初発の感想の後は・・・?
前回は、初発の感想の書かせ方や扱い方について紹介しました。今回は、その続きということで指導案でいうところの第2次について紹介しようと思います。
明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治
前回は、「初発の感想」について書きました。今回は、「サーカスのライオン」の実践で初発の感想をもとに毎時間提示する「めあて」について書いていきたいと思います。
1.GOALからの逆算思考
前回も書いたように、子どもたちの初発の感想の中心は「じんざが男の子を助けてなくなった」ところに集中していたので、読み取りの最後は、「じんざは幸せだったのか?」というところにもっていこうと考えました。そこに行きつくためには、そこまでに「じんざ」と「男の子」の心の寄り添いを読み取らなければなりません。
ということは、「じんざ」の気持ちや「男の子」の気持ちを読み取らなければなりません。気持ちを読み取るためには、まず作者が設定したその人物の背景にあることを読み取っていく必要があります。だからこそ、初発の感想の次の時間は、物語の設定(時・場・人物)を読み取る学習になります。
このように、初発の感想から子どもたちの思考をたどることで、読み取りのGOALが見えてきます。GOALがみえてくると、そこまでに何をすべきかが見えてきます(ここでいうGOALは言語活動のGOALではありません)。
2.物語の設定について
物語の設定時には、必ず「時・場・人物」の3点を確認します。この3点は、場面分けをする際の視点にもなります。それも重要ですが、人物の背景を知ることで、それが何に繋がっているのか、作者はなぜ敢えてこの設定にしたのかを考えることもできます。
自分で物語を書けばこの人物の設定の重要性は分かることなのですが、作者は「意味なく」人物の設定を書いているわけではありません。作者が書くもの全てに意味があります。例えば、今回のお話であると、「じんざは故郷から離れている」や「男の子のお母さんは入院中である」こと等々、文章のあらゆるところに散りばめられている作者の設定した人物像を一つひとつ読み取っていきます。すると、「じんざはお話の最初の気持ちはマイナス」だということも分かってきます。
もう一度言いますが、「作者が書くもの全てに意味があります」。この次の「想像を広げて物語を書こう」という単元で、実際に子どもたちが物語を書くことに挑戦をするのですが、「書くもの全てに意味がある」ことを実感しています。いざ、物語を書くとなると、当然無駄なことは書きません。お話が完結するまで、そこに向けて必要な情報を散りばめていくからです。ということを考えると、読者側に回ったときも、このことを意識すれば、今まで見えてこなかったことがみえてくるかもしれません。教える側がこの意識をもてば、教材研究の時から、読み飛ばしていい部分などはなく、言葉一つひとつに着目できるはずです。そして、このことを子どもたちにも意識させれば、「より豊かな読み手」になるはずです。
3.気持ちの変容の読み取り
さて、ここからは、物語文で重要な人物の気持ちの変容の読み取りを書いていきたいと思います。教科書に出てくる物語文だと必ず中心人物の気持ちの変容があります。教科書と言わず、アニメや映画でも気持ちの変容があります。この気持ちの変容の複雑さが時にはお話をドラマチックにしたりします。もちろん、小学3年生が読む教科書の物語文では、そんなに入り組んだ気持ちの変容はありませんが、中心人物の気持ちがマイナスからプラスに変容しているのか、または、プラスからマイナスに変容しているかを読み取ることで、6年生になったときに、その物語の「主題」を読み取れるようになります。
しかし、第1場面から順番に「この場面のじんざの気持ちは?」と問うていっても芸がありません。私のクラスでは、1学期の「はりねずみと金貨」で中心人物は気持ちがマイナスからプラスに変容している物語が多いことを確認しています。従って、お話には中心人物がいて、その中心人物の気持ちが変容するというフレームをもって物語を読むことができます。今回の物語も例にもれず、お話序盤の人物の設定場面でじんざの気持ちはマイナスであることを確認したので、あとは、どこで変容するかをみていくだけです。
今回は、2~3場面で気持ちが少しずつ変容していくお話なので、子どもたちに見つけさせるには範囲が広すぎました。そこで、今回は選択式にしました。どういう選択肢を作って、子どもたちの思考がどうなったかは、長くなってきましたので、また次回に。
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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