小規模校で先生方に「ゆとり」を生み出すための校内環境の整備(16)
業務改善には、「やめる」「減らす」「変える(改善する)」という視点が重要であると言われます。でも、やめることも、減らすこともできないことは、「ちょっと変える=改善する」という方法で乗り切ることも大切です。3月から4月にかけては、担任の交代、教室の移動という子どもたちにとっても教員にとっても大きな変化が待ち受けています。ちょっとの工夫でみんなが快適に過ごせる、そんな取り組みを紹介します。
北海道公立小学校 教諭 深見 智一
年度末の「店じまい感」を少しずつ出しながら過ごす毎日…
私の学級では、年度末の参観日が終わったことで、子どもたちが取り組んだ作品などを少しずつ取り外したり、学校に置いていた学習用具を家庭に持ち帰ったりして、前回の記事でも紹介した「店じまい感」を出しています。卒業までの「カウントダウンカレンダー」の取り組みを行っていますが、小学校生活を振り返ったり、中学校生活への期待を綴ったりしている子どもたちのコメントを見ると、1年もようやく終わりだなとしみじみと感じている今日この頃です。
学校は、年度末に着々と近づいています。教科ごとに入っていた単元テストの箱は、ほぼ空っぽになりましたし、各教科の学習内容が終わりに近づいていることもあり、黒板のチョークの補充の機会も少なくなってきました。
教室環境の変化が、子どもたちの学校生活のプラスとなるように…
学校規模や通常の学級・特別支援学級に関わりなく、小学校の教室は、学級担任が変わると雰囲気が変わることが多くあります。学校によっては、掲示物を貼る位置や教師用の机の置き方が決まっていたり、配慮を必要とする児童がいることを前提に学校全体で推奨されているガイドラインがあったりする学校もあります。多少の緩やかなきまりごとがあっても、やはり、学級担任の個性はいろいろなところに反映されるものです。
例えば、黒板の周りを見ただけでも、貼られている掲示物のフォントが違ったり、チョークの置き方が違ったり、黒板消しの種類が違ったりします(←私は、長い黒板消しをずっと愛用しています)。
単学級の小学校では、クラス編成がない(できない)ことにより、学級担任が変わるということが最大の環境の変化となります。そのような変化が子どもたちにとって「プラス」の変化となるように、学級担任の立場としては緊張感を覚えつつも、子どもたちの期待に応えたいなと思ってきました。
教室環境も学年間でスムーズに引き継げるように…
ただ、3月から4月にかけての環境の変化が、子どもたちにとっては「学校に行くのが不安だ、行きたくない」「前のほうがよかった」というように、マイナスに作用することも残念ながら考えられます。
そこで、教室環境についても学年間でスムーズに引き継げるように、単学級小学校の教務部の担当として簡単にできる取り組みを紹介したいと思います。それは、
- 2月後半くらいの教室の様子をすべて写真に撮っておくこと
です。3月になると、早い先生は私のように「店じまい」をし始める学級も出てくるので、できれば2月下旬、遅くても3月上旬(今ぐらいの時期)のうちに撮影しておくのがベストと考えています。
児童に関する情報だけではなく、教室環境の写真を残して新担任に引き継ぐことは、新担任にとっても、子どもたちにとってもメリットが大きいと思います。
新担任にとってのメリット
次のようなメリットが新担任の先生にとってはあるのではないかと思います。
- 昨年度まで子どもたちがどういう環境で学校生活を送っていたのかが分かりやすくなる。
- 学級のシステム(掃除当番や給食当番、朝の会や帰りの会、係活動など)についても参考となる情報が得られる。
- うまくいっていた(使える!)と思える点はそのまま活用すれば、1から考える必要がなくなる。改善が必要、発達段階の変化に伴って変更が必要という点だけを修正しておけば、スムーズに学級運営ができる可能性が高まる。
- 前担任から、自分たちのことを聞いてくれているんだなという安心感を子どもたちや保護者に与えられる可能性が高まる。
気をつけていることは、この写真はあくまでも「参考情報(情報提供)」だということです。前担任の教室環境を継続してくださいという「押しつけ」にならないようにしたいと思っています。ただ、学級担任個人の取り組みとしてではなく、学校全体の取り組みとして行っているのには、次の3つの理由があります。
- とり忘れ、引き継ぎ忘れを防ぐことができる。(写真を参考にする・しないは新担任の自由=でも、その情報にアクセスできる機会は平等にあるべきという考え)
- それほど手間がかかることでもない。(写真をとって、決められた場所に保存してあるので良かったら見てくださいね!というスタンス)
- 担当している自分が一番勉強になる。(自分の学級経営の参考にもなる)
早速、これから各教室を回って撮影しに行こうと思います(許可を得てから撮影しております…)。
深見 智一(ふかみ ともかず)
北海道公立小学校 教諭
書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。
同じテーマの執筆者
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大阪大谷大学 教育学部 教授
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