2020.09.29
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国語授業を支えるグループトークの基本の「き」(第1回)

初めまして。今期も連載させていただくことになりました。主に国語授業について発信していきたいと思います。
さて、第1回は、国語授業を支えるグループトークの基本についてご紹介させていただきます。軌道に乗せたいけれど中々乗せきれないもどかしい思いをされている先生方の参考になればと思います。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

初めまして。28期も引き続き日々の実践を紹介させていただくことになった明石市立錦が丘小学校の川上健治です。ここでは、日々の実践を中心に紹介をさせていただきます。ご覧になられた先生方の叩き台となれば幸いです。

さて、初めてですので、私の国語の授業の大枠をご紹介します。私の国語の授業では、子どもたちが授業の司会進行をします。ただ、フォロー無しでは、何をどこで言うのかも分からず、先生の代わりのロボットのような扱いになってしまいます。それを避け、「自分たちで自分たちの授業は創る」という意識をもってほしいので、どこで何を言うかの台本も用意をし、授業の流れを予め頭に入れて、司会進行をしてもらいます。今現在、3年生の担任をさせていただいているのですが、この学年でも1学期から取り組んでおり、だいぶ板についてきました。(授業の司会についての詳しくは、以前の日誌に書いています)

1.グループトークにおける課題点

その授業の流れの中で、「グループトーク」という時間が組み込まれています。その授業の課題に対して一人学びをした後に、班で交流する時間です。(これも以前の日誌に詳しく書いています)


1学期の授業の中で、グループトークを取り入れていく中で、「お尋ね」が中々できないというのがどの学年においてもおきる課題点です。もしくは、「お尋ね」ができたとしても、「なんでそうなるんですか?」という漠然とした曖昧な「お尋ね」になってしまいます。子どもに限らず大人も人に「それってなんでそうなるの?」「どういう考えだったの?」と聞かれることがきっかけに、思考を再考し、自分の再構築した考えを伝えることで、思考は深まりまるものです。

指導案検討のときなどまさにそれだと思います。しかし、このグループトークで「お尋ね」ができなければ、ただの「伝える時間」になってしまい、深まりはでてきません。そういう状態が続いており、あまりに勿体ない時間を過ごさせてしまっていました。

2.課題を克服するための改善案

2学期に時間をとり、グループトークだけに焦点をあてた授業を行いました。これは学級経営と一緒です。最初は時間をかけてでもおさえるべきところはおさえ、ルールの定着化を図っていき、ある程度学級として軌道に乗せられれば、6月あたりから、授業自体もとてもスムーズにいくようになります。すると、4、5月の遅れを取り戻すことが可能です。

グループトークを行うときも、今は時間がかかる分、国語の単元を進めることができません。けれど、このグループトークができるようになれば、今後の授業における個々の考えの深まりはこれまでのものとは全く別物となります。だからこそ、ここで一度立ち止まり時間をかけて指導します。

まずは、基本的なことですが、「食べるとしたらショートケーキ?チーズケーキ?」や「同じ時間に観るならコナン?ドラえもん?」という誰もが選べることのできる簡単なテーマで一つひとつグループトークを確認していきました。その際は、「自分と違った意見の友だちに必ずお尋ねをしよう」とだけ言いました。
すると、ある班は、

Aさん:「なんでコナンのほうがいいんですか?」

Bさん:「だって、CMがあるやん」

Cさん:「CMはドラえもんにだってあるよ」

Bさん:「そうじゃなくて。コナンはいいところでCMになるから、なんでよーと続きが気になるけれど、ドラえもんは、そんなこと気にしなくても観られるから」

Aさん・Cさん:「あっほんまやなー!」

といったやりとりをしていました。恐らくBさんは、普段そこまで意識して考えてはいなかったことでしょう。しかし、「お尋ね」をされたことで、自分の考えを客観的に捉えられ、意識できた(メタ認知できた)のではないでしょうか。そして、それを聞いたAさん・Cさんも「そういう見方があるんだ」という新たな捉えを獲得でき、そこから既存の知識と比べ、考えを再構築していくきっかけにもなりました。

しかし、これで終わってしまえば、この班の子たちだけで完結してしまいます。折角、クラスで学んでいるのですから、これをクラス全体に広めないわけにはいきません。ですので、この班には、再度クラス全体の前で同じやり取りを再現してもらいました。ここで、ただ再現するだけでは、子どもたちは何が花丸ポイントか分かりません。なので、私が事あるごとにストップをかけ、何が良かったのか評価を伝えていきました。そして、最後にクラス全体の前で「お尋ねがあるからこそ、その人の考えが深まるもの」という趣旨を、子どもたちにも伝えて終わりました。

簡単なテーマで自信をもたせ、「お尋ねって意外に簡単だ」「お尋ねをされ、伝えることで、考えがすっきりした」と思わせれば勝ちです。まずは、この児童が作り上げた高いハードルを下げてあげることが大切です。

そして、もう一つ。私のクラスでは、「キャプテン(班長)」がグループトークの司会をしているのですが、それをしたことのない児童にも経験させることが大切だと思います。野球を例にとりますが、ピッチャーを経験した人は、どういう声掛けをしてもらったらこの場合楽になるかや、キャッチャー出身の人は、自分ならこういうサインを出すから右よりに守ろうかと思えます。要は、「相手の立場に立って物事を考えられる」ようになるのです。グループトークでも、「司会」を経験することで、どういう態度で司会の話を聞けばいいのかや、どういう声掛けをしてやれば気持ちよく司会できるのかなどが分かってきます。

グループトークに悩んでいる先生、行き詰まっている先生は、もう一度基本に立ち返り、簡単なテーマでグループトークの仕方を確認し、良いポイントを再現させながら評価を加えていくことと、今まで司会を経験したこのない児童にも簡単なテーマで司会を経験させることをお勧めします。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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