどれる読み手には育ちません。

臨時休校で時間が思うようにかけられないとしても、指導すべき部分と端折る部分をよくよく精査していきたいものです。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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