2020.10.19
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物語文の教材研究(part1)

今回から数回に分けて、物語文の教材研究について考えていこうと思います。今回は、第1弾として、教材研究をする上での心構えの部分と物語文を教えるにあたっての考えについて書こうと思います。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

前回は、国語授業におけるグループトーク、特に「お尋ね」を用いたグループトークについて紹介しました。今回からしばらくは、そのグループトークを使った物語の授業について紹介をしようと思います。まず今回は、一つの単元を作っていく上での教材研究の意識の部分を紹介します。

1.そもそも教材研究をする際の意識は……?

さて、いきなりですが、私は先日美容室に行きカットとパーマをあててきました。所要時間はなんと3時間半でした……。美容師さんは、とても丁寧で細かい部分も丁寧に丁寧にカットしてくださいました。そして、美容師さんの満足のいくまでカットをし、パーマをあてると先述の時間になりました。また、この時の美容師さんとの会話で、「まだ晩御飯を食べていないのです」というやり取りをしたのにも関わらず、終わったのは9時半でした。ここから、私は2つ、授業に繋がることがあると感じました。

まず一つ目は、「自分の理想や考えをおしつけない」ことです。教師は、特に研究授業などの授業において、日頃の何倍もの時間をかけて教材研究をします。すると、それなりに自分なりの教材に対するフレームができあがり、「この教材はこうあるべき」「この部分は、こういう読み取るべき」という考えになりやすいです。しかし、これは、あくまで教師側の勝手な理想であって、もしかしたら子どもたちはそうは思っていないかもしれません。少なくとも、私は、この美容室では、「もうだいぶ長い時間かかっているから多少雑でも早く帰りたい」という思いがあり、そこで美容師さんとは、かみ合っていませんでした。だからこそ、いくら教材研究をしても、目の前にいる子どもたちの考えや意図を読み取りながら進める「柔軟さ」が大切だと考えます。

そして、二つ目。私は、「晩御飯を食べていない」という会話を美容師さんとしているわけです。このやり取りを聞いた美容師さんは、やはり丁寧さも大切ですがスピードも多少なりとも意識するべきだったと思います。これを授業に置き換えます。授業も子どもたちとのやり取りの中で流れが進んでいきます。そんな時に、「自分はこう教える」とフレームをもっていて、子どもたちの考えに耳を傾けなければ、子どもたちの考えとはかけ離れていき、かみ合わなくなります。だからこそ、教材研究をするけれども、最終は「子どもたちの考えに耳を傾けるという強い意識」が必要だと思います。

2.物語文の授業をする上では……?

物語文の授業をする際に、何を考えて授業をされているでしょうか?「楽しさを知ってほしい」「その物語自体の深みを理解させたい」「日々の授業に追われとりあえず1時間やっつけで終わらせている」等々、年齢、経験、価値観、はたまた使用する教材によっても変わってくるかと思います。私は、正直国語の授業をするのや考えるのが好きなだけで、小さいころから本を全く読んでこなかったですし、今現在もあまり読みません。これも正直なところ「そのお話の面白さを自分も分かっていない」ことのほうが多いです。だから、「読む楽しさ」を感じさせるという言葉や多読の薦めは個人的にはあまり好みません。(もちろん、単元によっては多読にもっていくこともありますが……)

では、どんなことを考えて物語文の授業をしているのか。私は、「必要な知識、読み方を獲得させ、その知識、読み方を活用し次の物語に立ち向かう力をつけさせたい」と考えています。誰もが、国語を、読書を好きになれるわけではありません。もちろん、好きになりなさいと言って強制して好きになれるものでもありません。しかし、「かけ算の知識があるから割り算に立ち向かえる」という算数と同じで、国語も「要点の知識があるから要約ができるのです」しかも、説明文に比べると指導事項がみえにくい物語文だからこそ余計に意識をしています。そこに、読み方を獲得した児童のうちの一人がもしかしたら本を読むのが好きになるかもしれないという結果がついてくれば言うことなしです。

では、次回は、どう教材を研究していけば正しい読み方を獲得できるのかという私なりの考えを書いていきたいと思います。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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